レディーダイアモンド

米田 津名

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4.菫

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 センターに着くと、私の手は赤くなるまで冷えていた。そういえば、翔、かなり薄着だったんだけど、帰り、大丈夫かな?巻いてるマフラーでも渡しておけばよかった。

料金を払えなくて停止になってしまった携帯で彼が教えてくれたIDを丁寧に入力した。 

検索のボタンを押すと、氷室 翔、と彼の名前が現れた。

別に大した事をしたわけでもないのに、ため息が出た。

空っぽの友達リストに彼の名前を上げ、なんとメッセージを送ればいいか迷っていると急に携帯が鳴った。

馬鹿みたいに携帯を床に落とした私はどきどきする胸を抱え携帯をゆっくりと持ち上げた。

「なになに、菫、彼氏でもできた?」

同じ部屋を使う女の子が二階ベットから顔を出してからかうように聞いた。

彼女の名前は田辺 陽菜。この数日間センターの人々とちゃんと会話もできなかった私に唯一先に話をかけてくれた、はじめてできたたった一つの友達だ。

あ、翔がいるから一人じゃないかな。

私は陽菜に見えないように携帯を掌で隠した。

「そんなんじゃないよ。男の子は合ってるけど。」

なぜか顔が熱くなった。そんな私の様子が面白かったのか陽菜が梯子を降りて私のすぐ隣に座って携帯を覗き込んだ。

私は、まるでびっくりばこを開くかのように携帯の画面を見た。

「菫、翔だ。ちゃんと帰れたか?」

「うん。あなたは?」

「まだ帰る途中。」

「気をつけて帰ってね。」

彼にメッセージを送ると、なんだか緊張がとけてしまった。そんな私の手から、陽菜が携帯を私の手からさっとひったくった。

「陽菜!」

「いいじゃん。菫、あんた子のことうまくいきたいんでしょ?」

携帯を取り戻そうと伸ばした手を押しながら陽菜が言った。

「そ、それはそうだけど…」

「じゃあたしに任せなさいよ。菫って他はいいけどかわいげがあんまりないんだから。」

陽菜はため息をつきながら携帯を勝手にいじった。固唾を呑みながら見つめていた私に陽菜は携帯を返しながら言った。

「デートの約束取っておいたよ。えらいでしょ?」

「えええっ???」

悲鳴に近い声が飛び出した。おかげで、静かにしなさい、と先生から小言をいわれた。

先生が出るか出ないか、私は陽菜に飛びついた。

「なんでぇ?いつにしたの?」

「あんたの性格でデートの約束なんて取れるわけがないでしょ?だから少し手伝ってあげたの。あ、デート、今週の土曜日だからね。」
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