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第4章 記憶と思惑のフィアンツ帝国
第212話 解呪魔法
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「私だけ、ですか?」
(確か、さっきも私のことを『重症だ』って言っていたけど……)
小首を傾げたカトレアを見て、マーザスは笑みを潜めた。
「確かに、ラピス君の状態もそれなりに重いけど……君の場合は、ラピス君の比にならないくらい深刻だよ」
「っ!?」
(そんなに私の状態は深刻なの!?)
驚いて目を見開いたカトレアに対し、今度はマーザスが不思議そうに小首を傾げた。
「正直、君だけなぜそんなに状態が深刻なのか理解出来ないけど……それだけ、君の中は改竄する記憶がたくさんあったということだろうね」
「では、私にかけられた改竄魔法を解くのは難しいのでしょうか?」
(例え、解呪魔法をかけたとしても改竄魔法を解くことは……)
こみ上げてきた悔しさを押さえるように、カトレアは膝の上に乗せていた綺麗な手に力を込めた。
すると、笑みを浮かべたマーザスが小さく首を横に振った。
「いや、出来るよ。さっきも言ったけど、解呪魔法は、術者が対象者の状態を解けるくらいの魔力と技量を持っていれば成功する。そして、鑑定魔法で君の状態を見た僕の見立てでは……君にかけられた改竄魔法は、僕でも解くことが出来るよ」
「本当ですか?」
「あぁ、本当さ。『帝国の天才魔法師』と言われている、このマーザス・アラウェイの名に懸けてね」
「っ!?……それでは!!」
興奮のあまり立ち上がったカトレアに、マーザスは頷いた。
「うん。君が望むなら、君の師匠から預かった杖を使って、君にかけられた改竄魔法を解こう。でも……」
笑みを浮かべていたマーザスの表情が、突然真剣なものになった。
「解呪魔法が成功した場合、副作用として対象者の体に負担がかかる。それは、対象者の状態にもよるけど……状態が軽ければ、短距離走後の疲労感ぐらいだね。だが、カトレア君の場合は……途轍もない激痛が襲うことを覚悟しておいた方がいい」
「っ!?」
その瞬間、静かに2人の会話を聞いていたラピスが慌ててカトレアの方を見た。
そして、カトレアの手にそっと自分の手を重ねた。
「カトレア、改竄魔法を解くのは止めた方が良い。そこまでして、解呪魔法を解く必要はないはずだ」
「ラピス……」
ゆっくりと隣を見たカトレアに、ラピスは懇願するように言い募った。
「お前が、魔法師として改竄魔法がかけられている今の状態を許せないのは理解しているつもりだ。でも俺は、激痛に耐えながら改竄魔法を解くお前を見たくない。今までだって、改竄魔法にかけられていること知らなかったとはいえ、何事も無く慌ただしい日常を過ごせた。だったら、これからも……」
「悪いけど、ラピス君。それは違うよ」
「マーザス殿?」
小首を傾げたラピスは、視線をカトレアからマーザスに移した。
そこには、ローテーブルに両肘を立てて前のめりの姿勢のまま、沈痛な表情をしているマーザスがいた。
深く溜息をついたマーザスは、静かに口を開いた。
「さっきも説明したけど、改竄魔法は術者と対象者の魔力を使って、対象者の記憶を改竄する魔法。つまり、術者がラピス君やカトレア君に改竄魔法をかけた時点で、君たち2人は術者の都合の良いように記憶を改竄されても良い状態になったってこと」
「たっ、確かに……」
マーザスの説明を聞いて、酷く悔しそうな顔をするラピスに、苦々しい表情でするカトレア。
そんな2人に、眉間に皺を寄せたマーザスが忠告した。
「だから、今の状態がいつまでも続くなんて甘い考えは捨てた方がいい。術者がその気になれば、君たちの記憶なんか人格ごとあっという間に改竄出来るのだから」
(そう、術者にとって今の君たち手の内の駒。その状況で、この先も自我が保ったまま過ごせるなんて保証はない)
静かに目を伏せたラピスとカトレアを見て、マーザスは部屋の隅に飾っている帝国の紋章に目をやった。
「改竄魔法は、帝国や王国にとって無益な戦乱を引き起こした最低最悪の闇魔法。それが再び、争いの引き金を引くようなことは、決してあってはなってはならない。何より……」
マーザスは、帝国の紋章から王国から使いに視線を戻した。
「改竄魔法のせいで、自分や大切な人達の記憶を無くすことも、自我を無くした術者の駒として誰か……大切な人達を殺めることはしたくないでしょ?」
(確か、さっきも私のことを『重症だ』って言っていたけど……)
小首を傾げたカトレアを見て、マーザスは笑みを潜めた。
「確かに、ラピス君の状態もそれなりに重いけど……君の場合は、ラピス君の比にならないくらい深刻だよ」
「っ!?」
(そんなに私の状態は深刻なの!?)
