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113 ベスミー
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「──カイン」
部屋を出たら、ミズホさんがカインゼルさんを呼び止めた。
「先にいってます。駆除は午後から始めましょう。その間にリハルの町を探索してきますよ」
そう言ってさっさと立ち去った。二人の過去に立ち入る気はないからな。
そのまま支部を出ると、パイオニアの周りにお子様たちが集まっており、ラダリオンに飴をもらっていた。
「ラダリオン。駆除は昼からにする。その間にリハルの町を探索しようと思うんだが、お前はどうする?」
面倒だから飴で追い払おうとしてるんだろうが、それは逆効果だぞ。鯉にエサをやってるようなものだ。
「いく!」
残った飴の袋を遠くに投げ放って子供たちを遠ざけた。こら。食べ物を投げたらいかんよ。
パイオニアのキーはオレも持っているので運転席に乗り込み、お子様たちが寄ってこないうちに発車させた。
跳ね橋にいる兵士にまたくると声をかけ、町の大通り的な道を適当に進んだ。と言ってもリハルの町はそれほど大きくもなく、これと言って見るものもなし。市場的なものは町の外、南門から出るそうだ。
適当に走って南門から出ると、左右に店が並び、そのまま進むと広場に出た。
町館と同じく馬車が何台も停まっており、いろんなものを積み降ろししていた。
「葡萄、もう収穫してるんだ」
まだ夏だと言うのに異世界の葡萄は夏収穫なのか?
「あれはベスミー。夏になるやつ」
「ベスミー?」
「酸っぱいけど、蜂蜜と煮ると美味しい」
「ブルーベリーみたいなもんか。シェイクにしたら美味いかもな」
ミキサーでバナナシェイクはよく作ってたが、ブルーベリーはなにげに高いからやったことなかったんだよな。
「美味しいの?」
「ベスミーの味はわからんが、シェイクは美味いぞ。風呂上がりに飲むとさらに美味いな」
牛乳とバニラアイス、砂糖、レモン汁を入れてミキサーにかける。簡単に作れるから夏はよく飲んだものだ。
「ベスミー買ってくる!」
パイオニアを降りてベスミーを買いに走るラダリオン。饒舌になるだけじゃなく行動的にもなるヤツだよ。てかお前、買い物できるのか?
一応、なにかのために銀貨と銅貨を持たせてはあるが、買い物はオレがやっていた。それでいきなり買ってくるは無謀だろう!
「買ってきた!」
まあ、失敗も勉強だと見守っていたら、籠ごとベスミーを買ってきた。それはちょっと買いすぎだろう。軽く五キロくらいはありそうだぞ……。
「い、いくらしたんだ?」
「銀貨一枚出したら籠ごとくれた」
「あ、うん、そうか。よかったな。今日の夜にでも作るからセフティーホームに置いてこい」
うん、まあ、ラダリオンなら二日もあれば消費できるだろう。オールライトだ。
「あ、少し洗って皿に盛ってきてくれ。あと練乳も」
ちょっと味見しておこう。
「それは美味しい組み合わせだと思う!」
パッ! と消えて十秒もしないで洗ったベスミーと練乳を持ってきた。お前には加速装置でも搭載されてるのか?
「うん。美味いな」
なにはともあれベスミーに練乳をかけて試食してみると、なかなか美味かった。これならシェイクにしても絶対に美味くなるヤツだ。
「美味しい! タカト、もっと買おう! ロミーたちも喜ぶ!」
そうだな。奥様連中に媚びを売っておいて損はない。
パイオニアを広場の端に停め、荷物を一旦セフティーホームに戻して買い物に出かけた。
「どこで買ったんだ?」
かなり近いところで買ってきた勢いだったが、個人で売るものなのか? どこかの市場に出したり商人が纏めて買ったりするもんじゃないのか?
「あっち!」
と、ラダリオンに引っ張られて五十メートル。籠をたくさん置いてある露店? だった。
「じーちゃん、また売って!」
ベスミーの選別でもしてるのか、白髪混じりのじいさんに声をかけたラダリオン。店主なんだよな?
「なんだ、またきたのか?」
「うん。たくさん買いにきた。売って!」
銀貨を一枚出すラダリオン。オレも人のこと言える立場ではないが、ラダリオンも金の使い方も雑である。お互いもっと金の使い方を覚えような。
「すみません。ベスミーが美味しかったのでよろしければ売っていただけますか?」
「え、あ、まあ、買ってくれるならこちらもありがたいが、こんなに買ってどうすんだ? 個人で買う量じゃないだろう?」
「巨人の村に住んでるんで大量に欲しいんですよ」
「ああ、なるほどね。そりゃ籠一つじゃ足りんか」
「そうなんですよ。こちらはどこかの商会に卸したりはしないんですか?」
籠が三十近くある。これ、個人で売れるものなのか?
「卸してはいるが今年は豊作でな、卸す分以上に採れてしまってこうして売れないかと露店を出したわけさ」
「そんなに豊作ならゴブリンの被害も多いのでは?」
ミズホさんは出てると言ってたが。
「うちの集落はゴブリンより猪の被害が多いな。また冒険者に依頼を出さないといかんよ」
それでも余るくらいになるんだ。どんだけ生産してんだよ?
