13 / 56
2章 美容コーナーでの出会い
第一回美容対決
しおりを挟む
三時の鐘が鳴り、キャリロン王女が何人か引き連れやってきた。告知していたようで、見学する人たちも遠巻きにする。男性もいるようだし、物売りや勧誘の声も響く。
群衆の前へ進み出るキャリロン王女。
「恒例の美容術対決が久しぶりに叶った。ケイヒキュウシュウ美容術とリン波念力美容術の五日対決。みなの応援するひいき施術者へ声援も嬉しく思うぞ」
拍手が起こる。これがしたかったんだろう。キャリロン王女は満足したようにスカートを翻して下がる。あとはイザベルがゲストを紹介して施術が始まるわけだ。
ゲストは舞台女優が二人。シラベルとイザベルが肌の状態を確認する。普段から手入れをしているのだろう、素顔でも綺麗な感じがする。更に良い状態となるとハードルは高い。
アカリーヌは、エマを受け持つことになった。面長の美人系だが、どのようにも見られる演技が評判だ。
まずはいつもの手入れ方法を確認したい。
「竜の涙という、化粧水で肌を柔らかく、つるつるにします。いつもは何かお使いでしょうか」
「化粧水? 水で大丈夫みたい。ただ美容液には凝ってるのよ。肌と相性があうから」
さすが舞台女優。美容術には拘りがあるらしい。うかつにリン波念力を始められないかも知れない。
「リン波という念力を使いますが、マッサージのやり方にもこだわりはございますか」
「そうね。私はやんわりと。しつこく擦るのは嫌なの」
(それなら、いけるかも)
エマの好みはリン波念力に適しているだろう。
「大丈夫です、やんわりとね。椿油はお嫌いで?」
庶民が使うし、有名人が避けないか気がかりだ。
「私は外国のカメリアオイルを利用している。たまには良いか、任せよう」
椿油を外国語でカメリアオイルというはずだが、どうだろう。
背もたれを倒して施術を始めた。日頃の手入れもしているからだろう。エマの肌は綺麗だ。近くで見ようと歩み寄る群衆の波に焦るが、深呼吸で落ち着こう。
(見られているというプレッシャーもあるんだ)
視線を落として、エマの肌へ集中する。
いつもよりも短時間で終わらせた。リンパさえしっかり流せば、肌へ余分なものはつけない方がいい。
背もたれを起こして、鏡で確認させる。庶民たちから感心したような声が漏れる。
「このしっとり感はカメリアオイルへ似ているな。匂いは柔らかい」
エマは椿油と比べているらしい。カメリアオイルは癖が強いはず。
「やはり、リン波念力が大切ですね」
マッサージのやりかたでも差をつけたい。
「ただ摩るだけではなかったな。良いことを教えてもらった」
髪を整えながら言う。考えれば目の前に観衆がいる。いつも人目は意識しているようだ。
「だれにでもできますので。デコルテも試してみてください」
「そうだね。うなじから鎖骨へ。ちょっとしたコツかな」
手真似しながら言う。エマも試してみる気になったようだ。
(リン波念力が流行るといいけどさ)
アカリーヌの施術は短い間で終わるが、ケイヒキュウシュウはパックみたいなもの。目を向けると、器に入っているのに変えていた。相変わらず半分に切ったお土産用のフルーツ。
(果実をペースト状にしたか。あれはキウイフルーツ、輸入物を贅沢に使っているねー)
相手側も舞台女優。肌は綺麗なはず。アーホカが目ざとく、終了したアカリーヌへ声をかける。
「女優を更に美しくするのはむつかしいぞ。それだけでいいのか。こっちは仕上げのクリームがコラーゲンだ」
経皮吸収と関係ないはずだし、言い返さないと気が済まない。
「魔王エーアイの技かしら。コラーゲンは意味ないでしょ」
「ぷりぷりムチムチ肌になる。どうやらアカリーヌは素人らしいな」
施術はまだ未熟と思うが、美容術については知っている。
「魔女様がおっしゃってた」
アーホカの目がつり上がる。
「魔女? まだ存在していたか。魔女というのは邪道だ」
(妖精なら知ってるのかなー。どっちでもいいや)
「消えた魔王より確かな存在だし。まだいるのエーアイとやらは」
逆に訊ねる。姿の無い魔王エーアイと森に隠れる魔女の戦いが水面下で始まったのか、気になるところだ。機械や複雑な社会の無いスローライフの世界が乱されると思う。
「知らないのかな。神話の時代にインターネットで集めた情報だ。最適な美容術はいまも生きているのだ」
ネットがなんとかは、神話の中でも事実らしいと思われていることだ。
「魔女様が半分は嘘だとおっしゃってた。だから魔王の都市は壊れたのよ」
「魔女など、信仰をもたないのが支配者になれない。女はカガクの魔法で美しくなると知れ」
話している間にも施術が終わる。アーホカとこれ以上は言い合えないが、仕事をする上で、避けて通れない魔王エーアイの美容術だろう。
(ちょっと恋してる暇はないか。でもいいか、この先に庶民へ何か返せるなら)
貨幣が庶民の生活を変えると思っている。そのための美容術なのか、いまは分からない。
