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第1章 木こりと騎士は再会する
第57話 交えるに値しない
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「はぁ!?」
(こいつ、いきなり何を言っているんだ?)
手合わせとは思えない木こりにとって不利なルールに、メストはシトリンを睨みつける。
だが、シトリンは笑みを絶やさない。
「だってさ、メストは彼の戦いぶり……特に回避技に一目惚れしたんでしょ?」
「ま、まぁ……そうだな」
(なんだか、改めて言われると物凄く恥ずかしいんだが!)
気恥ずかしさを隠そうと眉間の皺が深くなるメストを見て、シトリンは確信を得たように笑みを深めた。
「でしょ? それなら、彼にメストの攻撃を回避してし続けてもらえば、弟子入りしなくても彼の回避技を見ることが出来るし、あわよくば自分のものに出来るんじゃないかな?」
「見ただけで彼の回避技を習得出来るとは思えないのだが……そもそも、そんな公平性に欠けた手合わせ、騎士として受け入れられるはずがない!」
怒りを露わにしたメストがシトリンに掴みかかると、黙って聞いていた木こりが口を開いた。
「つまり、私は騎士様の攻撃を躱し続ければいいってことですよね?」
「そういうこと。君、意外と理解力高いね」
「ありがとうございます。ですが、勝敗はどうやってつけるのですか?」
「そうだ! どうやって勝敗を決めるんだ!」
鼻息荒くしているメストと、無表情でこちらを見る木こりを見て、『待ってました』と言わんばかりの笑みを浮かべるシトリンが勝敗を付けた方を口にする。
「木こり君が鞘からレイピアを抜いたらメストの勝ちで、メストが少しでも疲れを見せたら木こり君の勝ちってことでどう?」
「そんな無茶苦茶な勝敗の付け方……!」
「良いですよ」
「っ!?」
淡々と答えた木こりの返事に、頭が冷えたメストはシトリンの胸倉を掴んでいた手を離すと、木こりに目を向ける。
「良いのか? 攻撃手段を無くした状態で君はひたすら俺からの攻撃を躱し続けないといけないんだぞ?」
気遣うような顔で見つめるメストに、思わず胸が高鳴った木こりは笑みを零しそうになる。
(これまで出会った騎士様なら、こんな最低なルールを喜んでいた。けど、あなたはそうやって心配してくれるのね……本当、変わらないわ)
心配そうな顔をする彼を見て、懐かしく思った木こりは無表情で軽く頷く。
「構いません。剣が使えないだけで攻撃する手段が無くなったわけではありませんから」
(いざとなれば、体術で反撃すれば良いし、なんだったら彼に突進してもいい。正直、防御魔法が付与されている服を着ている彼にダメージを与えられないけど……隙を作ったり相打ちに持ち込んだりすることは出来るはずよね)
「それに」
「それに?」
不思議そうに首を傾げるメストに、木こりは静かに目を閉じる。
(今、私の目の前にいる人は、ペトロート王国近衛騎士団に所属している騎士様。私の知っている彼ではないわ)
脳裏に蘇る彼との在りし日々。
忘れたくても忘れられない彼との温かな思い出は、冷たく凍ってしまった木こり心を簡単に溶かしてしまう。
「あ、あの……?」
(今の私は木こり。目の前にいるのは近衛騎士様。ただ、それだけ)
蘇った記憶を封じるように、温かな気持ちを心の憶測に押し込めた木こりは、ゆっくりと目を開けると心配そうに見つめるメストに向かって煽った。
「恐れながら、あなた様が私と剣を交えるに値する人とは到底思えません」
そこには、悪徳騎士達に対峙する時の毅然とした冷たい木こりがいた。
(こいつ、いきなり何を言っているんだ?)
手合わせとは思えない木こりにとって不利なルールに、メストはシトリンを睨みつける。
だが、シトリンは笑みを絶やさない。
「だってさ、メストは彼の戦いぶり……特に回避技に一目惚れしたんでしょ?」
「ま、まぁ……そうだな」
(なんだか、改めて言われると物凄く恥ずかしいんだが!)
気恥ずかしさを隠そうと眉間の皺が深くなるメストを見て、シトリンは確信を得たように笑みを深めた。
「でしょ? それなら、彼にメストの攻撃を回避してし続けてもらえば、弟子入りしなくても彼の回避技を見ることが出来るし、あわよくば自分のものに出来るんじゃないかな?」
「見ただけで彼の回避技を習得出来るとは思えないのだが……そもそも、そんな公平性に欠けた手合わせ、騎士として受け入れられるはずがない!」
怒りを露わにしたメストがシトリンに掴みかかると、黙って聞いていた木こりが口を開いた。
「つまり、私は騎士様の攻撃を躱し続ければいいってことですよね?」
「そういうこと。君、意外と理解力高いね」
「ありがとうございます。ですが、勝敗はどうやってつけるのですか?」
「そうだ! どうやって勝敗を決めるんだ!」
鼻息荒くしているメストと、無表情でこちらを見る木こりを見て、『待ってました』と言わんばかりの笑みを浮かべるシトリンが勝敗を付けた方を口にする。
「木こり君が鞘からレイピアを抜いたらメストの勝ちで、メストが少しでも疲れを見せたら木こり君の勝ちってことでどう?」
「そんな無茶苦茶な勝敗の付け方……!」
「良いですよ」
「っ!?」
淡々と答えた木こりの返事に、頭が冷えたメストはシトリンの胸倉を掴んでいた手を離すと、木こりに目を向ける。
「良いのか? 攻撃手段を無くした状態で君はひたすら俺からの攻撃を躱し続けないといけないんだぞ?」
気遣うような顔で見つめるメストに、思わず胸が高鳴った木こりは笑みを零しそうになる。
(これまで出会った騎士様なら、こんな最低なルールを喜んでいた。けど、あなたはそうやって心配してくれるのね……本当、変わらないわ)
心配そうな顔をする彼を見て、懐かしく思った木こりは無表情で軽く頷く。
「構いません。剣が使えないだけで攻撃する手段が無くなったわけではありませんから」
(いざとなれば、体術で反撃すれば良いし、なんだったら彼に突進してもいい。正直、防御魔法が付与されている服を着ている彼にダメージを与えられないけど……隙を作ったり相打ちに持ち込んだりすることは出来るはずよね)
「それに」
「それに?」
不思議そうに首を傾げるメストに、木こりは静かに目を閉じる。
(今、私の目の前にいる人は、ペトロート王国近衛騎士団に所属している騎士様。私の知っている彼ではないわ)
脳裏に蘇る彼との在りし日々。
忘れたくても忘れられない彼との温かな思い出は、冷たく凍ってしまった木こり心を簡単に溶かしてしまう。
「あ、あの……?」
(今の私は木こり。目の前にいるのは近衛騎士様。ただ、それだけ)
蘇った記憶を封じるように、温かな気持ちを心の憶測に押し込めた木こりは、ゆっくりと目を開けると心配そうに見つめるメストに向かって煽った。
「恐れながら、あなた様が私と剣を交えるに値する人とは到底思えません」
そこには、悪徳騎士達に対峙する時の毅然とした冷たい木こりがいた。
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