花の聖女として異世界に召喚されたオレ

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今日も活きがいいらしい

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 ご飯がさみしいなんて子供みたいなわがままを言ったオレにクロウは「だったら騎士団の食堂で一緒に食べましょうか」と提案してくれた。
 騎士団の食堂は大食漢が集う場所だからご飯も出来たてで味も若者向けでおいしいんだって。


「あと、あそこはとりあえずうるさいからコガネ様が居たとしてそこまで気にする奴はいないと思うんです。ただちょっと、お姿を見てなにかしら声をかけてくる奴は居そうですが俺がお傍にいるんで大丈夫です」


 でもなにかあっちゃいけないからってクロウが食堂にオレを連れて行くことを伝えるために部屋をでていった。
 そして侍女さんたちがなにやらかわいいぬいぐるみを部屋に持ち込み始めた。
 「コガネ様がさみしくないよう、お部屋を支度いたします」って言われたんだけど、どんどん部屋が幼稚園みたいになっていくんだけど、待って! オレ、十八歳!!
 クロウが帰ってきたら絶対にぽかーんってなるやつだ。
 侍女さんたちが楽しそうだからいいかな。それはそうとガルディさんに聞きたいことがあるんだ。


「ガルディさん、魔法ってどうやって使うの?」


 オレが現在使えているらしいのは、感情の花びらをだすということ。それだけだ。


「魔法を使うには言霊として言葉に力を宿すものと、魔方陣を使い広範囲に効果を及ぼすもの、そして魔石によって魔力を補って放つものがあります」

「…へぇ…」

「すべて自身の魔力を外にだすものに必要なものなのです」


 つまり、どうやって魔法を使うのか。
 一番できそうなのは言葉を使うやつかな。


「言霊ってオレに言えそうなのあるの?」


 漫画とかでよくある長いのは覚えられないからムリだろうから、単語一つ二つでぽんぽんでちゃうのがいいな。


「そうですね。まずは自身から魔力を外に出すために“解き放て”と唱えます。それで魔力が外にでる道ができます。目には見えませんが。あとは属性を唱えるのですが、この世界では人それぞれ属性の魔力が異なります。私ですと火属性なので火の魔法が使えます。それと少しですが地の魔法も」


 属性か。たしかにあったなそんなのが。
 オレがやってたゲームの聖女は聖魔法とか言ってた気がする。最初はヒールと補助系の魔法しか使えなくて中盤あたりで強い攻撃魔法を使ってた。
 ヒールか。それはあったら便利だ。オレ、痛いの嫌いだし。


「それで、これです。この魔石で魔力の量と属性が判るんです」


 ああ、その水晶玉はそのためにあったのか。
 手をかざすよう言われて、オレはそれにそっと手を差し出した。
 手のひらがぽかぽかとあったかくなって、魔石とやらが色んな色に輝き始めた。これはあれだよ、プラズマボールだ。部屋のアンティークにあったらかっこいいやつだ。オレの部屋は完全なる和室だから合わないけど。
 これはおもしろいなぁって手を動かして光をみてたら扉が開いたことに気付かなかった。


「コガネ様は闇魔法以外使えるのですね、すごいですね」


 用事を終わらせて帰ってきたクロウに頭をぐりんぐりん撫でられた。さっきからオレに対する扱いが幼児のそれでイラァってする。
 クロウの手を叩き落としてガルディさんを見れば、目ん玉かっぴらいてた。びっくりした。


「これはすごいです! 属性魔法の多さと、そしてなにより魔力量の多さ…こんなのみたことありません。でもそうですよね、異世界召喚もコガネ様の魔力を使ったものですし、これは納得です。コガネ様はコツさえあればきっと簡単に魔法が使えるようになりますよ」

「え? ほんと?」


 使えるんだったら使ってみたい。
 ワクワクとしたオレにガルディさんがここでは魔法が使えないから場所を移動するって言った途端、また持ち上げられた。


「歩けるって! そろそろオレも歩きたい!!」

「嫌です。これは譲れません」


 昨日からほぼ歩いてないオレはそろそろ動き回りたい。こいつも腕がつかれないのか。そして、護衛というものは対象者を持ち歩かなくてはならないのか。周りはニコニコ微笑んでるしこれはオレがおかしいのか。否、そんなわけがない。


「くそっ降ろせっ!!」

「はっはっは~。今日も活きがいいですねぇ」


 どうしてコイツはこんなに楽しそうなのか。
 今回も抵抗したがダメだった。せめて少しでも負担が軽くなるようクロウの首に両手を回した。後ろにガルディさんが見える。話しやすい格好だからまぁいいか。


