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最終章 木こりと騎士は……
第570話 結婚してください
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「フリージア、退院おめでとう」
「メスト様!」
フリージアが退院したその日。いつもよりかっちりとした服に身を包んだメストは、大きな花束を持ってサザランス公爵家のタウンハウスを訪れた。
王子様のような笑みを浮かべるメストを出迎えたフリージアは、退院前にメストが送ってくれた紺色に銀色の刺繍が施されたドレスを身に纏い、淑女らしい笑みを浮かて花束を受け取る。
が、内心はメストのカッコよさに悶えていた。
そんなフリージアに思わず苦笑したレクシャはメストに声をかける。
「メスト君、今日はフリージアの退院祝いだから、料理長がいつも以上に腕によりをかけているから期待していて欲しい」
「分かりました、公爵様」
「ハハッ、メスト君にはそう遠くないうちに私のことを『お義父さん』って呼んで欲しいな」
「私も『お義母さま』って呼んで欲しいわ」
「もう、お父様もお母様もメスト様を困らせないでください!!」
膨れっ面のフリージアを優しくエスコートしたメストは、サザランス公爵家全員揃っての食事に同席した。
フリージアが退院する数日前、フリージアが検査を受けている間に、メストはレクシャから『良かったら、フリージアが退院した日に我が家で家族全員と食事をしないか?』と誘われていた。
最初はようやく家族全員で揃った食事に自分が加わることに対して恐縮していたメストだったが、それを見たサザランス公爵夫妻とフリージアの2人の兄にゴリ押しされ、結果的にレクシャの誘いを謹んで受けた。
そして、久しぶりの和やかな食事を終えてひと段落ついた時、レクシャとアイコンタクトを交わしたメストは、椅子から立ち上がると隣に座っていたフリージアに手を差し出す。
「フリージア、外に出ないか?」
「はい!」
元気よく返事をしたフリージアの手を引いたメストは、外に出てすぐ、懐から何の装飾が施されていない小箱を取り出す。
「メスト様、そちらは?」
「これは……まぁ、後で教えるからフリージア、目を閉じてくれないか?」
「あ、分かりましたわ」
(メスト様が持っていた可愛らしい小箱、一体何かしら?)
小箱の正体が分からないままメストに言われた通り目を閉じたフリージア。
その瞬間、フリージアの体が一瞬だけ浮遊する。
「メ、メスト様!?」
「フリージア、目を開けてくれ」
「は、はい……っ!?」
一瞬だけ襲った浮遊感に戸惑いが隠せないは、言われるがままそっと目を開ける。
そこには、月光に照らされた真っ白な花畑が広がっていて、フリージアはその光景に既視感を覚えた。
「メスト様、ここって……!」
「あぁ、お前が俺にプロポーズをした場所だ」
「っ! どう、して……?」
(王都からサザランス公爵領までは馬車で約1時間ほどの距離があるはず)
目の前に広がる光景に、フリージアが唖然としていると、楽しそうな笑みを浮かべたメストが持っていた小箱をフリージアに改めて見せる。
「これだ」
「これって、先程から持っていた小箱ですよね?」
「あぁ、ロスペルがお手製で『転移』の効果が付与された血術で作られた魔道具みたいなものだ」
それは退院2週間前のこと。
フリージアをこの場所に連れて行きたかったメストは、手紙でロスペルに『血術で『転移』の付与が施された道具を作って欲しい』と依頼した。
すると、その3日後。メストのもとにロスペルから依頼通りの道具が届いたのだ
(さすが『稀代の天才魔法師』。魔法だけでなく、血術まで精通していたとは……まぁ、無効化魔法の使い手を輩出する家なら血術のことを知っていても当然か)
「これを。ロスペル兄様が?」
「あぁ、今日のために用意してくれたんだ」
「今日のため、ですか?」
不思議そうに小首を傾げるフリージアに、小箱を懐に戻したメストは、彼女を花畑まで優しくエスコートすると、花畑の真ん中で立ち止まって徐にフリージアの前で跪く。
「メ、メストさ……」
「フリージア・サザランス公爵令嬢」
ゆっくりと顔を上げたメストの表情は、さながら姫に忠誠を誓う騎士のような真剣ものだった。
