花の聖女として異世界に召喚されたオレ

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はじめての魔法

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 庭園を越え、森みたいなところをちょっと進んだら学校よりは少し狭いグラウンドが見えた。
 魔法が飛び火しないように魔石で簡易の結界を張って魔法を使うんだって。
 魔法を使うことが前提だから自分の魔力を結界で使わないよう補うのが魔石としての使い方らしい。あとは生活魔法の補助が大まかな役割っぽい。


「普段はそこまで大きな魔法を使うことがないので魔石はいらないんですが、コガネ様は初めてですからね。なにがあるか判りませんので防御の魔石を装備していてくださいね」


 ガルディさんに手首に巻くタイプの装備を貸してもらった。指のないグローブみたいなやつ。真ん中に水色っぽい石が付いてる。これが魔石なんだろうな。


「さて、コガネ様は多種多様な魔法が使えると思うのですが、どんな魔法を使ってみたいとお思いですか?」

「あ! オレ、ヒール使いたい!」


 尻が割れるのをまず防ぎたい!
 ヒールが伝わらなかったのか、きょとん顔をガルディさんにされたので頭を捻って「治癒系?」と答えた。


「治癒系とは…珍しいですね」

「旅みたいなことするんだったらそれが一番かなって。オレを守るのはクロウがいるから、怪我したらオレが治してやるな!」


 後ろにいるクロウに振り向きながら伝えたら、あっという間におにぎりにされた。


「やめっ…ぐっ…クロウ、はなれろっ!!」

「コガネ様、愛しいです…」

「くるし…、オレ、魔法でこいつをとりあえずはなすやつ覚えたい!!」


 そしたら抱っこも拒否するし、おにぎりの刑に処された時にすぐ魔法を放ってやるんだ!
 そう意気込んだらパッと身体がはなされた。最初からそうしてればいいんだよ。すすっとオレから少し離れて後ろの定位置に戻ったのを確認してオレはガルディさんに指南をお願いした。
 クスクス笑って「じゃあ、いきますね」とガルディさんは片方の手を上げた。


「治癒系の魔法は聖魔法属性なのでコガネ様には相性がいいでしょうね。先ほどの計測で聖魔法がよりすぐれているようでしたので習得は早いかと」

「ふんふん」

「私は聖魔法が使えないので口頭での説明になります」

「火属性だっけ?」

「はい。魔法は善の心、祈りの力でもあります。イメージしていただければ魔法が使えます。生活魔法として魔法は馴染んでいるくらいなのでそんなに難しいことはありません」

「へぇー。クロウはなにが使えるの?」

「俺は風と金。多少ですが闇属性でもあります」

「え? 闇なの?」

「闇と言っても不浄の力とは違うので俺は浄化する相手じゃないです」


 ニコニコと笑うクロウだけど一瞬だけピリッとした空気になった。気のせいかな。
 でも最初から持って生まれてくるものらしいし、ただの属性として考えた方がいいみたい。
 まぁいいや。イメージしよう。


「イメージが大切ですが、まずは魔力を外に出るよう道を作ります。先ほどお伝えしたように“解き放て”、私ですと“炎の刃”!」


 オレから離れたガルディさんが呪文を唱えると炎を圧縮した形のものが一瞬で現れて、手を振った方向に一直線に飛んでいった。炎は結界に当たったのかボゥ! っとけたたましい音をたてて飛散して消えた。
 あれが魔法…。本当になにもないところから出るんだ。すごい。


「私は宮廷魔導師として勤めております。だから魔力量もほかより多く、炎も強くでますがふつうの人だったら片手くらいですかね。“解き放て”、“火の玉”」


 さっきとは打って変わって小さい火力の炎がガルディさんの手のひらでユラユラと踊っている。
 あれが生活魔法サイズってことか。
 呪文もそれぞれイメージしやすいものを使うみたい。慣れれば開放の呪文のみでも発動するようになるって言われたけどどうなんだろう。
 魔法が発動すれば魔力の動きが判るからとりあえず使ってみてはと言われた。


「“解き放て”」


 これで力を外にだす道を作って、


「“ヒール”!」


 なにを治癒すればいいけど、よくなれ~~~! って念じてみる。
 治癒の力! とか言った方がよかったのかもしれないけど、オレの中での治癒魔法はやっぱこれがいちばんしっくりくる。
 ちゃんと発動してくれたらいいけど、って思ってたら目の前にたくさんの花びらが現れてグラウンド中を舞った。やっぱりここでも花なのか~って納得してたら花びらは整地されたその場をお花畑にして消えていった。
 治癒の力…。


「ハゲたオッサンに効きそうな魔法だよね」


 現状がいまいち判らなくてそう口にしたらクロウとガルディさんが噎せた。




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