ラスボス召喚術で異世界最強~剣聖の家に生まれた最弱召喚士は前世の記憶を取り戻し無双する【完結済・毎日更新】

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第三章 亜人国編

第1話『特訓』


「てやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「五月蠅《うるさ》い!! そんな奇声を上げている暇があるのなら隙の一つでも見つけて見せなさい!!」

 どうも、職業《クラス》ラスボス召喚士のラースです。
 現在、俺ことラースを含む五人パーティーは亜人国内へと入国を果たしています。
 初めての外国。国境を超える時はどうなるのかと思ったが、手続きは結構あっさり終わった。もしかしたら王様からの口添えか何かがあったのかもしれない。

「ラース。お茶」

「ん? あぁ。ありがとう、チェシャ」

「あー!! ルールルがラー君のお世話をしたかったのにぃ。ちーちゃんずるいです!」

「……理解不能。私は所持している飲料水をラースに手渡しただけ。誰がやっても変わりない行動。何か問題があった?」

「大ありですよぅ。ルールルはラー君の疲労を癒すため、口移しで水分補給しようと思ってたんですよ?」

「いや、お世話とか別に考えなくていいからな? 後、俺は限定召喚でラスボスとコミュニケーション取ってる最中だからできれば話しかけないでくれ……」

 亜人国内に入ってしばらく歩いていた俺たちを待っていたのは見渡す限りの森だった。

 そこに一応整備しましたよっていう感じの道が森の中に続いていたからそれに沿って歩き、数時間が経過。
 そうすると俺たちは森の中の開けた場所に出た。
 そこでルールルが『疲れました~。ねぇラー君。休憩しましょ? ご休憩……しよ?』と言うので休憩することにしたのだ。

 というわけで、俺たちは現在休憩中。

 と言っても、休憩の必要がありそうなのはルールルだけだ。
 彼女だけは能力値が見た目通り普通の少女と変わらないか、それ以下なので他の者と比べ明らかに疲弊している。
 逆に俺も含め、他の者はまだまだ気力を残している状態だ。

 実際、センカとルゼルスは休憩するどころか思いっきり体を動かしてるしな。

「隙を見つけてって……そんなのどうやるんです……かぁっ!!」

 現在、センカは森の開けたこの場所を利用してルゼルス相手に特訓中だ。

 先日、センカは俺が永続召喚したウルウェイに対し、成すすべもなく敗北した。
 俺が召喚する奴は全員ラスボスであり、どれもこれもヤバイ奴なのでセンカが敗北するのは当然なのだが、センカはその結果を良しとしなかった。

 ウルウェイに敗北して気を失ったセンカ。
 彼女は目を覚ますと、拳を握りしめながら強く願ったのだ。

『センカは……強くなりたいです。何者からもラース様を守れるくらい強く……強く!!』

 その後のセンカの行動は素早かった。
 まず、彼女は自身の師匠であるリリィさんに影の扱い方だけでなく、戦い方を教えて欲しいと頼み込んだのだ。

 しかし、結果としてそれは失敗に終わった。

 リリィさんは確かにセンカの師匠だ。俺が通常召喚にて幾度か召喚するラスボスであり、影を操るエキスパート。センカが影を光速で操れるようになったのも、リリィさんの教えがあったからこそだ。

 リリィさんもセンカも戦闘方法は基本的に同じ。操影《そうえい》の能力にて影を操って戦う。だからこそ、戦い方を教えてもらうならリリィさんが適任だろう。
 しかし……ここで問題が一つあった。

 リリィさんはセンカに影の操り方を度々教えているが、それは最初にそういう契約を交わしたからだ。
 戦い方を教えてもらいたいセンカだが、リリィさんとしてはそんなの面倒なだけだ。なにせ、彼女は兄の事以外は万事どうでもいい超絶ブラコン妹なのだから。
 なので、センカがいくら頼み込んでもリリィさんはセンカに影の操り方以上の物を教えようとはしなかった。


 そこで、妥協と言うと言い方は悪いが、センカが次に白羽の矢を立てたのがルゼルスだった。
 ルゼルス・オルフィカーナ。
 俺が永続召喚で呼び出したラスボスであり、俺とセンカを大事にしてくれる女性だ。

 そんなルゼルスがセンカの頼みを断るわけがない。
 かくして、弟子センカと第二の師匠ルゼルスによる特訓の日々が幕を開けたのである。

「呼吸、動作、視線、筋肉の動き、空気の流れ。目に見える物、肌で感じられる物は全て使えるわ。無駄な物なんて何一つない。まずはその中の一つでもいいから掴めるようになりなさい。そうすれば相手の突くべき隙というのが感覚として理解できるようになる。まずあなたはそこからよ、センカ」

 身体強化の魔術にて自身を強化し、爪を硬化させながらセンカの影による攻撃をひらりと避けるルゼルス。
 センカの影による攻撃は光速。
 ゆえに、避けるのは難しい。

 だが、ルゼルスはそれを幾度も躱している。躱すのが難しい場面もあったが、そういうときは強化した爪で影を打ち払っていた。

 結果、センカの攻撃はこれまで一度もルゼルスに命中していない。
 逆に――

「はい、チェックメイト」
「うっ」

 そんなルゼルスの宣言と共に、センカの喉元にルゼルスの爪が添えられる。
 文字通り、終わりだ。これが実戦であればセンカの首と胴は分かたれていただろう。

「センカ。あなたは相手の動きをもっと意識しなさい。目に見えている相手の位置に全力の攻撃を叩きこむ。並みの相手ならばそれでも問題ないのでしょうけど、あなたはそれ以上の物を求めているのでしょう? なら、もう少し工夫するべきよ」

 そう言ってルゼルスが硬化させていた爪を元に戻す。
 それを見てセンカが盛大なため息と共にお尻を地につけた。

「ルゼルスさんもそうですけど、なんで皆さん私の影を避けれるんですか……。私の影の方が絶対に早いのに……」

「くすくす。そうねセンカ。あなたは間違っていないわ。ウルウェイはともかく、私自身は光速まで至っていない。速さだけで言うならあなたの影の方が早いでしょう」

「だったら――」

「でも、それを操るあなた自身は光速どころか音速にも届いていない。思考速度も、何もかも私たちラスボスと比べれば赤子のようなもの。なら話は簡単。あなたの視線の動き、くせ、影の動きの予兆。それらを見て攻撃を避けるか、先に攻撃が来そうな場所に刃を置くかすればいい。そうすれば影の速さに着いていけなくても攻撃は避けられる」

「なっ――」

 センカはルゼルスのその理屈に驚いている様子。
 まぁ無理もない。そこまで色んなものに目を配るには数多くの戦闘経験が要るしな。
 だが、ルゼルスは……否。ルゼルスたちラスボスはそれほどの戦闘経験を積んでいるのだ。言わば戦闘のエキスパート。数多の敵を屠ってきたラスボスとしての実績は伊達じゃない。

 別にセンカが弱い訳じゃない。ただ、相対する相手のレベルが高すぎるだけだ。

「さて、まだ時間はあるけれど……続ける?」

「はい!!」

 そうして続けられる特訓。
 その間も、俺は俺で未だコミュニケーションをきちんと取れていないラスボスと脳内にて会話する。俺のこれもある意味特訓だ。


「ふわぁ……つまんないです。ルールル、寝ます。ラー君、膝借りますよ~」

「んー」

 限定召喚に集中して返事が雑になる俺。限定召喚に集中するため、目を閉じる。
 そうして特訓の時間は過ぎていった―― 

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