さて、最終の審査まで、イザベルとシラベルは評価しないが、軽く仕上がりをチャックした。
群衆の前へ進み出るキャリロン王女。
「恒例の美容術対決が久しぶりに叶った。ケイヒキュウシュウ美容術とリン波念力美容術の五日対決。みなの応援するひいき施術者へ声援も嬉しく思うぞ」
拍手が起こる。これがしたかったんだろう。キャリロン王女は満足したようにスカートを翻して下がる。あとはイザベルがゲストを紹介して施術が始まるわけだ。
ゲストは舞台女優が二人。シラベルとイザベルが肌の状態を確認する。普段から手入れをしているのだろう、素顔でも綺麗な感じがする。更に良い状態となるとハードルは高い。
アカリーヌは、エマを受け持つことになった。面長の美人系だが、どのようにも見られる演技が評判だ。
まずはいつもの手入れ方法を確認したい。
「竜の涙という、化粧水で肌を柔らかく、つるつるにします。いつもは何かお使いでしょうか」
「化粧水? 水で大丈夫みたい。ただ美容液には凝ってるのよ。肌と相性があうから」
さすが舞台女優。美容術には拘りがあるらしい。うかつにリン波念力を始められないかも知れない。
「リン波という念力を使いますが、マッサージのやり方にもこだわりはございますか」
「そうね。私はやんわりと。しつこく擦るのは嫌なの」
(それなら、いけるかも)
エマの好みはリン波念力に適しているだろう。
「大丈夫です、やんわりとね。椿油はお嫌いで?」
庶民が使うし、有名人が避けないか気がかりだ。
「私は外国のカメリアオイルを利用している。たまには良いか、任せよう」
椿油を外国語でカメリアオイルというはずだが、どうだろう。
背もたれを倒して施術を始めた。日頃の手入れもしているからだろう。エマの肌は綺麗だ。近くで見ようと歩み寄る群衆の波に焦るが、深呼吸で落ち着こう。
(見られているというプレッシャーもあるんだ)
視線を落として、エマの肌へ集中する。
いつもよりも短時間で終わらせた。リンパさえしっかり流せば、肌へ余分なものはつけない方がいい。
背もたれを起こして、鏡で確認させる。庶民たちから感心したような声が漏れる。
「このしっとり感はカメリアオイルへ似ているな。匂いは柔らかい」
エマは椿油と比べているらしい。カメリアオイルは癖が強いはず。
「やはり、リン波念力が大切ですね」
マッサージのやりかたでも差をつけたい。
「ただ摩るだけではなかったな。良いことを教えてもらった」
髪を整えながら言う。考えれば目の前に観衆がいる。いつも人目は意識しているようだ。
「だれにでもできますので。デコルテも試してみてください」
「そうだね。うなじから鎖骨へ。ちょっとしたコツかな」
手真似しながら言う。エマも試してみる気になったようだ。
(リン波念力が流行るといいけどさ)
アカリーヌの施術は短い間で終わるが、ケイヒキュウシュウはパックみたいなもの。目を向けると、器に入っているのに変えていた。相変わらず半分に切ったお土産用のフルーツ。
(果実をペースト状にしたか。あれはキウイフルーツ、輸入物を贅沢に使っているねー)
相手側も舞台女優。肌は綺麗なはず。アーホカが目ざとく、終了したアカリーヌへ声をかける。
「女優を更に美しくするのはむつかしいぞ。それだけでいいのか。こっちは仕上げのクリームがコラーゲンだ」
経皮吸収と関係ないはずだし、言い返さないと気が済まない。
「魔王エーアイの技かしら。コラーゲンは意味ないでしょ」
「ぷりぷりムチムチ肌になる。どうやらアカリーヌは素人らしいな」
施術はまだ未熟と思うが、美容術については知っている。
「魔女様がおっしゃってた」
アーホカの目がつり上がる。
「魔女? まだ存在していたか。魔女というのは邪道だ」
(妖精なら知ってるのかなー。どっちでもいいや)
「消えた魔王より確かな存在だし。まだいるのエーアイとやらは」
逆に訊ねる。姿の無い魔王エーアイと森に隠れる魔女の戦いが水面下で始まったのか、気になるところだ。機械や複雑な社会の無いスローライフの世界が乱されると思う。
「知らないのかな。神話の時代にインターネットで集めた情報だ。最適な美容術はいまも生きているのだ」
ネットがなんとかは、神話の中でも事実らしいと思われていることだ。
「魔女様が半分は嘘だとおっしゃってた。だから魔王の都市は壊れたのよ」
「魔女など、信仰をもたないのが支配者になれない。女はカガクの魔法で美しくなると知れ」
話している間にも施術が終わる。アーホカとこれ以上は言い合えないが、仕事をする上で、避けて通れない魔王エーアイの美容術だろう。
(ちょっと恋してる暇はないか。でもいいか、この先に庶民へ何か返せるなら)
貨幣が庶民の生活を変えると思っている。そのための美容術なのか、いまは分からない。
さて、最終の審査まで、イザベルとシラベルは評価しないが、軽く仕上がりをチャックした。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる