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第1章 旅の始まり
3. 「狂熊」との邂逅
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ベーカリーを後にしてから1時間ほどが経った。
私たちは引き続き、首都・ウェスマウンソーを散策している。
「それにしても、ウェスマウンソーは歩いても歩いても新鮮な驚きがある街ですわね。まさか私が今までこんなに素敵な街に住んでいて、それに気づかなかっただなんて」
いわゆる城下町とされるエリアからだいぶ離れ、いよいよ街道門――首都の出口が近くなってきた。
城下町がウェスマウンソー市民のための街であるならば、ここは旅人のための街といえるだろう。
商家が多く立ち並ぶのは城下と変わらないが、その趣には独特のものがある。
ミトレウスの様々な土地の特産品が並ぶ店や、珍品・奇品を扱う怪しい雑貨屋、これから街道を通って長旅を行う人々がその支度を整えるための専門店、そして疲れた旅人を癒す宿などが数多く立ち並んでいる。
「見てくださいなカクペル、海外領の原住民の手工芸品ですって。美しいわ」
私は大通りから一本入ったところにあるオリエンタルな雰囲気の店に立ち寄った。
「お言葉ですがシスター、そのような買い物は旅支度として不適です。ただでさえ食料品や大道芸のチップ等に金を使っているのです。そろそろご自重ください」
「もぅ。さっきまでは優しかったのに」
「先ほどまではシスターの社会性の涵養を優先したまでです。買い物の方法もチップの渡し方にもお慣れになった頃合いでしょう、これ以上のお勉強は無用かと」
私が口をとがらせて反論しようとしたとき、背後から笑い交じりの低い声が聞こえた。
「こんにちは~シスター。両手いっぱいに持ってる美味そうなパン、俺たちにも分けてくんね?」
振り返ると、粗悪な身なりの男たちがニヤニヤと笑いながら立ちはだかっていた。
その数5人。
どの顔にも悪意が満ちており、隠しているつもりだろうが、彼らはそれぞれ武器を持っているようである。
「ごきげんよう。大変心苦しいのですが、これは私たちの旅の糧なのです。施しは教会でお受けになってくださいまし」
私は冷静を装いながら答えるも、内心では緊張が走る。
一方で私の背後に控えるカクペルは一切動じていない。その余裕ある姿勢に、少しだけ安心感を覚える。
「え、なんか冷たくね? 俺たちさーもう腹減りすぎて仕方ないんだわ。教会っつったってこっから結構遠いっしょ」
「もうクタクタで動けねーよぅ」
「修道士サンたち金持ってんだろ? パンなんかあとで買いなおしゃいーじゃん!」
男たちがわざとらしい笑みを浮かべる。その声は妙に馴れ馴れしく、視線は舐めまわすように私をとらえる。
「しかし……」
私の返答など関係ないと言わんばかりに、彼らはゆっくりと間合いを詰め始めた。
背後のカクペルがそっと、しかし明確な殺気を醸し出しながらサーベルに手を置く。
「シスターを困らせるのはやめていただこう」
サーベルの刃が鞘の中で微かに鳴り、張り詰めた空気が広がる。
「おお、おっかねえ。あいつ『聖光輪騎士団』の修道士だぜ」
「そっちは一人とはいえさぁ、徒手の市民に剣を抜くのはどうなのかな~?」
「ほう。貴様らそれで物騒なモノを隠しているつもりか?」
カクペルの挑発的な声を受け、男たちは凶悪な笑みを浮かべながらそれぞれの武器を取り出した。
一触即発。
誰からともなく開戦の火蓋が切って落とされようとしたとき
「よしときな。お前らゴロツキにゃちと分が悪い」
飄々とした声。
振り返ると、いつの間にか傭兵風の男がこちらに歩いてきていた。
