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362 できるだけ多く、できるだけ遠くに

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 背後でオレンジ色の光と熱を感じるが、ミシニーが作ってくれた機会を無駄にできないと、草が生えた坂を必死に下った。

「アルズライズ、十時方向に走れ! そちらにゴブリンの大軍がいる。そこで混戦させるぞ!」

 先を走るアルズライズに叫んだ。

 ロースランの目をこちらに向けたいところだが、わざとらしい行動をしたらロースランに怪しまれる恐れがある。

 全力で逃げながらロースランをロンダリオさんたちから離さなくてはならない。できるだけ遠くに。できるだけ多くだ。

「次は二時方向、目の前のビル──建物中に大軍がいる。これを使え。引き金を引けば撃てる」

 MINIMIを取り寄せてアルズライズに渡し、オレもMINIMIを取り寄せた。

 目の前のビルは廃ビルであり、誰か住んでるとは思えない朽ちようだ。

 他のビルも廃ビルであり、サイズは人に合わせられている。ゴブリンが建てたものじゃないのはわかった。

 ……もしかして、旧文明の都市か……?

 ダメ女神は言っていた。この世界は三回やり直していると。

 まさか星ごとやり直しているわけじゃないだろうから、この星で生きるものをリセットしたんだと思う。

 神の時間感覚ならそれもありかもしれないが、あの話しぶりからして知的生命体をリセットしている感じだった。

 三回もやり直していたらなにかしらの痕跡が残っていたって不思議じゃない。極一部が生き残ってここで暮らしていたが、なんらかしらの問題が起きて結局滅びたって感じなんだろうよ。

 なんて歴史考察はあとだ。今は廃ビルの中に巣くうゴブリンを撃ち殺していった。

 各二百発があっと言う間に撃ち尽くし、アルズライズから受け取ってホームに戻した。

 すぐに外に戻ると、一匹のロースランが廃ビルに入ってきたところだった。

「アルズライズ、上にいけ!」

 スタングレネードをロースランの前に放り投げ、直前で破裂。その音に飛び退いたところに何発か撃ち込んでやった。

 確認はせず、アルズライズのあとを追って階段を上に昇った。

 おそらく非常階段なんだろう。人間サイズの階段であり、人間サイズの扉が倒れていた。

 下からロースランの叫び声がした。

 耳だけではなく嗅覚も視力もいいらしく、確実にオレらを追ってきていた。

 廃ビルは高層であり、まだ上に続いている。地下にどれだけの数が住んでたんだか。街じゃなくてシェルターなのか?

 さすがに二十階も昇ると息が切れてきた。

 クソ! 体力がついたと思ってたのにまだまだ貧弱だな、オレは!

 さすがに無理と、振り向いてタボール7を下に構えて昇ってくるロースランを撃った。

 人間サイズの階段を器用に昇ってくるとかほんと厄介である。やはり、ゴブリンは食わず、共生関係なようだ。

 と、上からゴブリンが転がり落ちてきた。クソ。上にもゴブリンがいんのかよ! 

 マガジン一つ分撃ったら階段を昇る。

 階を昇るとゴブリンの気配がする。安全を考えてこんな上まできてるのかは知らないが、下も危険なら上だってエサがなくて大変だろうに。ここは、誰に取っても地獄だな!

 それでもその地獄に足を踏み入れないといけないんだから生存競争とは厳しいものである。

 もうこれ以上は無理と、催涙弾を装填したM32グレネードランチャーを取り寄せ、下に向かって撃ってやった。

 切れたらリボルバーを展開。空薬莢を排出。リボルバーを回転させたら新しい催涙弾を取り寄せて装填させた。

「タカト! くるぞ!」

 入れることに集中しすぎてそこまで昇ってきたロースランに気づかなかった──が、アルズライズが撃ってくれて事なきを得た。ふー。

「タカト、続々と昇ってくるぞ」

「まったく、好き放題増えやがって」

 まあ、ロースランからしたら好き放題してるのはお前らだと返したいところだろうな。

 装填完了して下に向けて全弾放った。

 ホームに戻している暇がないので持ったままチートタイムスタート。アルズライズが着ているプレートキャリアの背中にある取手をつかんで廃ビルからダイブ。真下に水を集めて飛び込み、落下速度を殺して地面に着地。集めた水でウォータージェットで廃ビルを乱切り。壁を崩してやった。

 チートタイムを停止。M32グレネードランチャーをホームに運び、出てきたらRPG-7を取り寄せた。

「アルズライズ、十階辺りの窓にぶち込め!」

 RPG-7をアルズライズに渡した。

「任せろ!」

 受け取ったらすぐに構え、十階辺りの破れた窓に発射。一直線飛んでいき、窓から中に入ったら爆発を起こした。

 発射器をホームに片付け、スモークグレネードを取り寄せて周辺にばら撒いた。

「よし。あっちに逃げるぞ」

 チートタイムをスタートさせたことで体力が回復。街の奥へ走り出した。

「──タカト!」

 なぜか空から降ってきたミシニー。空でも飛んできたのか?

「お疲れさん。逃げるぞ」

「ああ。了ー解だ!」

 なぜか楽しそうに笑うなミシニー。なんだ、いったい?

 時間があれば尋ねたいところだが、今はそんな暇はなし。執拗なロースランをできるだけ多く、できるだけ遠くに引き連れていくために走れ、だ。
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