「じゃあ、好きなだけ買っても問題ないわけですね?」
「ああ。買えるだけ買ってくれ。オマケするからよ」
一籠銀貨一枚のところを三籠で銀貨二枚にしてくれると言うので九籠買うことにした。
じいさんに驚かれながらセフティーホームへと運び、ミリエルに今日の夜に食べる分を洗っててもらうようお願いした。
部屋を出たら、ミズホさんがカインゼルさんを呼び止めた。
「先にいってます。駆除は午後から始めましょう。その間にリハルの町を探索してきますよ」
そう言ってさっさと立ち去った。二人の過去に立ち入る気はないからな。
そのまま支部を出ると、パイオニアの周りにお子様たちが集まっており、ラダリオンに飴をもらっていた。
「ラダリオン。駆除は昼からにする。その間にリハルの町を探索しようと思うんだが、お前はどうする?」
面倒だから飴で追い払おうとしてるんだろうが、それは逆効果だぞ。鯉にエサをやってるようなものだ。
「いく!」
残った飴の袋を遠くに投げ放って子供たちを遠ざけた。こら。食べ物を投げたらいかんよ。
パイオニアのキーはオレも持っているので運転席に乗り込み、お子様たちが寄ってこないうちに発車させた。
跳ね橋にいる兵士にまたくると声をかけ、町の大通り的な道を適当に進んだ。と言ってもリハルの町はそれほど大きくもなく、これと言って見るものもなし。市場的なものは町の外、南門から出るそうだ。
適当に走って南門から出ると、左右に店が並び、そのまま進むと広場に出た。
町館と同じく馬車が何台も停まっており、いろんなものを積み降ろししていた。
「葡萄、もう収穫してるんだ」
まだ夏だと言うのに異世界の葡萄は夏収穫なのか?
「あれはベスミー。夏になるやつ」
「ベスミー?」
「酸っぱいけど、蜂蜜と煮ると美味しい」
「ブルーベリーみたいなもんか。シェイクにしたら美味いかもな」
ミキサーでバナナシェイクはよく作ってたが、ブルーベリーはなにげに高いからやったことなかったんだよな。
「美味しいの?」
「ベスミーの味はわからんが、シェイクは美味いぞ。風呂上がりに飲むとさらに美味いな」
牛乳とバニラアイス、砂糖、レモン汁を入れてミキサーにかける。簡単に作れるから夏はよく飲んだものだ。
「ベスミー買ってくる!」
パイオニアを降りてベスミーを買いに走るラダリオン。饒舌になるだけじゃなく行動的にもなるヤツだよ。てかお前、買い物できるのか?
一応、なにかのために銀貨と銅貨を持たせてはあるが、買い物はオレがやっていた。それでいきなり買ってくるは無謀だろう!
「買ってきた!」
まあ、失敗も勉強だと見守っていたら、籠ごとベスミーを買ってきた。それはちょっと買いすぎだろう。軽く五キロくらいはありそうだぞ……。
「い、いくらしたんだ?」
「銀貨一枚出したら籠ごとくれた」
「あ、うん、そうか。よかったな。今日の夜にでも作るからセフティーホームに置いてこい」
うん、まあ、ラダリオンなら二日もあれば消費できるだろう。オールライトだ。
「あ、少し洗って皿に盛ってきてくれ。あと練乳も」
ちょっと味見しておこう。
「それは美味しい組み合わせだと思う!」
パッ! と消えて十秒もしないで洗ったベスミーと練乳を持ってきた。お前には加速装置でも搭載されてるのか?
「うん。美味いな」
なにはともあれベスミーに練乳をかけて試食してみると、なかなか美味かった。これならシェイクにしても絶対に美味くなるヤツだ。
「美味しい! タカト、もっと買おう! ロミーたちも喜ぶ!」
そうだな。奥様連中に媚びを売っておいて損はない。
パイオニアを広場の端に停め、荷物を一旦セフティーホームに戻して買い物に出かけた。
「どこで買ったんだ?」
かなり近いところで買ってきた勢いだったが、個人で売るものなのか? どこかの市場に出したり商人が纏めて買ったりするもんじゃないのか?
「あっち!」
と、ラダリオンに引っ張られて五十メートル。籠をたくさん置いてある露店? だった。
「じーちゃん、また売って!」
ベスミーの選別でもしてるのか、白髪混じりのじいさんに声をかけたラダリオン。店主なんだよな?
「なんだ、またきたのか?」
「うん。たくさん買いにきた。売って!」
銀貨を一枚出すラダリオン。オレも人のこと言える立場ではないが、ラダリオンも金の使い方も雑である。お互いもっと金の使い方を覚えような。
「すみません。ベスミーが美味しかったのでよろしければ売っていただけますか?」
「え、あ、まあ、買ってくれるならこちらもありがたいが、こんなに買ってどうすんだ? 個人で買う量じゃないだろう?」
「巨人の村に住んでるんで大量に欲しいんですよ」
「ああ、なるほどね。そりゃ籠一つじゃ足りんか」
「そうなんですよ。こちらはどこかの商会に卸したりはしないんですか?」
籠が三十近くある。これ、個人で売れるものなのか?
「卸してはいるが今年は豊作でな、卸す分以上に採れてしまってこうして売れないかと露店を出したわけさ」
「そんなに豊作ならゴブリンの被害も多いのでは?」
ミズホさんは出てると言ってたが。
「うちの集落はゴブリンより猪の被害が多いな。また冒険者に依頼を出さないといかんよ」
それでも余るくらいになるんだ。どんだけ生産してんだよ?
「じゃあ、好きなだけ買っても問題ないわけですね?」
「ああ。買えるだけ買ってくれ。オマケするからよ」
一籠銀貨一枚のところを三籠で銀貨二枚にしてくれると言うので九籠買うことにした。
じいさんに驚かれながらセフティーホームへと運び、ミリエルに今日の夜に食べる分を洗っててもらうようお願いした。
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