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第3章 木こりは距離を縮め、宮廷魔法師は陥れられる
第160話 魅了魔法
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――それは、カミルの背中をカトレアとメストが見送っていた頃のことである。
カトレア達がいる場所からかなり離れた場所に、月明かりがほとんど差し込まない闇夜に包まれた森があった。
その森に、純白のローブに身を包んだ2人の男女が、双眼鏡を持ってカトレア達のことを観察していた。
「はぁ~~、つまんないの」
そう言って、乱暴に双眼鏡を外した女は、被っていたフードを鬱陶しそうに外すと不機嫌そうに頬を膨らませる。
すると、彼女の隣にいた男が静かに双眼鏡を離すと溜息をつく。
「まぁ、そう言うな。ここからだと、魔法の効力が薄くなることぐらい、お前だって分かっていただろう。ダリア」
「は~~い、分かっていますよ。リアンお兄様」
(全く、本当に分かっているのか? この妹は)
不服そうなそっぽを向くダリアに、深く溜息をついたリアンは近くにあった木へ凭れ掛かる。
「そもそも、気晴らしでこんな血生臭い場所に来る必要があったのか?」
心底呆れ顔のリアンがダリアに目を向けると、クルクルと艶のある黒髪を弄んでいたダリアが小さく肩を竦める。
「まぁ、気晴らしをするためだけならこんな血生臭いところに来ないけど……」
火球を放った瞬間、大声を上げて取り乱すカトレアを思い出し、ダリアが歪に口角を上げる。
「『稀代の天才魔法師様』が『宰相家令嬢』である私に対して無礼を働いたんだもの。その報いとして、彼女を魅了して彼女を操り、彼女が誇りにしている魔法を放ったの♪」
「お前なぁ」
『キャハハッ!』と宰相家令嬢らしくない下卑た笑みを浮かべながら話すダリアに、リアンは『やっぱり、そんなことか』と呆れたように溜息をつく。
「というか、いつの間に稀代の天才魔法師様に魅了魔法を使ったんだ?」
(俺としては、稀代の天才魔法師様に魅了魔法をかけられたこと自体、驚きだったのだが)
『稀代の天才魔法師』と呼ばれているから、魔法に対して敏感あるが故にダリアの魅了魔法にかかるわけがないと思っていたリアン。
だが、ダリアはいとも簡単にかけてしまったのだ。
「そんなの、お父様から与えられたお仕事を済ませたついでに、カトレアのところへ遊びに行った時、魅了魔法を使ったに決まっているじゃない!」
「でも、稀代の天才魔法師様相手に魅了魔法を使うのは危険じゃないのか? もし、万が一にもバレでもしたら……」
「大丈夫よ! そもそも、私が魅了魔法を使えるなんてあの子は知らない。それに、下民に魔法を撃った時、『実は魅了魔法がかかっていた』って後で分かったとしても、あの子が親友である私を疑うわけがないから大・丈・夫♪」
「そう、か。確かにそうだよな」
「でしょ~♪」
(一体、どうやって稀代の天才魔法師様に魅了魔法をかけたのか分からないが……でもまぁ、1つ言えることは、妹が稀代の天才魔法師に魅了魔法をかけることが出来たのは、全ては親父の闇魔法のお陰なんだよな)
現宰相である父の顔を思い出し、再び小さく溜息をついたリアンはご機嫌なダリアに視線を戻す。
「で、無礼を働いた奴の報いを与えて憂さ晴らしをするためだけに、わざわざ宮廷魔法師に対して闇魔法である魅了魔法をかけて、ここまで来たってことか?」
「フフン、そういうことよ」
得意げに笑ったダリアは、人差し指に黒い魔力を灯す。
(我がインベック家は代々、『闇魔法』と呼ばれる王国で厳しく制限されている魔法を持つ人間が生まれる。そしてそれは、俺や我が妹も例外ではなかった)
『見てみて、お父様! 私、魔法が使えるようになったわ!』
(そう言って、物心ついた妹に発現した魔法は、相手を魅了することで相手を意のままに操る『魅了魔法』と呼ばれる闇魔法だった。もちろん、魅了した相手がどれだけ自分の思い通りに動いてくれるかは、魅了魔法を使う術者の力量や練度にもよる。だが……)
「さて、さっき宮廷魔法師の中に好みの殿方がいたから、後で彼を魅了してお持ち帰りしようかしら?」
(我が妹の場合、好みの男を落とすために頻繁に魅了魔法を使っているので、魅了魔法に関しては折り紙つきの実力である……とはいえ、やっていることは客引き娼婦と然程変わらないが)
「お前、ここに来る前、『これが終わったら、いつもの娼館へ遊びに行こうかしら?』なんて言ってなかったか?」
