レディーダイアモンド

米田 津名

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2.菫 

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 後ろから何かが飛んできて私の後頭部にぶつかる。つまらない授業の始まりと同時にいじめは始め、後ろからげらげら笑う声が「もっと大きなもの投げてみて」と呟く。

自分も知らないうちに呼吸が乱れ、視界が霞む。目を開けたのか瞑ったのかわからなくなり、飲みかけの牛乳パックが頭に向かって飛んできて、中身を散らかしては教室の床に落ちる。

先生にも十分見えているだろうに、一人で30分間教科書を読んでいた先生は私の方をすっとみてはまた教科書へと視線を回した。お節介をやいても面倒になるだけ、という思いは十分理解できるけど、少しは苦々しい気分になるのも仕方がない。

古い天井のスピーカが雑音の混ざったチャイムを吐き出すと、先生は逃げるように教室から出て行き、悪戯をしていた連中が私の席へ寄り添う。

「おい、無視してんの?」

イラつく声が耳の中を深く潜り込んで頭を下げた。奴らが隣にいるだけでどんどん心臓が早く脈打ち息をするのがきつくなる。目の前がくらくらと回り、頭が割れるかのように痛い。

「無視してんじゃねぇよ」

その声とともに視界が回った。頬が熱くなる痛みは少し遅れて訪れる。答えようとする声は蹴られた机にお腹をぶつかってしまうせいで再び喉の中へと飲み込まれた。

両腕でお腹を抱え喘ぎ声を出すと、奴らは面白そうにゲラゲラ笑いながら教室の外へ出た。苦痛が治り、呼吸も視界も元通りに戻ると机を元の位置へと運んだ。髪を触ってみると、白い牛乳が手についた。喉の奥から漏れ出すため息を口の中にだけ含んではトイレで髪を水で洗った。

こんなのが私の普通の日常だ。人から見たら残念かもしれないけど、そんな半端な同情よりは無視の方がマシだ。

 こんないじめが繰り返し、授業が終わった後になってから学校から抜け出せた。いつからこんないじめがはじめたんだっけ。よく思い出せなくて家に向かう途中思い出そうとしてみた。

体育の時間に体調を崩し教室で休んでいた間、誰かがものを失くしてしまって私が犯人として指目された以降だったっけ。そういえば、そのなくしたものってなんだっけ。見つかったかな。分からない。よく思い出せない。まぁ、今になってはそんなのはどうでもいいけど。

 校門を出ると大声で騒ぐ生徒の声が聞こえてくる。理由もなく体が怯んだ。葉っぱが落ちた寂しい木々が並んでる道を一人で歩き、その時になってはじめてため息が漏れ出す。

単調な柄の歩道ブロックを沿って玄関に至ると、騒がしい音がドアの隙間から聞こえてきた。

ウンザリとした音に、自然に頭を抱え今日もかよ、とブツブツ呟いてドアを睨んだ。入っても私に火花が飛ぶのは火を見るように明らかだったので、まずはドアの前に立って盗み聞きをした。

なにかが壊れる音に混じり、いくつかの単語だけが微かに聞こえてきた。離婚がどうとかなんとか、子供は誰が責任を取るんだとか。親という人間がお互い私のことを養いたくないと責任を転嫁していた。

耐えきれないような怒りが喉の中で沸騰したが、結局吐き出すことなく喉の中で冷めてしまった。代わりに、はは、という間抜けな苦笑いだけが怒りから取り除かれた。いつも寒いここの夜だけど、今日に限ってもっと寒く感じられ、時間が経つにつれて心も体も少しずつ凍えはじめた。

玄関から背を向け目的もなく歩いていたら風景は近くの子供公園に変わっていた。誰もいない公園は静かで、微かに月明りを受けキラっと光るペンキの剥がれたブランコに腰掛けると、荒涼とした公園の姿が一目に入った。毎回、公園を訪れる度に昔のことを思い出す。

いや、実は一日たりとも忘れたことなどなかった。不幸ずくめの人生というのは、案外子供の頃の思い出一つだけでもなんとか生きていくものだから。

 私が世界を見つめる視線が今よりもはるかに低かった時のことである。その時から続いていた家庭不和のせいで私はよく夜遅くまで一人で子供公園に残っていた。その日もいつものように、夜遅くに公園に向かった。

その日は、私以外にももう一人の男の子が先にブランコに座っていたことが、いつもとは違うところだった。キイーキイーとなるブランコの音と、虫の鳴く声の間で、彼が口を開けた。

「こんな時間までなにしてんの?」

そんなあなたこそ、と言い返してやりたい気持ちは押さえ込んでおいて、私ははじめてみるこの子に自分の状況について話してもいいかどうかを悩んだ。考えてみたけど、敢えて初見の人にそんな話をして同情されたくはなかった私は適当な返事をした。

「別に何もしてないよ。そんなあなたこそこんな時間までなんでここにいるの?」

その子は凛々しく笑いながら答えた。

「星を見にきたんだ。」

自慢げに首にぶら下がった双眼鏡を持ち上げながら彼は答えた。

「君も、一緒に見る?」

付き合いの悪い私にはその質問にどう答えればいいかわからなかった。もじもじと立ち尽くしている私の手首を、彼は掴んでくれた。

「一緒に見に行こう。きっと楽しいよ!」

私を引っ張るその手は、まるで魔法みたいに私の足をふわりと宙に浮いているかのように軽くした。雲の上を歩く感じで、私は彼の手に導かれ走った。実に久々に私に差し出されたその手は、温もりで満ちていて私の冷えた手を暖かく包んでくれた。

「ねぇ、どこいくの?」

どれだけ走ったんだろう。息がつまることも気づかずに彼に聞いた。

「僕だけが知ってる、いいところがあるんだ。」

その子は私を連れて近くの森の中へと歩いて行った。夜の森は、まるで童話の中と繋がる通路みたいで心臓がドキドキした。普段なら怖くて近くに寄ることすらないような暗闇の中だったけど、おかしなことにその日は全く怖くなかった。一歩、もう一歩木々の間に繋がる道を歩く途中、彼が足を止めた。キョトンとしてる私に、彼は魔法の呪文を唱えるように言った。

「ここは僕だけが知ってる秘密基地なんだ。今から目をつむってみて。」

彼の言葉に、私は目をぐっとつむった。彼は一歩、一歩私の手を引っ張り歩き出した。心臓が壊れるほどに早く脈打った。

「さあ、もう目を開けて。」

私は瞑った目を開けた。彼が私を連れてきた場所は森の真ん中に捨てられたベンチがぽつんとおいてある空き地だった。彼はベンチに座り、私に向けて手招きをした。彼の横に並んで座って空を見上げると、青黒い紙に、砂糖みたいに星たちが散らかしていた。

そういえば、星を見るのも久しぶりだねーと思った瞬間、彼が私の目の前に双眼鏡を突き出した。はじめて望遠鏡で見上げた星は、それぞれの色を放っていた。

「どう?素敵でしょ?」

彼は自信満々な声で私に言った。あまりに美しい光景に、私は答えの代わりにわあーという歓声をあげながら頷いた。彼は星座を探す方法を教えてあげるといい、空に向かって指を指した。

「春の星座探しは、北斗七星を探すことからはじめればいい。」

「ほくとしちせい?」

聞いたことはあるような名前だったけれども、正確にどんなかたちをしているのかは詳しくわからなかった。私が困った表情で首を傾げると、彼は適当な木の枝を持って地面に絵を描いた。