驚いて目を見開いたカトレアに対し、今度はマーザスが不思議そうに小首を傾げた。
「正直、君だけなぜそんなに状態が深刻なのか理解出来ないけど……それだけ、君の中は改竄する記憶がたくさんあったということだろうね」
「では、私にかけられた改竄魔法を解くのは難しいのでしょうか?」
(例え、解呪魔法をかけたとしても改竄魔法を解くことは……)
こみ上げてきた悔しさを押さえるように、カトレアは膝の上に乗せていた綺麗な手に力を込めた。
すると、笑みを浮かべたマーザスが小さく首を横に振った。
「いや、出来るよ。さっきも言ったけど、解呪魔法は、術者が対象者の状態を解けるくらいの魔力と技量を持っていれば成功する。そして、鑑定魔法で君の状態を見た僕の見立てでは……君にかけられた改竄魔法は、僕でも解くことが出来るよ」
「本当ですか?」
「あぁ、本当さ。『帝国の天才魔法師』と言われている、このマーザス・アラウェイの名に懸けてね」
「っ!?……それでは!!」
興奮のあまり立ち上がったカトレアに、マーザスは頷いた。
「うん。君が望むなら、君の師匠から預かった杖を使って、君にかけられた改竄魔法を解こう。でも……」
笑みを浮かべていたマーザスの表情が、突然真剣なものになった。
「解呪魔法が成功した場合、副作用として対象者の体に負担がかかる。それは、対象者の状態にもよるけど……状態が軽ければ、短距離走後の疲労感ぐらいだね。だが、カトレア君の場合は……途轍もない激痛が襲うことを覚悟しておいた方がいい」
「っ!?」
その瞬間、静かに2人の会話を聞いていたラピスが慌ててカトレアの方を見た。
そして、カトレアの手にそっと自分の手を重ねた。
「カトレア、改竄魔法を解くのは止めた方が良い。そこまでして、解呪魔法を解く必要はないはずだ」
「ラピス……」
ゆっくりと隣を見たカトレアに、ラピスは懇願するように言い募った。
「お前が、魔法師として改竄魔法がかけられている今の状態を許せないのは理解しているつもりだ。でも俺は、激痛に耐えながら改竄魔法を解くお前を見たくない。今までだって、改竄魔法にかけられていること知らなかったとはいえ、何事も無く慌ただしい日常を過ごせた。だったら、これからも……」
「悪いけど、ラピス君。それは違うよ」
「マーザス殿?」
小首を傾げたラピスは、視線をカトレアからマーザスに移した。
そこには、ローテーブルに両肘を立てて前のめりの姿勢のまま、沈痛な表情をしているマーザスがいた。
深く溜息をついたマーザスは、静かに口を開いた。
「さっきも説明したけど、改竄魔法は術者と対象者の魔力を使って、対象者の記憶を改竄する魔法。つまり、術者がラピス君やカトレア君に改竄魔法をかけた時点で、君たち2人は術者の都合の良いように記憶を改竄されても良い状態になったってこと」
「たっ、確かに……」
マーザスの説明を聞いて、酷く悔しそうな顔をするラピスに、苦々しい表情でするカトレア。
そんな2人に、眉間に皺を寄せたマーザスが忠告した。
「だから、今の状態がいつまでも続くなんて甘い考えは捨てた方がいい。術者がその気になれば、君たちの記憶なんか人格ごとあっという間に改竄出来るのだから」
(そう、術者にとって今の君たち手の内の駒。その状況で、この先も自我が保ったまま過ごせるなんて保証はない)
静かに目を伏せたラピスとカトレアを見て、マーザスは部屋の隅に飾っている帝国の紋章に目をやった。
「改竄魔法は、帝国や王国にとって無益な戦乱を引き起こした最低最悪の闇魔法。それが再び、争いの引き金を引くようなことは、決してあってはなってはならない。何より……」
マーザスは、帝国の紋章から王国から使いに視線を戻した。
「改竄魔法のせいで、自分や大切な人達の記憶を無くすことも、自我を無くした術者の駒として誰か……大切な人達を殺めることはしたくないでしょ?」
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