日に焼けた肌、シンプルで実用的な――粗野とも受け取れる――装い。肩には使い込まれた大きな背負い袋を担いでいる。
男は愉快そうに歯を見せて笑っているが、それが決して優しさのこもったものではないのは明らかだ。
それはまさに、眼前の相手をいまからいたぶろうという獣の戯笑であった。
明らかに異質な雰囲気に、先ほどまで下卑た笑みを浮かべていた男たちの顔から余裕が消える。
「な、なんだよお前」
「関係ねーだろ、あっち行けよ」
「いーや行かねー。オレも善良な市民の一員でな。教会の使徒を放っておくなんざ、寝覚めが悪くてかなわねぇ」
「正義の味方気取りってか? いい度胸してんじゃねえかよ!」
ゴロツキの一人が声を荒げ、ナイフを胸の前に構えながら傭兵風の男に突進する。
「度胸試しか? いいぜ、受けてやるよ」
重そうな背負い袋を置き、「獣」が牙を剥いた。
突進してきた男は真正面から彼の浅黒い喉元を狙う。
だが、その攻撃は虚しく空を切った。
「うぉ……っ!」
狙われた彼はナイフをぎりぎりまでひきつけたのち、驚くほどしなやかに体をひねり、敵の腕をわずか数ミリのところでかわしていた。
そしてそのまま素早く男の腕をつかみ、力強く捩じ上げる。
「ぎゃあああああっ!!」
悲鳴とともにナイフが地面に落ちる。
ミシミシと骨がきしむ音が聞こえる。
傭兵風の男は腕を決して離さないまま、一瞬の動きで相手の足を払う。
男はバランスを崩し、派手な音を立てて地面に叩きつけられた。
「な、なんだよこれ……っ」
地面に倒れこんだ男は必死に起き上がろうとするが、それは無情にも胸を押さえつける足によって阻まれる。
「そら、次の挑戦者は? ひとりずつ来ンのか、それともまとめてかかって来るか!?」
それは勝負を呼び込む声というより、もはや勝鬨に近いものに聞こえられた。
「くそっ、こうなったら俺たちが纏めて――!」
「お、おい待て、こいつ、ただの通りすがりじゃねえ……!」
ゴロツキの一人が震えながら後ずさりし始める。
「何言ってやがる、丸腰の相手にビビんなって――」
「こ、こいつ……『狂熊の手』ルスク・リンデマンだ!!」
その言葉に傭兵風の男がピクリと反応する。
「『狂熊の手』……?」
思わずつぶやき、カクペルを見上げる。
彼は頷きながら「噂を耳にしたことがあります」と口にし、続ける。
「ルスク・リンデマン。徒手戦闘で無敵の強さを誇る傭兵です。その肉体に荒ぶる熊のごとき破壊力を秘めることから通称『狂熊の手』……ある戦いでは、兵士一人一人が銃を装備した1個中隊を単身で壊滅させたとか」
「ルスク・リンデマン……」
私はその名を反芻しながら、私を背に立つ男――ルスク・リンデマンを改めて見つめた。
伝説の名を聞いた周囲委の空気が一瞬で凍りついたのがわかる」
「お、おい冗談だろ。そんな奴がたまたまここにいるわけ……」
最初に私たちに絡んできた男の声が震えている。
その目はすでに怯えに満ち、荒ぶる熊の指の動き、筋肉の収縮ひとつひとつに神経を張り詰めているようだった。
しかし熊はその視線をものともせず、やれやれと苦笑を浮かべ肩をすくめた。
「ま、噂ってのは大概大袈裟なもんだ。銃を持った1個中隊相手だって? さすがに死ぬぜ、オレ」
そう言って目を瞑り、軽いため息をつく。
次に彼が目を開けたとき、その緋色の瞳には再び猛獣の光が宿っていた。
「だが4人ばかしだとどうかな?」
「ひっ……!」
男たちは完全に繊維を失ったようだった。
ゴロツキを引き連れていた男が拳を握りしめながら、苦々しげに唇を噛む。
「くそっ、覚えてやがれ!」
典型的な三下の捨て台詞を残し、男たちは一斉にその場を離れ、通りの影へと消えていった。