再び呆れたような溜息をつくリアンに、ダリアは不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「フン! そんなの、明日にすれば良いじゃない! 今日は、あの殿方をお持ち帰りして一夜の過ちを楽しみたいの!」
「……あぁ、そうですか」
(これはまた、妹のせいで親父が闇魔法を使うことになるな)
お持ち帰り予定の宮廷魔法師に目をギラギラさせるダリアに、心底呆れたような顔をしたリアンは、娘の奔放さに振り回される父親を憐れに思いつつ、双眼鏡でカトレア達の観察を再開する。
カトレア達がいる場所からかなり離れた場所に、月明かりがほとんど差し込まない闇夜に包まれた森があった。
その森に、純白のローブに身を包んだ2人の男女が、双眼鏡を持ってカトレア達のことを観察していた。
「はぁ~~、つまんないの」
そう言って、乱暴に双眼鏡を外した女は、被っていたフードを鬱陶しそうに外すと不機嫌そうに頬を膨らませる。
すると、彼女の隣にいた男が静かに双眼鏡を離すと溜息をつく。
「まぁ、そう言うな。ここからだと、魔法の効力が薄くなることぐらい、お前だって分かっていただろう。ダリア」
「は~~い、分かっていますよ。リアンお兄様」
(全く、本当に分かっているのか? この妹は)
不服そうなそっぽを向くダリアに、深く溜息をついたリアンは近くにあった木へ凭れ掛かる。
「そもそも、気晴らしでこんな血生臭い場所に来る必要があったのか?」
心底呆れ顔のリアンがダリアに目を向けると、クルクルと艶のある黒髪を弄んでいたダリアが小さく肩を竦める。
「まぁ、気晴らしをするためだけならこんな血生臭いところに来ないけど……」
火球を放った瞬間、大声を上げて取り乱すカトレアを思い出し、ダリアが歪に口角を上げる。
「『稀代の天才魔法師様』が『宰相家令嬢』である私に対して無礼を働いたんだもの。その報いとして、彼女を魅了して彼女を操り、彼女が誇りにしている魔法を放ったの♪」
「お前なぁ」
『キャハハッ!』と宰相家令嬢らしくない下卑た笑みを浮かべながら話すダリアに、リアンは『やっぱり、そんなことか』と呆れたように溜息をつく。
「というか、いつの間に稀代の天才魔法師様に魅了魔法を使ったんだ?」
(俺としては、稀代の天才魔法師様に魅了魔法をかけられたこと自体、驚きだったのだが)
『稀代の天才魔法師』と呼ばれているから、魔法に対して敏感あるが故にダリアの魅了魔法にかかるわけがないと思っていたリアン。
だが、ダリアはいとも簡単にかけてしまったのだ。
「そんなの、お父様から与えられたお仕事を済ませたついでに、カトレアのところへ遊びに行った時、魅了魔法を使ったに決まっているじゃない!」
「でも、稀代の天才魔法師様相手に魅了魔法を使うのは危険じゃないのか? もし、万が一にもバレでもしたら……」
「大丈夫よ! そもそも、私が魅了魔法を使えるなんてあの子は知らない。それに、下民に魔法を撃った時、『実は魅了魔法がかかっていた』って後で分かったとしても、あの子が親友である私を疑うわけがないから大・丈・夫♪」
「そう、か。確かにそうだよな」
「でしょ~♪」
(一体、どうやって稀代の天才魔法師様に魅了魔法をかけたのか分からないが……でもまぁ、1つ言えることは、妹が稀代の天才魔法師に魅了魔法をかけることが出来たのは、全ては親父の闇魔法のお陰なんだよな)
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「で、無礼を働いた奴の報いを与えて憂さ晴らしをするためだけに、わざわざ宮廷魔法師に対して闇魔法である魅了魔法をかけて、ここまで来たってことか?」
「フフン、そういうことよ」
得意げに笑ったダリアは、人差し指に黒い魔力を灯す。
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「フン! そんなの、明日にすれば良いじゃない! 今日は、あの殿方をお持ち帰りして一夜の過ちを楽しみたいの!」
「……あぁ、そうですか」
(これはまた、妹のせいで親父が闇魔法を使うことになるな)
お持ち帰り予定の宮廷魔法師に目をギラギラさせるダリアに、心底呆れたような顔をしたリアンは、娘の奔放さに振り回される父親を憐れに思いつつ、双眼鏡でカトレア達の観察を再開する。
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