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第4章 記憶と思惑のフィアンツ帝国
特別編 雪の日に甘くほろ苦い贈り物を(前編)
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※カミル視点です
「おっ、明日は珍しく雪が降るな」
いつものように魔石屋で買い物を済ませ、機嫌の良い店主様が店を出ると、外の冷たさに笑みを深める。
「そうですね。明日の今頃は、雪で王都は真っ白になるでしょう」
1年を通して温暖な気候であるペトロート王国だが、稀に雪が降ることがある。
寒さに慣れていない王国民にとって、今日と明日は外に出るのも億劫になるだろう。
とは言っても、明日を生きるのに必死な平民には関係ない話だけど。
火の魔石がたっぷり入った袋に視線を落として小さく溜息をつく。
もちろん、これはリアスタ村の人達の分。
すると、風に運ばれてきた甘い匂いが鼻腔を擽った。
「そう言えば、明日は『聖なる日』でしたね」
聖なる日。
それは、ペトロート王国第二代国王陛下の誕生日であり、陛下が王妃様にプロポーズした日である。
当時王太子殿下だった陛下に、婚約者候補だった王妃様が陛下の大好物だったチョコレートを贈った。
すると、陛下が嬉しさのあまり王妃様にプロポーズをした。
その時の光景があまりにも神々しかったことから『聖なる日』と定められ、この日は意中の相手にチョコレートを贈ることが通例とされている。
3年前までは、平民でも楽しめた特別な日だった。けど……
「あぁ、貴族のみに許されているチョコレートをあげる日だろ? 全く、下らない日だよな」
不機嫌そうな店主の言葉に、私は小さく唇を噛み締める。
そう、3年前に今の宰相が『先代陛下の生誕祭を平民如きが祝うなど恥知らずだ!』と突然平民が祝うことを禁じたのだ。
そのため、今のペトロート王国では、この日は貴族だけがチョコレートを贈ることを許されている。
もし、平民がチョコレートを贈った場合、反逆罪として重い罰が課せられる。
「あ~あ、あちらこちらでチョコレートの甘い匂いが漂ってくる。本当、嫌になるよな」
「そう、ですね」
本当、嫌になってしまうわ。
しかめっ面で嫌味を漏らす店主様を見て、僅かに眉を顰めた私は徐々に雲が広がり始めている空を見上げた。
恐らく、この日はメスト様もあの女からチョコを貰っているのかしら?
メスト様と鍛錬を始めてから1年。
王都で再会した時に比べたら、明らかに距離が縮んでいる。
彼の一挙手一投足にどれだけかき乱されたか。
脳裏に蘇る彼の笑顔。真剣な顔。困ったような顔。
その全てが愛おしい。
「まさか、こんなにも胸が苦しくなる日が来るなんてね」
いつの間にか店主様は店に戻り、私は胸の前で小さく握り拳を作る。
こんな気持ちになることは、最初から分かっていた。
でも、一緒に鍛錬したいと頭を下げる彼を無下に出来るほど、私は冷酷にはなれなかった。
「これはきっと私への罰なのかしら?」
彼と一緒にいたいと願ってしまった私への罰。
自嘲気味に笑みを零した私は、小さく息を吐くと足元にある大きな袋を担いだ。
「さて、村にこれを届けないと」
明日は彼が止まりに来る日。
だけど、明日は聖なる日だから、多分彼は来ないだろう。
期待してはダメ。それでも……
「明日、帰りに花とチョコレートケーキでも買っていこうかしら」
冷たい風が雪の訪れを告げ、王都がチョコレートの甘い匂いに包まれる中、私は明日の予定を立てた。
「おっ、明日は珍しく雪が降るな」
いつものように魔石屋で買い物を済ませ、機嫌の良い店主様が店を出ると、外の冷たさに笑みを深める。
「そうですね。明日の今頃は、雪で王都は真っ白になるでしょう」
1年を通して温暖な気候であるペトロート王国だが、稀に雪が降ることがある。
寒さに慣れていない王国民にとって、今日と明日は外に出るのも億劫になるだろう。
とは言っても、明日を生きるのに必死な平民には関係ない話だけど。
火の魔石がたっぷり入った袋に視線を落として小さく溜息をつく。
もちろん、これはリアスタ村の人達の分。
すると、風に運ばれてきた甘い匂いが鼻腔を擽った。
「そう言えば、明日は『聖なる日』でしたね」
聖なる日。
それは、ペトロート王国第二代国王陛下の誕生日であり、陛下が王妃様にプロポーズした日である。
当時王太子殿下だった陛下に、婚約者候補だった王妃様が陛下の大好物だったチョコレートを贈った。
すると、陛下が嬉しさのあまり王妃様にプロポーズをした。
その時の光景があまりにも神々しかったことから『聖なる日』と定められ、この日は意中の相手にチョコレートを贈ることが通例とされている。
3年前までは、平民でも楽しめた特別な日だった。けど……
「あぁ、貴族のみに許されているチョコレートをあげる日だろ? 全く、下らない日だよな」
不機嫌そうな店主の言葉に、私は小さく唇を噛み締める。
そう、3年前に今の宰相が『先代陛下の生誕祭を平民如きが祝うなど恥知らずだ!』と突然平民が祝うことを禁じたのだ。
そのため、今のペトロート王国では、この日は貴族だけがチョコレートを贈ることを許されている。
もし、平民がチョコレートを贈った場合、反逆罪として重い罰が課せられる。
「あ~あ、あちらこちらでチョコレートの甘い匂いが漂ってくる。本当、嫌になるよな」
「そう、ですね」
本当、嫌になってしまうわ。
しかめっ面で嫌味を漏らす店主様を見て、僅かに眉を顰めた私は徐々に雲が広がり始めている空を見上げた。
恐らく、この日はメスト様もあの女からチョコを貰っているのかしら?
メスト様と鍛錬を始めてから1年。
王都で再会した時に比べたら、明らかに距離が縮んでいる。
彼の一挙手一投足にどれだけかき乱されたか。
脳裏に蘇る彼の笑顔。真剣な顔。困ったような顔。
その全てが愛おしい。
「まさか、こんなにも胸が苦しくなる日が来るなんてね」
いつの間にか店主様は店に戻り、私は胸の前で小さく握り拳を作る。
こんな気持ちになることは、最初から分かっていた。
でも、一緒に鍛錬したいと頭を下げる彼を無下に出来るほど、私は冷酷にはなれなかった。
「これはきっと私への罰なのかしら?」
彼と一緒にいたいと願ってしまった私への罰。
自嘲気味に笑みを零した私は、小さく息を吐くと足元にある大きな袋を担いだ。
「さて、村にこれを届けないと」
明日は彼が止まりに来る日。
だけど、明日は聖なる日だから、多分彼は来ないだろう。
期待してはダメ。それでも……
「明日、帰りに花とチョコレートケーキでも買っていこうかしら」
冷たい風が雪の訪れを告げ、王都がチョコレートの甘い匂いに包まれる中、私は明日の予定を立てた。
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