静けさが戻り、張り詰めていた空気が緩む。
私は胸をなでおろした。
「助かりましたわ、ミスター・リンデマン。なんと感謝を申し上げればよいか」
私は頭を下げ、心から礼を述べた。
「あー、その『ミスター』っつーのはやめてくれ。どうにも背中がムズムズする」
「では……」
「ルスケンでいい。仲間はみんなそう呼ぶ」
彼は照れ臭そうに頭をかく。その気さくな態度に、私は思わずクスリと笑った。
「わかりましたわ、ルスケン様。改めて感謝を申し上げます」
「様もいらねえよ。オレぁただの傭兵なんだからな。……ところでなんだが」
ルスケンは少し声を低くして、真剣なまなざしで私たちを見つめた。
「忠告だ。お前さんたち、このままじゃ一生あんな連中のカモだぜ」
「なっ、貴様、私と彼女がそんなひ弱に見えるというか!」
カクペルが珍しく感情的につっかかる。
命の恩人に対してそのような態度はよくないと諫めようとするも、彼は私を侮辱されたと思い込んでヒートアップしているようだ。
「そうじゃねぇ。金持ってるニオイがプンプンすんだよ。要するに身なりがこぎれいすぎるっつーの。大方実家が貴族ってタイプの修道士様たちなんだろうけどよ」
「……!? し、しかし。私はともかく、シスターをこれ以上貧相な身なりにさせるわけには……」
「私のことは構わないでカクペル。たしかにルスケンのおっしゃる通りですわ。出立にあたり、私たちはもう少しそこに気を配るべきだったのです」
「シスター……」
私はルスケンに向き直る。
「ご忠告、痛み入りますわ」
彼は私の言葉に「おう」と返事をし、
「ま、そうなったとしても修道女様の騎士なら何とかするんだろうけどな」
と言いながら背負い袋を担ぎなおした。
「それじゃあな。二人の旅路に神のご加護がありますよう!」
次に、袋を担ぐのと逆の手を無造作にあげ、彼は路地の奥へと歩き出した。
その姿が影に溶けるように消えていくまで、私とカクペルはその背を見つめ続けた。
私たちは引き続き、首都・ウェスマウンソーを散策している。
「それにしても、ウェスマウンソーは歩いても歩いても新鮮な驚きがある街ですわね。まさか私が今までこんなに素敵な街に住んでいて、それに気づかなかっただなんて」
いわゆる城下町とされるエリアからだいぶ離れ、いよいよ街道門――首都の出口が近くなってきた。
城下町がウェスマウンソー市民のための街であるならば、ここは旅人のための街といえるだろう。
商家が多く立ち並ぶのは城下と変わらないが、その趣には独特のものがある。
ミトレウスの様々な土地の特産品が並ぶ店や、珍品・奇品を扱う怪しい雑貨屋、これから街道を通って長旅を行う人々がその支度を整えるための専門店、そして疲れた旅人を癒す宿などが数多く立ち並んでいる。
「見てくださいなカクペル、海外領の原住民の手工芸品ですって。美しいわ」
私は大通りから一本入ったところにあるオリエンタルな雰囲気の店に立ち寄った。
「お言葉ですがシスター、そのような買い物は旅支度として不適です。ただでさえ食料品や大道芸のチップ等に金を使っているのです。そろそろご自重ください」
「もぅ。さっきまでは優しかったのに」
「先ほどまではシスターの社会性の涵養を優先したまでです。買い物の方法もチップの渡し方にもお慣れになった頃合いでしょう、これ以上のお勉強は無用かと」
私が口をとがらせて反論しようとしたとき、背後から笑い交じりの低い声が聞こえた。
「こんにちは~シスター。両手いっぱいに持ってる美味そうなパン、俺たちにも分けてくんね?」
振り返ると、粗悪な身なりの男たちがニヤニヤと笑いながら立ちはだかっていた。
その数5人。
どの顔にも悪意が満ちており、隠しているつもりだろうが、彼らはそれぞれ武器を持っているようである。