「こんな感じ。じゃ、直接探してみるとするか。」

私と彼肩を触れ合わせながら夜空を見上げ、北斗七星を探した。彼が先にあそこだ!といいながら指で空を指した。彼が描いたのと全く同じかたちで星たちは浮かんでいた。

「北斗七星の中で、あの星はアルタイルというんだ。」

「どれ?」

「あれ。もっとこっち来てみて。」

ほぼ顔が触れ合うまで彼との距離を縮めると、なんだか体がくすぐったかった。彼は続けて星座を探す方法を教えてくれた。

「で、アルタイルから下へいくと、明るい星が見えるはずだ。あった。あれがうしかい座のアルファ星、アルクトゥルスだ。」

聞き慣れない名前に、いってみようとしたが舌を噛んでしまった。彼はにっこりと笑いもう一度ゆっくり星の名前を教えてくれた。

「あ、る、く、とぅ、る、す」

「アルクトゥルス。」

なんだか魔法の呪文みたいな名前だね、と素直な感想を述べると、彼はははっと笑いそうだね、と答えてくれた。

 しばらくの間、私たちは星を眺めていた。虫の鳴き声が、会話の空白を埋めてくれた。集中して夜空を見上げていた彼は、腕時計をみてはあっ、と声をあげた。

「もう12時だ。そろそろ帰らないと。」

今まで日が変わる時間まで起きていたことは新年を迎える時のことぐらいで、はじめて外で新しい一日を迎えたという感覚が不思議に感じられた。

 そうやって彼は次の日もその次の日も公園に現れ私に星座を探す方法を教えてくれた。親の喧嘩も、学校での寂しさも彼といれば忘れられた。そんな時間が永遠に続くのだろうと、子供の私は勝手に信じていた。

「多分一緒に星見るのはさ、明日で最後になると思う。」

春が本格的に訪れ晴れる頃、彼は星を見ながら私にそう言った。その言葉が何を意味するかを飲み込むのには、少し時間がかかった。

「なんで?」

「引っ越しすることになったんだ。」

「そうなんだ…」

そう言ったものの、納得しづらかった。彼がいなくなれば、星を一緒に見られなくなれば、私はどうやって過ごせばいいだろう。

泣きたかったけど、彼の前で弱いところを見せたくはなかったので我慢した。代わりと言ってはなんだけど、私は彼の手を折るかのようにぎゅっと握りしめた。私の気持ちが伝わったのか、彼も手を握り返してくれた。

私を横目に見ながら、彼は口を開けた。

「なぁ、星見るの、楽しかった?」

うん。とっても。できる限り感情を隠しながら淡々と言った。

「よかった。はじめてお前を見たときにさ、全部なくした顔をしていたから、忘れにくいものを一つ作ってやりたかった。」

確かに、それは正解だった。私から多くのものを諦めさせた人々も、この思い出だけは手を出せなかった。

「明日さ、プレゼントを一つやるよ。何があっても明日は絶対来るんだぞ?」

彼は逸らした視線を再び私に向けながらそう言った。そして、小指を差し出した。彼の小指に私の小指をかけると、彼は私ならば一生作れなさそうな笑顔で返してくれた。

「こんな時間までなにしてたんだ。」

12時を過ぎて家に帰ったらいつもは酔っ払っているはずのお父さんが、その日は門番のように立っていた。

酒臭いお父さんの後ろに、嵐が来たかのような家の光景が目に入った。

何も言わずに顔を背けると、お父さんは私の髪を掴み頬を叩いた。

涙が漏れそうだったけれど、必死に堪えた。それがなお気に食わなかったのか、彼は私を蹴り飛ばしては私の髪を掴んだままトイレまで引っ張ってその中に私を投げておき、外から鍵を閉めた。

明日までここから出るな、と父はそう言い残してトイレから遠ざけてしまった。トイレに閉じこまれるのがはじめてというわけではなかった。

でも、明日まで出られなければ、彼とはの約束は守れない。そう思うと、それまで堪えてきた涙が一気に流れた。さよならもちゃんと言わずに、私の大切な思い出はそうやって結末を迎えてしまった。

今になっては彼の顔はぼやけてよく思い出せない。

ただ、彼が世界で一番眩しい笑顔の持ち主であったことを微かに覚えている。その笑顔は私のすべての苦痛を消し払ってくれるし、幸せな夜を過ごせるようにしてくれて、その子についての思い出はどんどん美化される一方だった。

いつからだろう、私は顔も名前も知らない彼のことを好きになった。今までも、もし会えたら絶対気づけると信じて、苦しみだけのこの人生を一日、もう一日耐え続けはじめた。その思い出一つだけを掴み、やっと生きていくのである。

長く息を吐くと煙のようにふらふらと散り去っていった。あと2年。と独り言を呟いた。私が20歳になれば、この地獄みたいなところから抜け出してやろう。誰も私を知らないところで、はじめからやり直すために。