「聖女って、花がでるものなの?」


 オレ、この花に困ってるんだよね。
 この世界に召喚された人って毎回こんな感じなのかな。


「いえ、召喚される聖女様によって力は様々です」

「そうなの? オレみたいに男が聖女だったことあるの?」

「ええ、勿論です。男性であった時代もありますし、大きな鳥のお姿として有名な歌の聖女様もいらっしゃっしゃったと聖書に残っております」

「鳥…? どうやって浄化するんだろう」

「それは勿論、歌声です。とてもキレイな歌だったと」

「へぇ、それは聞いてみたかったな」


 男でも聖女。鳥でも聖女。
 存在そのものひっくるめて聖女って言うのかな。
 それで、一応ここで身を守るための魔法を習ったら王都から馬車で10日ほどかけて聖なる泉へと向かうらしい。片道10日ってどんだけ遠いんだよと思ったら、オレが行く為に不便がないようそれなりのランクの宿屋を介するためなのと、馬車なのでそこまで走らないんだって。クロウが「オレが馬で走れば2日でいけます」なんて言うからオレも馬がいい。早いならそれにこしたことないのに、クロウが心配そうに「尻、割れますよ?」って。
 尻を犠牲に2日か…。痛そうだな。
 はっ! 待てよ? これこそがヒールの出番ではないか?
 オレがヒールを習得すれば尻が割れることなくがんばることができるのではないかと。
 完治度の度合いによるけど、ガルディさんに魔力がすごいって言われたから尻の痛みに泣くことはなさそうだ。


「オレ我慢するから、クロウの馬に乗せてよ」


 乗馬はしたことないからクロウに乗せてもらって、尻が痛くなったら自分でヒールをかける。よし、完璧じゃないか。
 腕を輪にして少し身体を後ろに倒してクロウの顔を伺えば、きょとん顔のクロウが次の瞬間すごい笑顔になって「それはいいですね」って言ってくれた。
 オレを後ろに乗せるわけだから2日では行けないと思うけど、馬車よりは早いし、泉が早く浄化できてみんなも安心だろう。


「あとですね、聖なる泉の浄化が終わっても暫くは泉の力が弱くコガネ様の世界との繋がりがとれないのでそれまでは城に残っていただき、黒い霧を持つ人間の浄化を行っていただきたいのです」

「それくらいならいいよ」


 オレの世界ってところでクロウがオレを抱きしめる力が強くなったけど、腕疲れたのかな。でも降ろしてくれる気配はない。
 色々聞いているうちに城の外に出てたらしく、大きな庭に出た。咲き誇る花がとてもきれいで感嘆の声がもれた。みたこともない花がいっせいに咲き乱れる庭園は圧巻の一言だ。ばーちゃんたち、よろこびそうだな。
 とってもきれい。
 家族の仕事柄、オレの世界は花がいつでもあって、きれいに咲くそれをさらにきれいに飾ってくれるばーちゃんやねーちゃんが居て、オレが二人にならって花を挿せばじーちゃんが褒めて頭を撫でてくれた。
 しあわせだなって思うときはいつでも家族と花があったから、オレはここで花を出す能力が一番に目覚めたのかな。それは心がぽかぽかと温かくなって、うん、しあわせだ。
 花が好き。家族が好き。まだ一日とちょっとしか経ってないけど、クロウはもちろん、王様や侍女さんや宰相さんやガルディさんに笑ってもらえて、こうやって花もいっぱいあって、しあわせだなって。
 そう感じた瞬間、庭園の花が風もないのにさわさわと揺れて、暖かい光に包まれた。
 さわやかな花の芳香にあたりが満たされ、花を包んでいた光が城一面に飛散した。
 なにが起こったのか判らなくてびびってクロウに抱きついて固まっていたら背中を優しく撫でられた。


「今のが浄化の力です。そして、祈りの力でもあります。さすがですね、コガネ様」


 ガルディがそう言った。
 そこらかしこに白い花びらが舞って、消えていく。
 あれが浄化なのか。
 突然すぎてオレは状況が飲み込めずクロウに浄化の力だなんて言われても、この場所が爆発するんじゃないかと身構えてしまったから心臓がバクバクなってて理解できなかった。
 「ビックリしちゃいましたね」ってクスクスとクロウは笑ってるけど、普通は驚くだろ。ムカついてクロウに苦しめ! とばかりにぎゅうぎゅうに抱きついてやったけど、「かわいいなぁ」で済まされた。



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