「ごきげんよう。大変心苦しいのですが、これは私たちの旅の糧なのです。施しは教会でお受けになってくださいまし」
私は冷静を装いながら答えるも、内心では緊張が走る。
一方で私の背後に控えるカクペルは一切動じていない。その余裕ある姿勢に、少しだけ安心感を覚える。
「え、なんか冷たくね? 俺たちさーもう腹減りすぎて仕方ないんだわ。教会っつったってこっから結構遠いっしょ」
「もうクタクタで動けねーよぅ」
「修道士サンたち金持ってんだろ? パンなんかあとで買いなおしゃいーじゃん!」
男たちがわざとらしい笑みを浮かべる。その声は妙に馴れ馴れしく、視線は舐めまわすように私をとらえる。
「しかし……」
私の返答など関係ないと言わんばかりに、彼らはゆっくりと間合いを詰め始めた。
背後のカクペルがそっと、しかし明確な殺気を醸し出しながらサーベルに手を置く。
「シスターを困らせるのはやめていただこう」
サーベルの刃が鞘の中で微かに鳴り、張り詰めた空気が広がる。
「おお、おっかねえ。あいつ『聖光輪騎士団』の修道士だぜ」
「そっちは一人とはいえさぁ、徒手の市民に剣を抜くのはどうなのかな~?」
「ほう。貴様らそれで物騒なモノを隠しているつもりか?」
カクペルの挑発的な声を受け、男たちは凶悪な笑みを浮かべながらそれぞれの武器を取り出した。
一触即発。
誰からともなく開戦の火蓋が切って落とされようとしたとき
「よしときな。お前らゴロツキにゃちと分が悪い」
飄々とした声。
振り返ると、いつの間にか傭兵風の男がこちらに歩いてきていた。
日に焼けた肌、シンプルで実用的な――粗野とも受け取れる――装い。肩には使い込まれた大きな背負い袋を担いでいる。
男は愉快そうに歯を見せて笑っているが、それが決して優しさのこもったものではないのは明らかだ。
それはまさに、眼前の相手をいまからいたぶろうという獣の戯笑であった。
明らかに異質な雰囲気に、先ほどまで下卑た笑みを浮かべていた男たちの顔から余裕が消える。
「な、なんだよお前」
「関係ねーだろ、あっち行けよ」
「いーや行かねー。オレも善良な市民の一員でな。教会の使徒を放っておくなんざ、寝覚めが悪くてかなわねぇ」
「正義の味方気取りってか? いい度胸してんじゃねえかよ!」
ゴロツキの一人が声を荒げ、ナイフを胸の前に構えながら傭兵風の男に突進する。
「度胸試しか? いいぜ、受けてやるよ」
重そうな背負い袋を置き、「獣」が牙を剥いた。
突進してきた男は真正面から彼の浅黒い喉元を狙う。
だが、その攻撃は虚しく空を切った。
「うぉ……っ!」
狙われた彼はナイフをぎりぎりまでひきつけたのち、驚くほどしなやかに体をひねり、敵の腕をわずか数ミリのところでかわしていた。
そしてそのまま素早く男の腕をつかみ、力強く捩じ上げる。
「ぎゃあああああっ!!」
悲鳴とともにナイフが地面に落ちる。
ミシミシと骨がきしむ音が聞こえる。
傭兵風の男は腕を決して離さないまま、一瞬の動きで相手の足を払う。
男はバランスを崩し、派手な音を立てて地面に叩きつけられた。
「な、なんだよこれ……っ」
地面に倒れこんだ男は必死に起き上がろうとするが、それは無情にも胸を押さえつける足によって阻まれる。
「そら、次の挑戦者は? ひとりずつ来ンのか、それともまとめてかかって来るか!?」
それは勝負を呼び込む声というより、もはや勝鬨に近いものに聞こえられた。
「くそっ、こうなったら俺たちが纏めて――!」
「お、おい待て、こいつ、ただの通りすがりじゃねえ……!」
ゴロツキの一人が震えながら後ずさりし始める。
「何言ってやがる、丸腰の相手にビビんなって――」
