59 / 178
第3章 蒼粒石の秘密
第16話 空に駆ける
しおりを挟む
「プレア殿、全然進まないんだけど……」
暫く機動装置開発を進めていたところ、ハルからそんな声が上がる。見に行ってみると、確かにさっきと変わっていない。むしろ、少し状態が落ちているようにも見える。うーん、このやり方じゃダメなのかな?
「どうしようか……とりあえず一旦やめようか」
「うん、そうする」
ハルが刀を引き抜くと、血が滴り落ちて行く。ゲーム補正で止血が進まない分、刃にこびり付いて取れないなんてことはなかったものの。これをずっと続けるのも流石に難しいか。他の方法を考えないと。
「プレア殿、【精錬】はどう?」
「あー、新しく金属を作るってこと?」
「んーそんな感じ?で、それと小春を【統合強化】するみたいな?」
「ああ……そうじゃん、最初からそれで行けばよかったね」
【統合強化】は、それを使った場合必ず錬成に成功するという、隠れてチート級の性質がある。ここ最近、そのことをすっかり忘れていた。やっぱり、必ず成功するって凄いんだな。
そうと決まれば、早速作っていく。とはいえ、元となる金属に実際の刃を使うのは流石に憚られたので、血液のみで作る。一度瓶から出してしまえば、血液凝固は始まるのだから。レシピから刀の鞘を自動作成して、その中に血液を流し込んで行く。そのままだと固まっただけで終わってしまうので、鞘ごと【精錬】にかける。
「さて、どうなるか……」
もう、完全に手探りだ。何となく、今までの経験から思いついたことを手当たり次第やっているだけ。宝石を今のところ使っていない分、宝石技師の利点も活かせないし。
でも、だからといって専門分野だけやっているわけにはいかない。数十年前、世界中である感染症が流行した時、日本が脱却に随分と時間がかかってしまった原因の一つは、医療機関が余りにも細分化され過ぎていたことだった。
日本は他の国と比べ、医師一人一人がある分野にのみ特化している傾向にある。だから、そういった非常事態で対応できる医師が枯渇しがちだったのだ。現在では、その事態を受けて増加した新世代の医師達によって、その分割傾向が見直されつつあるが、他の先進国に比べるとまだまだ遠い。
別にそれとこれとは何ら関係はないが、僕もせっかくこうして遊んでいるからには、色々な方面を試したいと思う。そもそも、僕のこんなキャラビルドも、元はと言えばそういう思考によるものだし。一旦、宝石から離れて原点回帰してみるのも良いだろう。あの頃の、何も分からないまま直感で物を作っていた僕に。
「【統合強化】」
そう思いながら、機動装置を完成させた。既存の技術を応用するだけだったので簡単に作れた。精々、フックショットのアンカー部分の改造と、それと連動したパーツを作ったくらい。それも、以前獲得した【拡大鏡】のおかげで非常に楽になった。一見地味なスキルだが、大きく見えるだけでここまで効率が変わるとは。これは今後も愛用する予感。
ーーー統合強化に成功しました。『小型フックショット:改×2』『ホルスターベルト』『気流式ナノジェット』は『空間機動ベルト』に統合強化されました。
ーーー職業レベルが上がりました。(Lv.6→10)
ーーー宝石技師Lv.10に到達。スキル【簡易調整】を獲得しました。
【簡易調整】消費MP:200 クールタイム:1時間
宝石を使用しているアイテムの機能の程度を簡易的に調整できる。ただし、機能を新たに付けたり外したりはできない。
とはいえ、今回はゴリゴリ宝石を使わせてもらった。まあ、フックショット自体が既に蒼粒石で動くやつだし、今更なんだけどね。今回作ったアイテムは、なるべく元ネタを参考に作るようにした。そのおかげか、割とイメージ通りのものを錬成できた。
『空間機動ベルト』☆7 AGI+30
売価不明。両腰の装置からワイヤーを射出し、壁や天井などに引っ掛けることができる。アンカーが突き刺さると即座に引き寄せられるが、その際連動して背部のジェットが起動することで、高い推力での移動ができる。使用時身体に大きな負担がかかるため、VIT50未満の場合装備できない。
と、危ない危ない。僕のVITは40。それを、武器の効果で90まで引き上げている。現状あの武器なしで装備するのは無理なようだ。まあ、今のところ僕の武器はそれ一択だから問題ないんだけどね。
「さてと、木材が切れそうだから試運転がてら採ってくるよ」
「あっプレア殿、ボクも見てみたいな。プレア殿が空を飛ぶとこ」
「まだそこまで行けるかは分かんないけどね……良いよ、どうせ暫くは放置だろうし」
あの血液の精錬には時間がかかる。流石に血液だけではどうにもならないと思い、事前に金属の粉末を投入している。果たして金属のようになってくれるだろうか?
