【完結】君の手が、入道雲を彫る

江夏みどり

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第6章

第1話 グータッチはおあずけ

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 冬休みが明けて、3学期が始まった。
 朝。学校の裏門に深冬みふゆがやってくる。

「あれー? 霜矢そうやー? いないなあ。選考会の朝練するって言ってたのに」

 淡く射した朝日が雪を照らし、あたりは静かにきらめいている。

 一方その頃、すぐ近くの校舎の陰で。
 霜矢と夏樹はこっそりと、手を握り合っていた。

「お、おい、真城ましろさん来たって」
「いいのいいの。まだ待ち合わせまで時間あるし」

 大晦日のあの日から、2人は何かと都合をつけては手を握る「練習」を毎日のように繰り返していた。

「今日はどうする? 耳とか触ってみる?」
「え、あ、ちょっ」

 右手で夏樹の手をにぎにぎと握りながら、左手で夏樹の耳に触れる。

「時原大丈夫? 手汗すごいけど」
「……ああ」
「よく見たら顔も真っ赤だぞ。今日はもうやめとくか」

 するりと離れていく霜矢の手を、夏樹は名残惜しく見送った。

 霜矢と夏樹が校舎の隙間から出て行くと、しゃがんで雪をいじっていた深冬が顔を上げた。

「あ、二人とも、やっと来た!」
「へへ、ごめんごめん。早速始めようか」

 霜矢が、雪まつり運営委員会から届いた書類を鞄から取り出す。

「最終選考会は10日後だ。実際に札幌の会場に行って、当日は1.5mの雪像を5時間で作らなきゃいけない」
「5時間って結構短いね」

 不安そうな深冬のつぶやきに、霜矢が頷いた。

「前に『考えない人』を作り直したときも5時間くらいかかったよな。でもあれは、その前に一回同じものを作った経験があったからできたことだ。次回は、それと同じことを、与えられたお題でやらないといけない」

 難しい顔をする夏樹と深冬に向かって、霜矢が笑いかけた。

「まあ、最終選考会の作品は完璧じゃなくてもいいらしいんだ。それよりも、チームワークとか、手際のよさとか、コミュニケーションがうまくとれているかが大事なんだって。俺たちなら大丈夫だろ!」
「そ、そうだね、頑張ろう」

 深冬が微笑んで、手をグーにして前に出した。
 霜矢がはっとした顔になる。

「グータッチはさ、いろいろ終わってからにしようぜ!」

 夏樹が他人の手に触れないよう気を使ってくれたのだろう。
 そう気づいて、首の後ろが熱くなった。




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