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199 迎い入れ

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「おじさん!」

 パイオニアに乗ろうとしたら徴税人が現れた。

「またお前か。他にやることないのか?」

 ほんと、もっと生きる力を教えてやれよ、教会! 魔石買う金はあんだからよ。

「まだ八歳だからお恵みをもらうことしかできないの。人攫いがいるから」

 人攫いいるんかい! いや、ビシャもメビも奴隷商人に捕まってたっけな。物騒なところだよ。

「裁縫とかできないのか?」

 八歳なら雑巾くらい縫えんだろう。いや、三十年の人生で雑巾すら縫ったことない男がなに言ってんだ、だがな!

「わたしは不器用だからお恵みをがんばってるの」

 まあ、物怖じしないし愛想よさそうだしな。徴税人が合ってそうだ。

「そうかい。ほら、忙しいからどっかいけ」

 銀貨を一枚出して箱に入れてやった。

「ありがとう!」

 いつものごとくもらうものもらったら速やかに撤退する徴税人。あいつは冒険者になったら稼げると思う。

「タカトは小さな女の子が好きなのか?」

 またロリコン疑惑っ! ただ寄付をしただけなのになんでそんな疑惑を持たれにゃならんのよ?! 

「大人の女が好きだよ! 寄付してんのは無能な神をおちょくってるだけだ」

「そうなのか?」

 なぜかラダリオンに問うミシニー。

「タカトは天然で鈍感」

「まあ、確かに天然で鈍感なところはあるな」

 はぁ? オレ、天然とか言われたことねーし! ちゃんと空気読めてるし!なんなら勘の鋭い男とか言われてたし! ただ、反論すると薮蛇な感じがするから黙ってるけど!

「いいから乗れ。急ぐぞ」

 二人を促してパイオニアを走らせ、ラザニア村へ帰った。

 道中、ミシニーの視線がうざかったが、それに構っている余裕はない。なにを用意したらいいか考えるだけで精一杯だよ。

 家に到着すると、巨人の他に人間の職人らしき男たちが混ざって仕事をしていた。中の作業かな?

「カインゼルさん。すみませんが、夜にギルドマスターと領主代理がきます。ゴブリンをお願いします。ミリエルは部屋に必要なものを揃えてくれ。おそらくお付きも何人かくるはずだから多目にな」

 領主代理をどう迎えたらいいかわからんが、必要なものを揃えておけばお付きがどうにかしてくれるだろうよ。

「ミシニー、ビシャ、メビは周辺の警戒をしてくれ。不審者がいたら殺さず生け捕れ。多少は怪我させてもいいから」

 領主代理になにかあれば責任問題。周辺を探っておくに越したことはないだろう。

「ラダリオンはタンクに水を入れて館に運んでくれ。ペットボトルもな」

 あれこれと指示を出して館に向かった。オレ、中がどうなってるか知らないんだよ。

 親父さんたちに挨拶してから正面玄関から入ると、人間の職人がテーブルや椅子、細かい部分を作っていた。

「ご苦労様です。親方さんはいますか?」

「わしだ」

 と、その道うん十年と言った感じの初老の男性が声を上げた。

「館造りをお願いしたタカトです。少し相談したいことがあるんで少しいいでしょうか?」

「構わんよ。なんだい?」

 実はと、夜にギルドマスターと領主代理が訪れることを告げ、広い部屋を急いで仕上げるようお願いした。

「わかった。急いで仕上げる」

 身分のある社会。その道うん十年の親方も貴族には勝てないようで、すべての作業を一旦中止して領主代理が泊まる部屋と食堂を調えることに集中してくれた。

「報酬は弾みますんで、よろしくお願いします」

「任せておきな。なんかあればわしらまでお咎めを受けるからな、ふざけたことはできんよ」

 邪魔にならないよう館を出た。

 家の食堂からホームに入り、タブレットで買い物しているミリエルに混ざり、酒や冷蔵庫の補充をした。

 買ったものを一旦外に運び出し、リヤカーに載せて館に運んだ。

「タカト! 城の人がきたよ!」

 忙しく運んでいたらロミーが城の人とやらを連れてきた。

「あ、あのときの……」

 執事だか主従だかわからい初老の男性と侍女だかメイドだかを四人引き連れていた。

「ミシドです。サイルス様の命により参りました」

「それは助かりました。どう迎えたらよいのか苦心していたところです。泊まる部屋を優先して調えてもらってますので、職人たちに助言してもらえますか? オレではわかりませんので。ミリエル。ミシドさんと一緒に頼む」

 ミリエルに丸投げして申し訳ないが、他にもやることはある。館ばかりに気を向けてらんないんだよ。

 ゴブリンの檻に向かうと、カインゼルさんがギーギー騒ぐゴブリンを眺めていた。

「カインゼルさん、どうかしましたか?」

「いや、こうしてじっくりゴブリンを見たことがなかったのでな、つい見いってしまった。こんなものが女神様を苦しめておるのだな」

 オレからしたら自業自得としか言いようがないですけどね。まあ、その尻拭いさせられるオレとしたら憤怒しか湧いてこないけどよ。

「処理肉をやってもらっていいですか? まだ死なれちゃ困るので」

 共食いなどされたら運んできた甲斐がない。領主代理に殺されるまで生きておいてくれ。

「あ、ゴブリンの死体を捨てる穴も必要でしたね」

 殺したあとのことまで考えてなかったよ。

「わしから巨人に頼んでおくよ」

「すみません。お願いします」

 次はミシニーたちのところへ向かうと、黒ずくめの男を捕らえていた。マジでいたんかい! つーか、オレのこと、領外に知られてる?!

「なにかしゃべったか?」

「いや、なにもしゃべらない。だがまあ、王都から放たれた間者だろう。たまに見る」

 見てわかるんだ。ダークサイドを見てきましたか?

「これはどうしたらいいんだ?」

 殺して穴に埋めるとか言わんでくれよ。

「ギルドマスターに渡せばいいさ。あちらで処理してくれるよ」

「そうか。任せる。どこかにでも転がしておいてくれ」

 その場をミシニーに任せて家に向かい、ギルドマスターらがくる前にちょっと休んでおくべくホームへ戻った。
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