精錬中の血液の塊を部屋に放置し、僕達は平原へと歩を進めた。狙うのは木の幹。ただし、そこそこ高度のある所だ。あの辺りは若い枝が多く、根元よりも上質な素材が手に入りやすい。しかし、この地域に生えている木は背の高いものが多く、普通に地上から伐るのでは殆ど届かない。
そこで、このベルトの出番だ。果たして、どこまで活躍してくれるだろうか。僕は足をしっかりと踏みしめると、助走のために走る!うおっ、速い!ベルトの効果でさりげなくAGIが上がっていたお陰だ。よし、この辺で良いだろう。
「行くよ、ハル!」
「うん!」
ハルの返事を聞くや否や、僕は大きく跳躍した。ただ跳ぶだけではない。身体の向きが、目標に向けて真っ直ぐになるようにして……
「今だ、ワイヤー射出!」
言いながら、強く思念する。間もなく、両腰の装置からワイヤーが放たれた。改善が奏功し、より速く射出できるようになったので、アンカーを補強して重量が増した今でもかなりのスピードで飛んでいった。
宙に浮いていた僕の身体がガコンと揺れる。アンカーが固定された。今回の改造を経て、元々フック状だったアンカー部分を5本の鉤爪に変更した。因みに、これはカンナさんに作った調薬装置のミキサー部分の応用だ。ただし、素材はあの巨人のを使っているため、更に強度が高い。
そして、最初閉じた状態で飛んでいくアンカーは、何か物に突き刺さると爪を開く。丁度、グーからパーに開くような形で。そうすることで、アンカーを内部でガッチリと固定することができる。
直後、ワイヤーの引き寄せが始まる。それと連動して、ベルトの背面に取り付けたジェットエンジンが作動し、僕の身体は急速に木の幹へと手繰り寄せられる。
「おおぉぉぉぉ!!?」
じ、Gが凄い。これは装備制限かかるわけだ。でも、この空を切って高速移動する感覚、良いな。絶叫マシンにハマるようなものだ。スピードによって得られるスリルと、それ以上の楽しさ。この独特なセンセーションが僕の心と身体を掴んで離さない。
「う、おぉっ……楽しい!」
無事に幹に到達し、近くの大枝に着地した僕は、思わずそう叫んでいた。チャットでハル視点からの録画映像が送られてくる。そこには、確かに物凄いスピードで、角度の緩やかな放物線上を疾走する僕がいた。
………
「いや~、楽しくて時間忘れてた……」
「ホントだよ、途中ボクが言うまで木材のことも忘れてたでしょ」
「はい、仰る通りです……」
全くもう、といった風にプイッと背いてみせられる。しかし、その目元もどこか楽しそうだった。どんな形であれ、こうやって時間を忘れるほど夢中になれるのは悪いことじゃないからね。特に、ゲームを楽しむという点では。
さて、そろそろ精錬が終わる頃だろう。どうなっただろうか?願わくば金属のように、加工しやすい形に仕上がっていて欲しいが。そう思いながら、恐る恐る、入れ物にしていた空の鞘からそれを引き抜いて行く。……え。
「「……何これ」」
思わずハルとハモった。僕達の目の前に出てきたのは、動く血液の塊だった。
プレアデス Lv.25
種族:ホムンクルス/職業:宝石技師Lv.10
HP:500(+250)
MP:170(+360)
STR:50(+50)
VIT:40(+50)
AGI:0(+40)
INT:50(+120)
RES:0
DEX:30
LUK:30
SP:0
頭…なし
胸…バトラースーツ
右手…噴炎する恐牙の戦槌
左手…-
脚…バトラートラウザーズ
足…執事の革靴
特殊…蒼穹のタリスマン
特殊…空間機動ベルト
所持金:45700G
満腹度:60%
装備効果:物質特効(200%) 《出血》付与(高) 【吸血】攻撃(低) 付加(火炎) 《火傷》付与(中) HP回復(5/秒) MP回復(1/秒)
称号:《試行錯誤》《伝説を導く者》《読書好き》《宝石採集者》《伝説を錬成する者》《岩砕き》《破壊者》《無慈悲なる一撃》《石工職人見習い》《木工職人の一番弟子》《宝石技師》
スキル:【統合強化】【硬化】【金属探知】【宝石片弾】【ジェットファング】【付加:陽炎柱】【脆弱化】【ジェノサイド】【分解】【精錬】【拡大鏡】【簡易調整】
チェインスキル:【連鎖誘爆】【バーストスマッシュ】
暫く機動装置開発を進めていたところ、ハルからそんな声が上がる。見に行ってみると、確かにさっきと変わっていない。むしろ、少し状態が落ちているようにも見える。うーん、このやり方じゃダメなのかな?
