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「フィリッツ様! お久しぶりです」
「…………」
ヤバイ! 誰だかわからない。
困った時の日本人的曖昧スマイルを浮かべた俺に、そいつは驚いた顔になって後頭部をぽりぽりと掻いた。
「もしかして、俺って印象薄いっすか?」
「ご、ごめん」
王都の辺境伯家の屋敷に入ると、親しげな笑顔で挨拶されて、俺は挨拶を返せなかった。何しろ広大な領地を持つ辺境伯家の寄子は数が多い。家名と爵位を覚えるのも大変だったし、寄子領主の顔だって、数人しか覚えてなかったのだ、そのご子息までなんて俺には無理だった!
父上や三兄なら覚えていそうだけど。
父上は、国中の貴族名を全部覚えてそうだし、長男じゃなくてホントに良かった。
「エルロン男爵家のマクソンです。マークとお呼び下さい」
「えーっと、あの……俺のこともフィルでいいです」
気を取り直して、自己紹介してくれたマークに俺は、もっと気安く接して欲しいと思ったが、マークはダメダメと言わんばかりに首を小さく横に振って見せた。
「いいですか? 俺は辺境伯様にあなたの護衛と身の回りの世話をする約束で、騎士学校の学費と寮の費用にお小遣いまでもらってるんですよ? それなのに、ケジメもつけてないって、なっちゃうじゃないですか!」
「黙ってればいいんじゃ?」
「騎士学校に辺境伯の寄子の子弟が20人近くいるのに?」
えー?! マジか?!
そんなにいるとは思ってなかったので、絶対挨拶されたら困る。引き攣った顔になった俺にマークは意味ありげな笑顔を向けた。
「俺が傍にいれば、教えて差し上げますよ?」
「お願いしますっ!」
降参するしかないと、俺は友人ではなく従者として迎え入れることにした。
「心配なさらなくても、俺はもらったお金の分の仕事しかしませんから。入寮は明日にしましょう。寮の食事より絶対、こちらの屋敷の方が美味しいですからね」
「そうか。うん。そうしよう」
勉学より挨拶が大変とは思っていなかったので、初っ端からくじけそうになったけど、ビジネスライクな方が気が楽かもと、マークを頼ることにした。
「それと、女遊びはほどほどにして下さいね。仕事なんであんま酷い成績だと困るんで」
「そ、そんな心配いらないよ?!」
「ああ。そっちだったんですか。俺は婚約者がいますから、誘っても無駄ですから」
「違います! って婚約者?」
顔にそばかすのある愛嬌のある顔をしたマークは俺と同じ13歳のはず。もう、婚約者までいるのかと、焦った気持ちになってしまった。
「ちょー可愛いんですよ! 彼女の為にも騎士になって稼がないとならないんです。
「それは、頑張って。でも、俺の心配はしなくていいから」
変な誤解は解かないと思って言ったら、何故か納得顔をされてしまった。
「さーせん。一途な恋をしてるんですね。俺、精一杯応援しますからね」
いや、何を応援するって?!
否定するのも面倒になってきて、ちょっと離れたところに立っていた家令に視線を向けた。
美味しい食事を食べて、さっさと寝てしまおうと思った。
「フィリッツ坊ちゃま。お出かけになるのでしたら騎士を同行させますが?」
歩み寄って来た家令が半端に話を聞いていたようで、とんでもない事を聞いてきた。
「出かけないよ! ご飯! ご飯が食べたいの!」
「かしこまりました。直ぐにご用意させますので、食堂でお待ち下さいませ」
靴音を響かせて家令はt厨房に向かったようだった。
来て早々何か疲れたと溜息が零れた。
「…………」
ヤバイ! 誰だかわからない。
困った時の日本人的曖昧スマイルを浮かべた俺に、そいつは驚いた顔になって後頭部をぽりぽりと掻いた。
「もしかして、俺って印象薄いっすか?」
「ご、ごめん」
王都の辺境伯家の屋敷に入ると、親しげな笑顔で挨拶されて、俺は挨拶を返せなかった。何しろ広大な領地を持つ辺境伯家の寄子は数が多い。家名と爵位を覚えるのも大変だったし、寄子領主の顔だって、数人しか覚えてなかったのだ、そのご子息までなんて俺には無理だった!
父上や三兄なら覚えていそうだけど。
父上は、国中の貴族名を全部覚えてそうだし、長男じゃなくてホントに良かった。
「エルロン男爵家のマクソンです。マークとお呼び下さい」
「えーっと、あの……俺のこともフィルでいいです」
気を取り直して、自己紹介してくれたマークに俺は、もっと気安く接して欲しいと思ったが、マークはダメダメと言わんばかりに首を小さく横に振って見せた。
「いいですか? 俺は辺境伯様にあなたの護衛と身の回りの世話をする約束で、騎士学校の学費と寮の費用にお小遣いまでもらってるんですよ? それなのに、ケジメもつけてないって、なっちゃうじゃないですか!」
「黙ってればいいんじゃ?」
「騎士学校に辺境伯の寄子の子弟が20人近くいるのに?」
えー?! マジか?!
そんなにいるとは思ってなかったので、絶対挨拶されたら困る。引き攣った顔になった俺にマークは意味ありげな笑顔を向けた。
「俺が傍にいれば、教えて差し上げますよ?」
「お願いしますっ!」
降参するしかないと、俺は友人ではなく従者として迎え入れることにした。
「心配なさらなくても、俺はもらったお金の分の仕事しかしませんから。入寮は明日にしましょう。寮の食事より絶対、こちらの屋敷の方が美味しいですからね」
「そうか。うん。そうしよう」
勉学より挨拶が大変とは思っていなかったので、初っ端からくじけそうになったけど、ビジネスライクな方が気が楽かもと、マークを頼ることにした。
「それと、女遊びはほどほどにして下さいね。仕事なんであんま酷い成績だと困るんで」
「そ、そんな心配いらないよ?!」
「ああ。そっちだったんですか。俺は婚約者がいますから、誘っても無駄ですから」
「違います! って婚約者?」
顔にそばかすのある愛嬌のある顔をしたマークは俺と同じ13歳のはず。もう、婚約者までいるのかと、焦った気持ちになってしまった。
「ちょー可愛いんですよ! 彼女の為にも騎士になって稼がないとならないんです。
「それは、頑張って。でも、俺の心配はしなくていいから」
変な誤解は解かないと思って言ったら、何故か納得顔をされてしまった。
「さーせん。一途な恋をしてるんですね。俺、精一杯応援しますからね」
いや、何を応援するって?!
否定するのも面倒になってきて、ちょっと離れたところに立っていた家令に視線を向けた。
美味しい食事を食べて、さっさと寝てしまおうと思った。
「フィリッツ坊ちゃま。お出かけになるのでしたら騎士を同行させますが?」
歩み寄って来た家令が半端に話を聞いていたようで、とんでもない事を聞いてきた。
「出かけないよ! ご飯! ご飯が食べたいの!」
「かしこまりました。直ぐにご用意させますので、食堂でお待ち下さいませ」
靴音を響かせて家令はt厨房に向かったようだった。
来て早々何か疲れたと溜息が零れた。
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