「こ、こいつ……『狂熊の手』ルスク・リンデマンだ!!」
その言葉に傭兵風の男がピクリと反応する。
「『狂熊の手』……?」
思わずつぶやき、カクペルを見上げる。
彼は頷きながら「噂を耳にしたことがあります」と口にし、続ける。
「ルスク・リンデマン。徒手戦闘で無敵の強さを誇る傭兵です。その肉体に荒ぶる熊のごとき破壊力を秘めることから通称『狂熊の手』……ある戦いでは、兵士一人一人が銃を装備した1個中隊を単身で壊滅させたとか」
「ルスク・リンデマン……」
私はその名を反芻しながら、私を背に立つ男――ルスク・リンデマンを改めて見つめた。
伝説の名を聞いた周囲委の空気が一瞬で凍りついたのがわかる」
「お、おい冗談だろ。そんな奴がたまたまここにいるわけ……」
最初に私たちに絡んできた男の声が震えている。
その目はすでに怯えに満ち、荒ぶる熊の指の動き、筋肉の収縮ひとつひとつに神経を張り詰めているようだった。
しかし熊はその視線をものともせず、やれやれと苦笑を浮かべ肩をすくめた。
「ま、噂ってのは大概大袈裟なもんだ。銃を持った1個中隊相手だって? さすがに死ぬぜ、オレ」
そう言って目を瞑り、軽いため息をつく。
次に彼が目を開けたとき、その緋色の瞳には再び猛獣の光が宿っていた。
「だが4人ばかしだとどうかな?」
「ひっ……!」
男たちは完全に繊維を失ったようだった。
ゴロツキを引き連れていた男が拳を握りしめながら、苦々しげに唇を噛む。
「くそっ、覚えてやがれ!」
典型的な三下の捨て台詞を残し、男たちは一斉にその場を離れ、通りの影へと消えていった。
静けさが戻り、張り詰めていた空気が緩む。
私は胸をなでおろした。
「助かりましたわ、ミスター・リンデマン。なんと感謝を申し上げればよいか」
私は頭を下げ、心から礼を述べた。
「あー、その『ミスター』っつーのはやめてくれ。どうにも背中がムズムズする」
「では……」
「ルスケンでいい。仲間はみんなそう呼ぶ」
彼は照れ臭そうに頭をかく。その気さくな態度に、私は思わずクスリと笑った。
「わかりましたわ、ルスケン様。改めて感謝を申し上げます」
「様もいらねえよ。オレぁただの傭兵なんだからな。……ところでなんだが」
ルスケンは少し声を低くして、真剣なまなざしで私たちを見つめた。
「忠告だ。お前さんたち、このままじゃ一生あんな連中のカモだぜ」
「なっ、貴様、私と彼女がそんなひ弱に見えるというか!」
カクペルが珍しく感情的につっかかる。
命の恩人に対してそのような態度はよくないと諫めようとするも、彼は私を侮辱されたと思い込んでヒートアップしているようだ。
「そうじゃねぇ。金持ってるニオイがプンプンすんだよ。要するに身なりがこぎれいすぎるっつーの。大方実家が貴族ってタイプの修道士様たちなんだろうけどよ」
「……!? し、しかし。私はともかく、シスターをこれ以上貧相な身なりにさせるわけには……」
「私のことは構わないでカクペル。たしかにルスケンのおっしゃる通りですわ。出立にあたり、私たちはもう少しそこに気を配るべきだったのです」
「シスター……」
私はルスケンに向き直る。
「ご忠告、痛み入りますわ」
彼は私の言葉に「おう」と返事をし、
「ま、そうなったとしても修道女様の騎士なら何とかするんだろうけどな」
と言いながら背負い袋を担ぎなおした。
「それじゃあな。二人の旅路に神のご加護がありますよう!」
次に、袋を担ぐのと逆の手を無造作にあげ、彼は路地の奥へと歩き出した。
その姿が影に溶けるように消えていくまで、私とカクペルはその背を見つめ続けた。
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