「どうしようか……とりあえず一旦やめようか」
「うん、そうする」
ハルが刀を引き抜くと、血が滴り落ちて行く。ゲーム補正で止血が進まない分、刃にこびり付いて取れないなんてことはなかったものの。これをずっと続けるのも流石に難しいか。他の方法を考えないと。
「プレア殿、【精錬】はどう?」
「あー、新しく金属を作るってこと?」
「んーそんな感じ?で、それと小春を【統合強化】するみたいな?」
「ああ……そうじゃん、最初からそれで行けばよかったね」
【統合強化】は、それを使った場合必ず錬成に成功するという、隠れてチート級の性質がある。ここ最近、そのことをすっかり忘れていた。やっぱり、必ず成功するって凄いんだな。
そうと決まれば、早速作っていく。とはいえ、元となる金属に実際の刃を使うのは流石に憚られたので、血液のみで作る。一度瓶から出してしまえば、血液凝固は始まるのだから。レシピから刀の鞘を自動作成して、その中に血液を流し込んで行く。そのままだと固まっただけで終わってしまうので、鞘ごと【精錬】にかける。
「さて、どうなるか……」
もう、完全に手探りだ。何となく、今までの経験から思いついたことを手当たり次第やっているだけ。宝石を今のところ使っていない分、宝石技師の利点も活かせないし。
でも、だからといって専門分野だけやっているわけにはいかない。数十年前、世界中である感染症が流行した時、日本が脱却に随分と時間がかかってしまった原因の一つは、医療機関が余りにも細分化され過ぎていたことだった。
日本は他の国と比べ、医師一人一人がある分野にのみ特化している傾向にある。だから、そういった非常事態で対応できる医師が枯渇しがちだったのだ。現在では、その事態を受けて増加した新世代の医師達によって、その分割傾向が見直されつつあるが、他の先進国に比べるとまだまだ遠い。
別にそれとこれとは何ら関係はないが、僕もせっかくこうして遊んでいるからには、色々な方面を試したいと思う。そもそも、僕のこんなキャラビルドも、元はと言えばそういう思考によるものだし。一旦、宝石から離れて原点回帰してみるのも良いだろう。あの頃の、何も分からないまま直感で物を作っていた僕に。
「【統合強化】」
そう思いながら、機動装置を完成させた。既存の技術を応用するだけだったので簡単に作れた。精々、フックショットのアンカー部分の改造と、それと連動したパーツを作ったくらい。それも、以前獲得した【拡大鏡】のおかげで非常に楽になった。一見地味なスキルだが、大きく見えるだけでここまで効率が変わるとは。これは今後も愛用する予感。
ーーー統合強化に成功しました。『小型フックショット:改×2』『ホルスターベルト』『気流式ナノジェット』は『空間機動ベルト』に統合強化されました。
ーーー職業レベルが上がりました。(Lv.6→10)
ーーー宝石技師Lv.10に到達。スキル【簡易調整】を獲得しました。
【簡易調整】消費MP:200 クールタイム:1時間
宝石を使用しているアイテムの機能の程度を簡易的に調整できる。ただし、機能を新たに付けたり外したりはできない。
とはいえ、今回はゴリゴリ宝石を使わせてもらった。まあ、フックショット自体が既に蒼粒石で動くやつだし、今更なんだけどね。今回作ったアイテムは、なるべく元ネタを参考に作るようにした。そのおかげか、割とイメージ通りのものを錬成できた。
『空間機動ベルト』☆7 AGI+30
売価不明。両腰の装置からワイヤーを射出し、壁や天井などに引っ掛けることができる。アンカーが突き刺さると即座に引き寄せられるが、その際連動して背部のジェットが起動することで、高い推力での移動ができる。使用時身体に大きな負担がかかるため、VIT50未満の場合装備できない。
と、危ない危ない。僕のVITは40。それを、武器の効果で90まで引き上げている。現状あの武器なしで装備するのは無理なようだ。まあ、今のところ僕の武器はそれ一択だから問題ないんだけどね。
「さてと、木材が切れそうだから試運転がてら採ってくるよ」
「あっプレア殿、ボクも見てみたいな。プレア殿が空を飛ぶとこ」
「まだそこまで行けるかは分かんないけどね……良いよ、どうせ暫くは放置だろうし」
あの血液の精錬には時間がかかる。流石に血液だけではどうにもならないと思い、事前に金属の粉末を投入している。果たして金属のようになってくれるだろうか?