「ずっと……ずっと、あなたのことが好きです。幼い頃に出会った時からずっと、あなただけが好きです。例え、記憶が改竄されて俺の中にあなたの存在が消えても、俺の心はいつだって気高く美しいあなたの姿を探していました」
(今なら分かる。俺はずっとあなたを探していた。幼い頃に出会って大好きだったあなたをずっと)
「そして、あなたと王都で再会してから、俺は大好きなあなたの傍にいたいと思っていました」
(王都で再会してから、俺はずっと平民の姿をしたあなたの傍に……悪徳騎士から平民を守る凛々しくも美しいあなたの傍にいたいと思った)
「メスト、様……」
「俺の何気ない一言が、他の女と仲睦まじくいるところ見て、優しいあなたは何度も傷ついただろう。今だから言える。本当に申し訳なかった」
(俺とあの女が王都をデートするところを見かける度に、俺があの女の話を聞くたびに、俺はあなたの柔く優しい心を何度も傷つけた)
懺悔するように深々と頭を下げるメストに、涙がこみ上げたフリージアは手で口元を覆うと、ふるふると首を横に振る。
「良いのです。そもそも、私が……私たち家族があの男を止められていたなら、私が我が身可愛さであなた様を見捨ずにいなければ、あなた様が辛い思いをしなくて済んだはずなのです」
(そうよ、例え、私たち家族があの男が止められなくても、お父様に頼んでメスト様だけ救っていただけたら……)
「そしたら、優しいあなたは家族の事情に巻き込んだ俺に対して、罪悪感を覚えて苦しんでいただろ?」
「っ!……確かに、そうかもしれませんね」
(だから私は言えなかった。『メスト様をノルベルトの改竄魔法から守って欲しい』と)
涙を堪えながら微笑むフリージアの儚い姿に、一瞬だけ目を奪われたメストは笑みを潜める。
「俺は、あなたと一緒にいたい。これまでも……そして、これからも。この願いは、俺の中にある騎士道と同じくらい絶対に揺るがないものであり譲れないもの。だから……」
懐から取り出した小箱は先程ものとは明らかに違う、綺麗に装飾が施された物。
それをフリージアに見せたメストは、そっと小箱を開ける。
そこには、銀色の土台にペリドットの宝石が嵌め込まれた指輪が入っていた。
「メスト、様……」
「フリージア・サザランス公爵令嬢」
綺麗な月の下で、令息は令嬢に懇願する。
「俺と結婚してください」
一生をかけた願いを。
※次回、最終回です!
「メスト様!」
フリージアが退院したその日。いつもよりかっちりとした服に身を包んだメストは、大きな花束を持ってサザランス公爵家のタウンハウスを訪れた。
王子様のような笑みを浮かべるメストを出迎えたフリージアは、退院前にメストが送ってくれた紺色に銀色の刺繍が施されたドレスを身に纏い、淑女らしい笑みを浮かて花束を受け取る。
が、内心はメストのカッコよさに悶えていた。
そんなフリージアに思わず苦笑したレクシャはメストに声をかける。
「メスト君、今日はフリージアの退院祝いだから、料理長がいつも以上に腕によりをかけているから期待していて欲しい」
「分かりました、公爵様」
「ハハッ、メスト君にはそう遠くないうちに私のことを『お義父さん』って呼んで欲しいな」
「私も『お義母さま』って呼んで欲しいわ」
「もう、お父様もお母様もメスト様を困らせないでください!!」
膨れっ面のフリージアを優しくエスコートしたメストは、サザランス公爵家全員揃っての食事に同席した。
フリージアが退院する数日前、フリージアが検査を受けている間に、メストはレクシャから『良かったら、フリージアが退院した日に我が家で家族全員と食事をしないか?』と誘われていた。
最初はようやく家族全員で揃った食事に自分が加わることに対して恐縮していたメストだったが、それを見たサザランス公爵夫妻とフリージアの2人の兄にゴリ押しされ、結果的にレクシャの誘いを謹んで受けた。
そして、久しぶりの和やかな食事を終えてひと段落ついた時、レクシャとアイコンタクトを交わしたメストは、椅子から立ち上がると隣に座っていたフリージアに手を差し出す。
「フリージア、外に出ないか?」
「はい!」
元気よく返事をしたフリージアの手を引いたメストは、外に出てすぐ、懐から何の装飾が施されていない小箱を取り出す。
「メスト様、そちらは?」
「これは……まぁ、後で教えるからフリージア、目を閉じてくれないか?」
「あ、分かりましたわ」
(メスト様が持っていた可愛らしい小箱、一体何かしら?)
小箱の正体が分からないままメストに言われた通り目を閉じたフリージア。
その瞬間、フリージアの体が一瞬だけ浮遊する。
「メ、メスト様!?」
「フリージア、目を開けてくれ」
「は、はい……っ!?」
一瞬だけ襲った浮遊感に戸惑いが隠せないは、言われるがままそっと目を開ける。
そこには、月光に照らされた真っ白な花畑が広がっていて、フリージアはその光景に既視感を覚えた。
「メスト様、ここって……!」
「あぁ、お前が俺にプロポーズをした場所だ」
「っ! どう、して……?」
(王都からサザランス公爵領までは馬車で約1時間ほどの距離があるはず)
目の前に広がる光景に、フリージアが唖然としていると、楽しそうな笑みを浮かべたメストが持っていた小箱をフリージアに改めて見せる。
「これだ」
「これって、先程から持っていた小箱ですよね?」
「あぁ、ロスペルがお手製で『転移』の効果が付与された血術で作られた魔道具みたいなものだ」
それは退院2週間前のこと。
フリージアをこの場所に連れて行きたかったメストは、手紙でロスペルに『血術で『転移』の付与が施された道具を作って欲しい』と依頼した。
すると、その3日後。メストのもとにロスペルから依頼通りの道具が届いたのだ
(さすが『稀代の天才魔法師』。魔法だけでなく、血術まで精通していたとは……まぁ、無効化魔法の使い手を輩出する家なら血術のことを知っていても当然か)
「これを。ロスペル兄様が?」
「あぁ、今日のために用意してくれたんだ」
「今日のため、ですか?」
不思議そうに小首を傾げるフリージアに、小箱を懐に戻したメストは、彼女を花畑まで優しくエスコートすると、花畑の真ん中で立ち止まって徐にフリージアの前で跪く。
「メ、メストさ……」
「フリージア・サザランス公爵令嬢」
ゆっくりと顔を上げたメストの表情は、さながら姫に忠誠を誓う騎士のような真剣ものだった。
「ずっと……ずっと、あなたのことが好きです。幼い頃に出会った時からずっと、あなただけが好きです。例え、記憶が改竄されて俺の中にあなたの存在が消えても、俺の心はいつだって気高く美しいあなたの姿を探していました」
(今なら分かる。俺はずっとあなたを探していた。幼い頃に出会って大好きだったあなたをずっと)
「そして、あなたと王都で再会してから、俺は大好きなあなたの傍にいたいと思っていました」
(王都で再会してから、俺はずっと平民の姿をしたあなたの傍に……悪徳騎士から平民を守る凛々しくも美しいあなたの傍にいたいと思った)
「メスト、様……」
「俺の何気ない一言が、他の女と仲睦まじくいるところ見て、優しいあなたは何度も傷ついただろう。今だから言える。本当に申し訳なかった」
(俺とあの女が王都をデートするところを見かける度に、俺があの女の話を聞くたびに、俺はあなたの柔く優しい心を何度も傷つけた)
懺悔するように深々と頭を下げるメストに、涙がこみ上げたフリージアは手で口元を覆うと、ふるふると首を横に振る。
「良いのです。そもそも、私が……私たち家族があの男を止められていたなら、私が我が身可愛さであなた様を見捨ずにいなければ、あなた様が辛い思いをしなくて済んだはずなのです」
(そうよ、例え、私たち家族があの男が止められなくても、お父様に頼んでメスト様だけ救っていただけたら……)
「そしたら、優しいあなたは家族の事情に巻き込んだ俺に対して、罪悪感を覚えて苦しんでいただろ?」
「っ!……確かに、そうかもしれませんね」
(だから私は言えなかった。『メスト様をノルベルトの改竄魔法から守って欲しい』と)
涙を堪えながら微笑むフリージアの儚い姿に、一瞬だけ目を奪われたメストは笑みを潜める。
「俺は、あなたと一緒にいたい。これまでも……そして、これからも。この願いは、俺の中にある騎士道と同じくらい絶対に揺るがないものであり譲れないもの。だから……」
懐から取り出した小箱は先程ものとは明らかに違う、綺麗に装飾が施された物。
それをフリージアに見せたメストは、そっと小箱を開ける。
そこには、銀色の土台にペリドットの宝石が嵌め込まれた指輪が入っていた。
「メスト、様……」
「フリージア・サザランス公爵令嬢」
綺麗な月の下で、令息は令嬢に懇願する。
「俺と結婚してください」
一生をかけた願いを。
※次回、最終回です!
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