ダメ女神からゴブリンを駆除しろと命令されて異世界に転移させられたアラサーなオレ、がんばって生きていく!

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339 余裕を持って

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 また寒くなってきて、雪は降らないが氷点下になってしまった。

「いったいどうなってんだ、ここの気候は?」

 三寒四温じゃあるまいし、暖かくなったり寒くなったりいい加減にしてもらいたい。体壊すわ。

「シエイラ。寒くなってきたから厚着しろよ」

「だからマスターはわたしの母親ですか。寒くなったらちゃんと着ますよ」

 ただ心配してるだけなのにキツい返しをするシエイラさん。まあ、二十八の女に言うことじゃないわな。失敬。

「シエイラの親は元気にしてるのか?」

 今のオレたちは名簿作りと必要なものリストを書いている。マイセンズに! と思ったらシエイラに止められて、いろいろやらされているのですよ。

「わたしに親はいませんよ。孤児でしたから」

「孤児? 教会の孤児院か?」

 他に孤児院があるとは聞いてない。孤児の世話など教会くらいしかやらないと、誰かが言ってたっけ。

「はい。十二歳で孤児院を出て冒険者ギルドで働かせてもらいました」

「十二歳で働きに出るのか。ここは大変なところだな」

 幼稚園児くらいからカツアゲしてんだからよ。

「マスターはなにしてたんです?」

「学校に通ってたな。勉強して運動して勉強してた」

「ウソですね」

 ハイ、ウソです。誤差なしで見抜かないでください。友達とバカやってました。

「学校に通ってたのは本当だぞ。成績はそこそこだったけど」

 それはウソじゃない。試験でも六、七十点は取ってたし。

「恵まれてたんですね」

「そうだな。恵まれていたな」

 今ならよくわかる。あの頃は、いや、元の世界で生きてたことがなにより幸せだったとな。

 あの幸せは二度と取り戻せないが、この世界で幸せをつかむことはできる。オレは絶対、寿命で死んでやるさ!

「シエイラもお恵みとかやっていたのか?」

「十歳まではやってましたね」

「ふふ。シエイラなら荒稼ぎしてたんだろうな?」

 男を手玉に取って、大金を恵ませていたんだろうよ。

「そんな荒稼ぎなんてしてませんよ。なにか孤児院では伝説になってますけど」

 うん。それは絶対荒稼ぎしてただろう。怖いからどんな風には訊かないけど。

「──タカトさんはこちらですか?」

 と、ダインさんが部屋に入ってきた。

「はい。お久しぶりです。どうかしましたか?」

 ダインさんはダインさんでコラウスからきた商人同士で商業ギルドを立ち上げていたので、今日までなかなか会えなかったのだ。

 中に入ってもらい、オレも一休みと、コーヒーを淹れて出してやった。

「商業ギルドとしてミヤマラン公爵領にいこうと思いましてね、護衛と荷物持ちとして奴隷を借りたいのです」

「何人ですか?」

「十人ほど。可能なら十五人、お借りしたいです」

「んー。十五人ですか……」

 奴隷傭兵団は四十人。そこから十五人となると町の防衛に支障が出るな~。だが、ダインさんたちになにかあっても困る。無事、帰ってきてもらうには二十人は必要、か?

「わかりました。荷物持ちとして十五人。護衛として五人を貸し出します。ただ、奴隷一人につき一日大銅貨三枚。食費はそちらで持ちにしてください。武器はこちら持ちにしますから」

 銃のことはダインさんも知っている。その威力もな。

「なかなか厳しいですな」

「ダインさんには伝えてませんでしたね。山脈の向こうで山黒が出たんですよ。二匹はオレとラダリオンで倒しましたが、どうも群れを成している感じなんですよ。あちらの冒険者が倒していればよいのですが、倒してないと言うなら安いと思いますよ」

 なにもなければ厳しいだろうが、現れたときは安く済んだと思うだろうよ。

「そ、それは本当なんですか?」

「ダインさんにウソは言いませんよ。アシッカの復興にはダインさんたち商人が必要なんですからね」

 そのための護衛をプラスしたのだ。これは大出血サービスだよ。

「皆さんともう一度相談してきます」

「ええ。命あっての物種。安全第一、命大事にで計画を立ててください」

「はい、そうします」

 ダインさんが下がり、名簿作りを再開すると、冒険者ギルドから派遣されてきた……ナイズさんだっけ? 四十二歳の妻子持ちで、アシッカに越してきたそうだ。

「タカトさん。頼まれていた木符が用意できましたよ」

「ありがとうございます。急いでもらってすみませんね。あとで差し入れを届けますよ」

 今は奥さんと二人三脚でやっている。がんばってくれた奥さんとお子さんに労いの付け届けしておこう。

「それは助かります。あと、これをコラウスの冒険者ギルドに出してください。報告書をロイド様に渡したいので」

「わかりました。うちの職員にお願いしておきますよ」

 羊皮紙の束と木符が入った箱を受け取った。

「シエイラ。オレは巨人の村で木符を渡して話し合いをしたらマイセンズの砦に向かう。ダインさんのことはシエイラの判断に任せる。この続きはそこでやろう」

 アシッカはサイルとカナルに任せ、シエイラにはマイセンズの砦に詰めてもらい、砦を仕切ってもらうのだ。そろそろゴブリン駆除をやってもらって運営資金を稼いで欲しいからな。

「わかりました。早く終わらせて移ります」

 そろそろなにかが動き出す頃。さっさと終わらせて余裕を持って当たらないとな。
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