花の聖女として異世界に召喚されたオレ

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いろいろな笑顔

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 一汗かいたと清清しい笑顔のクロウは生活魔法のひとつだと、簡単に身体をキレイにする魔法を教えてくれた。
 朝食の魔法といい、便利だな。
 聖なる泉へ行くちょっとした旅に便利だからオレもできるように覚えておこう。


「キャンプとかするの?」

「キャンプ…ですか?」

「夜営っていうんだっけ? 野宿」

「コガネ様を外で寝かせるなんてことできません。ちゃんと宿を介して進んでいくので安心してください」

「魔獣が出てあぶないから?」

「いえ、馬での移動になるので、コガネ様の身体に負担がかかります。夜はベッドで寝た方が負担も軽減するでしょう」


 キャンプとか楽しいだろうな…って軽く考えたけど、浄化しに行くんだから万全にしなきゃいけないよな。反省。


「クロウにオレが作った料理食べてもらおうと思ったけど、宿に泊まるのなら必要ないか」


 醤油があるし、食堂のオジサンに聞けば他の調味料も教えてくれるだろう。ここでオレが料理を作ることはないから、キャンプするんだったら張り切ろうかと考えたけど食べる場所があるならそれに越したことはないよな。
 ああ、でも醤油っていっても小さいから何人編成で行くか判らないけどそれなりの人数だよな。足りないや。
 馬に長時間乗ったオレの負担がどれくらいか判らないから、明日あたりでも馬の乗り方を教えてもらおう。
 クロウとクマの一戦が終わった後で、でもまだ夕食には時間がある。なにかするのかなとクロウに聞こうと振り返ったらクロウが真剣な顔で考え事をしていた。


「コガネ様の手料理…しかし夜営…」


 声をかけてもいいものか悩んだ。顔怖い。目開いてる。
 もうちょっとそのままにしておこう。
 キョロキョロとあたりを見渡せば、さっきまでたくさん居たギャラリーマッチョたちはまばらで、その内の数人が視界にはいった。嬉しそうに手を振られたので振り返したら野太い声が上がった。
 声にビックリしてスッとクロウの影に逃げ込めば、上から強い力に引っ張られた。


「コガネ様の手料理が食べたいので、一日は夜営にしましょう!」


 キラキラ笑顔のクロウがそう告げた。
 そういう感じに決めちゃっていいの?
 高い高いとばかりに持ち上げられて、テンションうなぎ登りのおかしげなクロウに部屋に連れてこられた。そのハイテンションのままに絵本と文字の教本をオレの前で開き勉強がはじまった。


 文字は日本語と同じと考えていいと思う。
 あとは、固有名詞は別にあってそれを簡単に覚えていこうと言われた。
 “です”とか“あれ”は平仮名みたいな文字を使えばよくて、“ごはん”とか“風呂”だとかは別に文字として成り立っているみたい。
 名まえは平仮名でいいっぽい。
 試しに自分の名前を書いてみようかと思ったら、クロウが笑顔で「クロシュディウル・グランディール」と連呼するのでそれから書いてみた。ペンはこっちの世界の羽ペンが奇怪で元の世界から持ってきてた鞄からボールペンを取り出した。
 ボールペンをみたクロウは「珍しいペンですね」としげしげみてた。
 平仮名だと思ってはみても、絵みたいな文字になかなか上手く書けない。書き順とかトメとかハライとかどうなってるんだろう。囲って塗る! みたいな文字は覚えるのが大変そうだ。
 何度もクロウが書いてくれたお手本を見比べて強くなる筆圧で書かれた文字を書ききったらクロウは両手を叩いて「すごい、すごいです!」と褒めてくれた。悪い気はしないけど、園児になったようで微妙な気分だ。
 手漉きの紙みたいなゴワゴワのそれは高価なものだと思うんだけど、文字を書く練習のためにと何枚も使って、クロウの名前とオレの名前をいっぱい書いて、もったいない使い方をしているなと思っていたらクロウがいい笑顔で「額に飾ります」と一枚を手に取りはしゃいでいたのでオレはそんな羞恥に絶えられなくて紙を奪還すべく部屋の中でクロウを追いかけた。
 部屋としては広いけど、オレとクロウが走り回れば障害物だらけで動き難い。筈なのに、クロウはオレをさらりと交わし他の紙も纏め上げた上で、クロウの部屋と繋がっているあの扉の向こうに去っていった。
 オレはと言えば、こちらにきてからクロウに抱かれっぱなしで自分の足で動くこともなく、途中で息がきれてへばってしまった。今、侍女さんたちに少し大きな団扇みたいなので扇がれている。通常だったらオレがへばったらクロウが抱きかかえてくれるけど、今回ばかりは引く気はないようだった。
 秒で扉の向こうから帰ってきたクロウはオレを抱き起こしてベッドへと運んだ。


「コガネ様からいただいたものです、大事に飾りますから、心配しないでください!」

「いや、心配じゃねーから。黒歴史になりそうだから回収したいんだよ」


 ゼーハーと肩で息をするオレにクロウはちょっと困った顔をして笑った。なんだその顔。
 




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