木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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最終章 木こりと騎士は……

第532話 ようやく……

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「ハァ、ハァ、ハァ……」


 魔力を全て使い切ったロスペルは、息せきを切りながら遥か遠くで煙を上げている光景を目の当たりにして、満足げに笑みを浮かべる。

 (や、やったぁ……サザランス公爵家が長きに渡って守り続けてきた魔法陣を破壊することが出来た)


「これで、全て取り戻せる」


 (僕たちが奪われたもの全て……!)

 遥か昔に使われた古の魔法陣を、古から伝わる強大な魔法で木端微塵に破壊し、この国にかけられた呪いをロスペルは、心地よい風に身を委ねると落下するように地上に降りた。

 (カトレア嬢、もしくはシトリン様。今の僕は魔力が無いので君たちの魔法で受け止め……)


「ロスペル!!」
「っ!!」


 (リュシアン兄さん!?)

 驚いて目を見開いたロスペルが下を見ると、そこにはカトレアの隣で心配そうに見つめるリュシアンがいた。


「師匠!!」


 涙を溜めたカトレアが結界魔法を解除すると、コロッセオまで落ちてきたロスペルをリュシアンを難なく抱き留める。


「おっと……ロスペル、大丈夫か?」
「師匠、ご無事ですか!?」
「あ、あぁ……魔力切れ以外は特に何も。というか、兄さんがどうしてここに?」


 (兄さんは確か、フリージアや母上と一緒に陛下の護衛をされているはず)


「それはもちろん、頑張ったお前を労うためだ!    もちろん、陛下の許可はいただいているぞ」
「そ、そうですか」


 すると、ノルベルトと対峙していたレクシャが声をかけた。


「ロスペル、よく頑張った」
「っ!……ありがとう、ございます」


 (父上に魔法で褒められるなんて一体いつぶりだろう?)

 仕事ぶりではよく褒められていたロスペルは、父親から久しぶりに得意の魔法で褒められ、思わず笑みを零す。

 それを見て、笑みを深めたリュシアンはすぐさま笑みを潜める。


「それより、本当に魔力切れ以外は特に異常は無いんだな?」
「はい、魔力切れによる気だるさ以外は特に」
「そうか」


 安堵した表情のリュシアンに、優しく微笑んだロスペルは、ふと古の魔法陣があった方に視線を向ける。


「それにしても、さすがは太古の魔法。たった一発で魔力がほぼつきましたよ」


 習得が最も難しいとされている超級魔法は、人智を超えた破壊力があるが故に、魔力操作を間違えれば国1つをもいとも簡単に消し去ることが出来る。

 加えて、超級魔法同士の複合魔法となれば、1属性のみの超級魔法よりも、更に精密な魔力操作が必要とされる。

 とはいえ、遥か昔に作られた古の魔法陣は、上級魔法では簡単に破壊出来ない程の強力な結界魔法が魔法陣の中に組み込まれているため、1属性のみの超級魔法では破壊出来るかどうか定かではなかった。

 そのため、ロスペルは火属性と風属性の超級複合魔法である《エクスプロージョン》を放ち、古の魔法陣を確実に消し去ることにしたのだった。


「あっ、言っときますけど屋敷と魔法陣だけ吹き飛ばしましたからね」
「当たり前だ! 屋敷と魔法陣は吹き飛ばしていいが、領地ごと吹き飛ばしたら元も子もないだろうが!」
「アハハハッ、それはそうですね。すみません」
「お前なぁ……」


 (まぁ、冗談が言えるくらいには今のところ大丈夫なのだろう)

 酷く疲れた顔で笑って冗談を言うロスペルに、少しだけ呆れたリュシアンは、小さく溜息をつくとそっと古の魔法陣があった方を見やる。
 


「まぁ、魔法陣から半径5キロには万が一に備えた強力な防御魔法と隠匿魔法が付与された遮蔽物が至るとこにあるし、半径10キロ圏内には建物は無いし、今日は建国祭で街にほとんど人なんていないだろうから、最小限の被害で抑えられただろう」
「そうですね。コロッセオへ落ちてくる時に少しだけ街を見ましたが、これといった被害は見当たりませんでした」
「そうか」


 王都から1時間ほどの距離に位置しているサザランス公爵領では、古の魔法陣を悪用されないために、屋敷から半径5キロ圏内に強力な防御魔法と隠匿魔法が付与された遮蔽物を、美しい自然を損ねない程度に置かれていた。

 そして、魔法陣の存在を周囲に秘匿するのと、万が一、魔法陣が悪用された時に備え、半径10キロ圏内に建物を建てていけないルールを作った。

 ちなみに、ノルベルトは古の魔法陣を独占したいがために公爵領で定められたルールをそのまま適用していた。


「一先ず、あの野郎が私欲まみれのバカで良かった。お陰で、被害も最小限に抑えられたと思うしな」
「はい、そこだけは感謝しないといけないですね」


 (後は、爆風による被害がどれくらいあるかだが……まぁ、そこら辺はインホルトに調査させるか)

 次期当主として今後の算段をつけたリュシアンが小さく溜息をついた時、レクシャとディロイスと対峙していたノルベルトが声を上げる。


「お、お前! 生きていたのか!?」
「「「「「「っ!!」」」」」」


 何かを見て顔を青ざめさせたノルベルトの視線を追い、背後を振り返ったレクシャ達が息を呑む。

 そこには、フリージア達に護衛された2人の王族がいた。
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