 古いアパートの廊下をこっそり歩いてドアを開けた。家の電気も入ってないし、なんの音もしないから両親は寝ているか、どこか出ていったんだろうと思った。

しかし、私の予想とは裏腹にドアを開けた瞬間見えたのは一人でテーブルに座り酒を飲んでる父の姿であった。

「こんな時間までなにやってんだ。」

その言葉から酒の臭いが感じられた。

「宿題。」

なるべく短く答えて部屋に入ろうとしたが、父が菫、と本当に久々に私の名前を呼ばれた。普段なら名前すら呼ばない父の様子に違和感を感じ振り返ると、父は手招きをした。

テーブルに座り父と向かい合ったが、すぐ視線を逸らした。そんな私を見て、父はふん、と鼻であしらいもう一口酒を飲んだ。

「お前は父さんと母さん、どっちと生きたいんだ?」

別に期待して聞いたわけではなさそうだったけれど、父の口から出た質問の割には非常に正常的な質問だったので少し慌ててしまった。

「俺もお前の母もお前をまともに育てられなかったことはすまない。」

瞬間、自分の耳を疑ってしまった。そんなことをいうような父ではない。もし心中でも考えているんだろうかな。そんなことまで浮かんでしまって父の顔を察しようとしたが、父を見るだけでも気が狂いそうだったので、やめることにした。父はそんな私を気にもせず続いて言った。

「これからも多分お前をまともに育てられないだろうと思って、お前を施設に任せることにした。」

というのが、私と父との最後の会話だった。会話と呼ぶにはいささか一方的な気もするが。それを最後に、私が親と話し合うことなどもう二度となかった。

 暗くてよく見えないせいで、あっちこっち手探りながら狭い部屋の中に入った私は、さっき父が言ってた言葉の意味を考えていた。

施設に任せることにした、ということはもう嫌なことだらけのこの家から出られるということを意味するのかな。ふと、私はこの家でどんな存在だったのだろうか、という疑問が沸いた。

やっぱり面倒な重荷に過ぎなかったのかな。そんなことを思いながら天井を見上げた。そこには、家庭が壊れる前の頃に親と一緒に張った蛍光の星のステッカーが剥がれそうになっていた。

多分、あの頃の私は今の私より愛されたんだろう。未来の自分がこの家から追い出されることなど、想像もできずに、他の子供と何の変わらない心配のない日々を過ごしていたんだろう。

あの頃には戻れないのかな。まるで苦々しい薬を飲んだような気分になってしまって、もう寝ることにした。暖房がよく効かない部屋だったので、体をできる限り丸めて目を閉じた。

 朝、腰の痛みを感じながら目覚めた。起きて伸びをする途中、机の上におかれたメモが目に入り目をこすってメモを持ち上げた。

内容は青少年保護センターの住所と、今日の午後の9時までは行かなければならない、ということだけだった。

それだけで、あんまり実感が沸かなかった。カップ麺で適当に朝飯を済ませ、荷物をまとめて外に出ると、街は夜の間降った雪で覆われて銀世界を広げていた。

世界のほとんどが白い雪で覆われて、まるでよくできたスノーボールみたかった。吹いてくる風に雪が飛び散り光った。そんな感想を抱いて歩く途中自分も知らないうちに足が止まった。

街と同じく雪で覆われた公園の様子が普段とは少し違った。近寄ってみると、工事中というテープが公園を私の思い出と断絶させていた。

それまで漠然と抱いていた思い出のあの子と再会できるという期待もテープが貼られ、保っていた感情が一瞬で崩れてしまった。工事中の子供公園で泣いている女子高生なんて、どんだけおかしくみえるだろう。

ということは自分も承知の上で、歯を食いしばり涙を止めようとしたが無駄だった。私の涙は冷たい冬風に止むことなく凍えていた。

泣き崩れた私は、雪のせいで服が濡れることも気にせずそこらへんのベンチに座り込んだ。涙の跡が乾かないうちに、誰かが遠くで立って私を見つめていたことは気付かずに。
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