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その6 そして幕が上がる
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夕刻、学校帰りの学生たちが憩うファストフード店で、誰かが尋ねる。
「参加して生き残れば一攫千金。それどころか常人には得られないような異能力まで手に入っちゃって、ネット動画で配信されて有名にまでなれちゃう、そんなゲームがあったら、参加したいって思う?」
「何それ。そんな都合のいい話あるかぁ?」
「えっ、お前知らないの? ネットであんなに有名なのに?」
「見かけたことないけどなあ……」
「マジ? それはもったいないって! 見てみろよ、これ!」
学生が傾けるスマートフォンの画面には、とあるSNSアカウントが表示されていた。「今日はなんとあのサバイバルゲーム、マゴンの撮影です! 来月頭くらいには動画投稿予定なんでお楽しみに!」という文面に、大学生くらいの男たちが決めポーズをとっている写真が添付されている。
「この人、炎上系のToTuberなんだけどさあ、俺結構好きで見てるんだよね」
「炎上系って……、趣味悪」
「えぇ~、ま、そうかもしれないけどさ。でも、そーゆーToTuberがいるのって見る人がいるからだろ? 需要あるんだって、実際」
「おれは嫌だけどなあ……。それで? この人のいってるマゴンってのが、さっき言ってた胡散臭いゲームなの?」
学生たちはひとしきりその話題を掘り下げて、それから次の話題へ移っていった。
——同時刻。そんな学生たちとは関係のないところで、ゲームは始まろうとしていた。
今回のステージは廃ビルが多く立ち並ぶ郊外がモチーフになっている。といっても、このゲームは運営に携わる組織の一員・ヴィルが能力(クオリア)で作った仮想空間で行われるため、集合場所は都内某所。何も知らない周囲の人間からは、ただの商業用ビルに人が出入りしているようにしか見えないだろう。
ある者は愛する人の病気を治すために。
ある者は憎む誰かへの復習のために。
ある者は自分が信じる愛のために。
ある者は自分が生き残るために。
ある者はただ、楽しむために。
ある者はただ、仕事として。
あるいは——。
それぞれの思惑が渦巻く中、ゲームの幕は上がる。まるで世界を凝縮したみたいな、悪趣味で平凡なゲームの幕が。
「んレディースアーンドジェントルメン! ボーイアンドガァルズ?
親愛なる紳士淑女のみなさま、それから良い子でいられない少年少女諸君ッ!
お待たせいたしました。ひょっとすると待ちくたびれて伸びた首が戻らなくなってしまった方もいるかもしれませんね。んふ。
それでは、今回のゲエムを始めましょう」
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「えっ、お前知らないの? ネットであんなに有名なのに?」
「見かけたことないけどなあ……」
「マジ? それはもったいないって! 見てみろよ、これ!」
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