精錬中の血液の塊を部屋に放置し、僕達は平原へと歩を進めた。狙うのは木の幹。ただし、そこそこ高度のある所だ。あの辺りは若い枝が多く、根元よりも上質な素材が手に入りやすい。しかし、この地域に生えている木は背の高いものが多く、普通に地上から伐るのでは殆ど届かない。
そこで、このベルトの出番だ。果たして、どこまで活躍してくれるだろうか。僕は足をしっかりと踏みしめると、助走のために走る!うおっ、速い!ベルトの効果でさりげなくAGIが上がっていたお陰だ。よし、この辺で良いだろう。
「行くよ、ハル!」
「うん!」
ハルの返事を聞くや否や、僕は大きく跳躍した。ただ跳ぶだけではない。身体の向きが、目標に向けて真っ直ぐになるようにして……
「今だ、ワイヤー射出!」
言いながら、強く思念する。間もなく、両腰の装置からワイヤーが放たれた。改善が奏功し、より速く射出できるようになったので、アンカーを補強して重量が増した今でもかなりのスピードで飛んでいった。
宙に浮いていた僕の身体がガコンと揺れる。アンカーが固定された。今回の改造を経て、元々フック状だったアンカー部分を5本の鉤爪に変更した。因みに、これはカンナさんに作った調薬装置のミキサー部分の応用だ。ただし、素材はあの巨人のを使っているため、更に強度が高い。
そして、最初閉じた状態で飛んでいくアンカーは、何か物に突き刺さると爪を開く。丁度、グーからパーに開くような形で。そうすることで、アンカーを内部でガッチリと固定することができる。
直後、ワイヤーの引き寄せが始まる。それと連動して、ベルトの背面に取り付けたジェットエンジンが作動し、僕の身体は急速に木の幹へと手繰り寄せられる。
「おおぉぉぉぉ!!?」
じ、Gが凄い。これは装備制限かかるわけだ。でも、この空を切って高速移動する感覚、良いな。絶叫マシンにハマるようなものだ。スピードによって得られるスリルと、それ以上の楽しさ。この独特なセンセーションが僕の心と身体を掴んで離さない。
「う、おぉっ……楽しい!」
無事に幹に到達し、近くの大枝に着地した僕は、思わずそう叫んでいた。チャットでハル視点からの録画映像が送られてくる。そこには、確かに物凄いスピードで、角度の緩やかな放物線上を疾走する僕がいた。
………
「いや~、楽しくて時間忘れてた……」
「ホントだよ、途中ボクが言うまで木材のことも忘れてたでしょ」
「はい、仰る通りです……」
全くもう、といった風にプイッと背いてみせられる。しかし、その目元もどこか楽しそうだった。どんな形であれ、こうやって時間を忘れるほど夢中になれるのは悪いことじゃないからね。特に、ゲームを楽しむという点では。
さて、そろそろ精錬が終わる頃だろう。どうなっただろうか?願わくば金属のように、加工しやすい形に仕上がっていて欲しいが。そう思いながら、恐る恐る、入れ物にしていた空の鞘からそれを引き抜いて行く。……え。
「「……何これ」」
思わずハルとハモった。僕達の目の前に出てきたのは、動く血液の塊だった。
プレアデス Lv.25
種族:ホムンクルス/職業:宝石技師Lv.10
HP:500(+250)
MP:170(+360)
STR:50(+50)
VIT:40(+50)
AGI:0(+40)
INT:50(+120)
RES:0
DEX:30
LUK:30
SP:0
頭…なし
胸…バトラースーツ
右手…噴炎する恐牙の戦槌
左手…-
脚…バトラートラウザーズ
足…執事の革靴
特殊…蒼穹のタリスマン
特殊…空間機動ベルト
所持金:45700G
満腹度:60%
装備効果:物質特効(200%) 《出血》付与(高) 【吸血】攻撃(低) 付加(火炎) 《火傷》付与(中) HP回復(5/秒) MP回復(1/秒)
称号:《試行錯誤》《伝説を導く者》《読書好き》《宝石採集者》《伝説を錬成する者》《岩砕き》《破壊者》《無慈悲なる一撃》《石工職人見習い》《木工職人の一番弟子》《宝石技師》
スキル:【統合強化】【硬化】【金属探知】【宝石片弾】【ジェットファング】【付加:陽炎柱】【脆弱化】【ジェノサイド】【分解】【精錬】【拡大鏡】【簡易調整】
チェインスキル:【連鎖誘爆】【バーストスマッシュ】
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
162
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる