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第1章 木こりと騎士は再会する
第55話 約束の日
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魔物討伐から2日後。いつものように森の木を切り出し、綺麗に加工した木材を倉庫に全て運び終えた木こりは小さく息を吐く。
すると、ステインが森の奥から駆けてきた。
「ステイン? 今日のお散歩はもうよかったの?」
木こりの相棒であるステインは、とても賢い馬なのだが好奇心旺盛で、自力で馬小屋から飛び出し、森で元気に駆け回ることを日課にしている。
森には、木こりの張った結界があるため、ステインが魔物と遭遇することは滅多にない。
けど、先日のように結界を突破して来る魔物もいるため、木こりはステインに常に辺りを警戒し、気配を感じたらすぐに主の木こりに言うように教えている。
そんな愛馬は、いつものなら木こりがお昼ご飯を作り終えたタイミングで戻ってくるのだが、まだお昼ご飯も作っていない時間に帰ってきた。
いつもより少し早い帰宅に違和感を覚えた木こりは、2日前の魔物討伐が脳裏を過った。
「もしかして、また魔物が出たの?」
(いつもなら、力が増すとされている夜に出没するんだけど……それでも、魔物が出たなら急いで向かわないと!)
険しい顔をした木こりは、使い込まれたレイピアを持ってこようと家に戻ろうとした時、ステインが慌てて主の行く手を阻むと器用に首を横に振った。
「違うの? だとしたら……あっ」
『それでは明後日の昼、こちらに伺います』
月下に交わした約束の日時を思い出し、思わず目を見開いた木こりは恐る恐るステインに聞いた。
「もしかして、あの方が来たの?」
戦々恐々とする木こりに対し、ステインは静かに首を縦に振った。
(なるほど、それで私を呼びに来たってことね。それにしても……)
「本当に来たのね」
(てっきり、王都にいる騎士様達と同じように、私を騙して王都で偶然再会した時に嘲笑うかと思った)
「って、他の騎士達がいる前で決闘じみたことを言った人が、そんなことをするとは思えないけど」
(それに、誰にでも紳士なあの人なら、例え、約束した相手が平民だろうが絶対約束を違えることはしない)
真剣な表情で約束したメストのことを一切信じていなかった木こりは、賢くて頼りになる愛馬の毛並みを優しく撫でると小さく笑みを零す。
「教えてくれてありがとう、ステイン。それじゃあ、今から準備してくるから待っていて」
小さく嘶いたステインに別れを告げた木こりは、急いで自宅に戻るとレイピアを腰に携えて外に飛び出す。
そして、馬小屋に向かって入口近く置いてある馬具を手に取ると、近くで大人しく待っていたステインに付けた。
「よし。行こう、ステイン」
(律儀に約束を守ったあの人のもとに)
元気よく嘶いて魔道具を発動させた相棒に乗って、木こりはメストとの待ち合わせ場所へ駆けて出した。
◇◇◇◇◇
「おっ、来たな」
審判役であるシトリンと待ち合わせ場所で待っていたメストは、遠くから駆けてくる馬の足音に気づくと木にもたれかかっていた体をそっと起こす。
すると、森の奥からステインが木こりを乗せて駆けてきて、2人の前で静かに立ち止まった。
「お待たせ致しました。まさか、本当にいらっしゃるとは思わなくて」
ステインから降りてきた木こりが、無表情で棘のある謝罪の言葉を口にするとメストが思わず苦笑する。
「そうでしたか。まぁ、今までの騎士達の愚行を知っているあなたなら、同じ騎士である俺のことを信じられなくても仕方ありません」
「そうですね」
(本当は来てほしくなかった。そうしたら、お互いのためになることを知っているから)
一昨日の夜に見た真剣な表情とは違い、優しく微笑みかけるメストに、木こりはこみ上げてきた気持ちを無表情の下で必死で押し留める。
すると、メストの着ている服が気になった。
「ところで、今日はとても身軽な格好をされているのですね。てっきり、鎧を纏って来るかと思っていました」
(腰に剣を携えていなければ、いいところの貴族令息にしか見えないわ)
てっきり鎧で来ると思っていた木こりは、メストの動きやすさを重視しつつも貴族令息らしい気品のあるシンプルな私服に、思わず気持ちが高鳴ってしまそうになり必死に押し殺す。
そんな木こりの心境などつゆ知らず、表情を緩めたメストは自分の服に視線を落とす。
「そうですね。本当は、鎧姿の方が実践を意識した手合わせが出来そうですが、今日は私とシトリンは休暇なので、騎士は仕事以外で鎧を持ち出すことを禁じられているのです」
「そうだったのですね」
「はい。ですが、一応この服にも防御魔法が施されているので、あなた様が着ている服とあまり変わらないと思いますよ」
「っ!……気づいていたのですか?」
「えぇ、もちろんです」
「そう、ですか」
いたずらっぽく笑うメストに、一瞬目を見開いた木こりは慌てて顔を背けて何かを誤魔化すように軽く咳払いをして視線を戻す。
(やっぱり、見抜かれていたのね。正確には、服じゃなくてさらしの方だけど……まぁ、服の上からでも防御の効果が出るよう、さらしに付与しているから彼にはそう見えたのかもしれないわね)
そんなことを思いながら、木こりはメストの隣にいる人物へ視線を移した。
すると、ステインが森の奥から駆けてきた。
「ステイン? 今日のお散歩はもうよかったの?」
木こりの相棒であるステインは、とても賢い馬なのだが好奇心旺盛で、自力で馬小屋から飛び出し、森で元気に駆け回ることを日課にしている。
森には、木こりの張った結界があるため、ステインが魔物と遭遇することは滅多にない。
けど、先日のように結界を突破して来る魔物もいるため、木こりはステインに常に辺りを警戒し、気配を感じたらすぐに主の木こりに言うように教えている。
そんな愛馬は、いつものなら木こりがお昼ご飯を作り終えたタイミングで戻ってくるのだが、まだお昼ご飯も作っていない時間に帰ってきた。
いつもより少し早い帰宅に違和感を覚えた木こりは、2日前の魔物討伐が脳裏を過った。
「もしかして、また魔物が出たの?」
(いつもなら、力が増すとされている夜に出没するんだけど……それでも、魔物が出たなら急いで向かわないと!)
険しい顔をした木こりは、使い込まれたレイピアを持ってこようと家に戻ろうとした時、ステインが慌てて主の行く手を阻むと器用に首を横に振った。
「違うの? だとしたら……あっ」
『それでは明後日の昼、こちらに伺います』
月下に交わした約束の日時を思い出し、思わず目を見開いた木こりは恐る恐るステインに聞いた。
「もしかして、あの方が来たの?」
戦々恐々とする木こりに対し、ステインは静かに首を縦に振った。
(なるほど、それで私を呼びに来たってことね。それにしても……)
「本当に来たのね」
(てっきり、王都にいる騎士様達と同じように、私を騙して王都で偶然再会した時に嘲笑うかと思った)
「って、他の騎士達がいる前で決闘じみたことを言った人が、そんなことをするとは思えないけど」
(それに、誰にでも紳士なあの人なら、例え、約束した相手が平民だろうが絶対約束を違えることはしない)
真剣な表情で約束したメストのことを一切信じていなかった木こりは、賢くて頼りになる愛馬の毛並みを優しく撫でると小さく笑みを零す。
「教えてくれてありがとう、ステイン。それじゃあ、今から準備してくるから待っていて」
小さく嘶いたステインに別れを告げた木こりは、急いで自宅に戻るとレイピアを腰に携えて外に飛び出す。
そして、馬小屋に向かって入口近く置いてある馬具を手に取ると、近くで大人しく待っていたステインに付けた。
「よし。行こう、ステイン」
(律儀に約束を守ったあの人のもとに)
元気よく嘶いて魔道具を発動させた相棒に乗って、木こりはメストとの待ち合わせ場所へ駆けて出した。
◇◇◇◇◇
「おっ、来たな」
審判役であるシトリンと待ち合わせ場所で待っていたメストは、遠くから駆けてくる馬の足音に気づくと木にもたれかかっていた体をそっと起こす。
すると、森の奥からステインが木こりを乗せて駆けてきて、2人の前で静かに立ち止まった。
「お待たせ致しました。まさか、本当にいらっしゃるとは思わなくて」
ステインから降りてきた木こりが、無表情で棘のある謝罪の言葉を口にするとメストが思わず苦笑する。
「そうでしたか。まぁ、今までの騎士達の愚行を知っているあなたなら、同じ騎士である俺のことを信じられなくても仕方ありません」
「そうですね」
(本当は来てほしくなかった。そうしたら、お互いのためになることを知っているから)
一昨日の夜に見た真剣な表情とは違い、優しく微笑みかけるメストに、木こりはこみ上げてきた気持ちを無表情の下で必死で押し留める。
すると、メストの着ている服が気になった。
「ところで、今日はとても身軽な格好をされているのですね。てっきり、鎧を纏って来るかと思っていました」
(腰に剣を携えていなければ、いいところの貴族令息にしか見えないわ)
てっきり鎧で来ると思っていた木こりは、メストの動きやすさを重視しつつも貴族令息らしい気品のあるシンプルな私服に、思わず気持ちが高鳴ってしまそうになり必死に押し殺す。
そんな木こりの心境などつゆ知らず、表情を緩めたメストは自分の服に視線を落とす。
「そうですね。本当は、鎧姿の方が実践を意識した手合わせが出来そうですが、今日は私とシトリンは休暇なので、騎士は仕事以外で鎧を持ち出すことを禁じられているのです」
「そうだったのですね」
「はい。ですが、一応この服にも防御魔法が施されているので、あなた様が着ている服とあまり変わらないと思いますよ」
「っ!……気づいていたのですか?」
「えぇ、もちろんです」
「そう、ですか」
いたずらっぽく笑うメストに、一瞬目を見開いた木こりは慌てて顔を背けて何かを誤魔化すように軽く咳払いをして視線を戻す。
(やっぱり、見抜かれていたのね。正確には、服じゃなくてさらしの方だけど……まぁ、服の上からでも防御の効果が出るよう、さらしに付与しているから彼にはそう見えたのかもしれないわね)
そんなことを思いながら、木こりはメストの隣にいる人物へ視線を移した。
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