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420 決戦1(*アルズライズ*)
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グロゴール。
十二年前、南海諸島連合を暴れ回った緑の悪魔。多くの島を襲い、人を食らい、おれから家族を奪った憎き存在だ。
一人生き残ってしまったオレはあいつを殺すため島を出て冒険者となり、死に物狂いで強さを求めた。
だが、相手は竜だ。山のような体を持ち、飛ぶこともできる存在だ。その爪は大岩を砕き、その鱗はどんな刃も通さない。人にはどうすることもできない災害だ。
強い魔物を倒し、金を稼ぎ、世間からは豪鬼と呼ばれ、冒険者の最高峰、金印になった。
だが、どんなに強くなろうと人が災害に勝つことはできない。山黒ですら単独で倒せないおれにグロゴールに勝つなど夢物語でしかなかった。
それでもおれは諦めきれず、家族を奪ったグロゴール憎しで強さを求めたのだ。
誰とも組まずただ一人で戦うのは心を疲弊させるものだ。グロゴールを倒す前に自分が死んでしまっては本末転倒。自分の心を失わないためにも食事だけはいいものを食うことにした。
──人間、美味しいものを食べてれば元気にいられるものよ!
おれが落ち込むといつもそう言ってサラが美味いものを作ってくれたものだ。
魔物がよく出ると言われるコラウス辺境伯領に移り、何年か過ぎた頃、ある男のウワサを聞いた。
ゴブリン殺しと呼ばれる男だ。
あんなカスみたいな魔物を狩ってどうするんだ? と思ったが、その男は不思議な武器を使い、ゴブリンの大群やロスキートを倒したと言う。
知り合いの見習いもその戦い振りを見て、凄かったと言っていた。
それでも興味は湧かなかったが、見習いの小僧どもがその男からもらったかろりーばーなるものをもらって食ったら衝撃的だった。
こんな美味いものを見習いにただで配るとかなんなんだ? その男にしたらそれだけのものと言うことか?
悪い男でなく、巨人の少女を連れ、コラウスでも有名だった兵士長を連れていたと言う。
そんな男なら金さえ払えば美味いものを売ってくれるんじゃないか? そう思って会いにいってみた。
イチノセタカトと名乗る男はなんの迫力もなく、体も細い。ウワサに聞く男とは思えないほど覇気が感じられなかった。
だが、この男の真価はそんなところにはなかった。
この男は人を引きつける。種族に関係なく接し、おれに慣れたら普通に話しかけ、一緒に酒を飲むようになった。
本人は無自覚だろうが、相手の懐に入ってくるのが本当に上手いのだ。
付き合っていくとさらにこいつの真価がわかってくる。身体的強さはないが精神的強さはバケモノであり、どんな強い敵でも発想を活かし、道具を使い、誰一人死なせずに勝ってしまうのだ。
本人は運がよかったとか必死だったとか自己肯定感がまるで消失していたが、見るべき者が見ればわかる。こいつは紛れもない英雄だと。
英雄は人を魅了し、厄災を引きつける。
こいつといればいずれグロゴールと会えるかも。なんて考えつつ、タカトといればおれまで魅了されてしまった。
家族の復讐も忘れ、この男を死なせたくないと思うようになってしまったのだ。
それもいいかと思ってしまったとき、ヤツは現れた。
一瞬で復讐心に染められた。
だが、それを抑えたのはやはりタカトだった。
極自然に、当たり前に、グロゴールを倒すと口にしたのだ。
基本、臆病なクセに、ここぞというときは誰よりも勇敢になり、誰よりも危険を冒す。誰も死なないようにと無茶をするのだ。
ああ、そうだ。この男だけは死なせてはダメなのだ。勇者や英雄だなんて本人は望まんだろうが、死んでいい男ではないのだ。
「──ビシャ。無茶をする。確実にグロゴールの機動力を奪うぞ」
ついてくる獣人の少女に言う。
「そうしないとタカトがまた無茶しちゃうもんね」
フフ。わかっている。この子もおれと同じなんだろうな。
「グロゴールに気づかれたら囮を頼む」
脚の速さはビシャが上。本気を出されたらパイオニアでも追いつけないだろう。
「グロゴールはまだ苦しんでいる。今が好機だ」
プランデットの反応ではサイルス様たちが与えた目潰しに苦しんでいるのがよくわかる。
勝てないと思っていた相手でも必ず弱いところはある。わかっていても相手の強大さに忘れがちになるものだ。
弱者には弱者の戦い方がある。強大な敵を倒すなら群れろ。知恵を巡らせろ。弱者とは食われる者を言うのではない。強者に挑まぬ者を弱者と言うのだ。
昔の英雄が言った言葉だ。
確かに一理ある。だが、タカトならさらにこう言うだろう。安全第一、命大事に。やるなら確実に、だとな。
気配を殺し、グロゴールの真横に出た。
構えていたRPG-7の照準を合わせ、引き金を引いた。
勢いよく飛び出していく弾頭はグロゴールの右脚に激突。爆発を起こした。
「ビシャ!」
「はい!」
RPG-7を渡し、ビシャが担いでいたリンクスを受け取り、痛みで暴れ回るグロゴールの腹に徹甲弾を撃ち込んでやった。
効果はいまいちだが、グロゴールを混乱させることはできる。
「おじちゃん!」
リンクスを投げ捨て、弾頭を発射器に入れたRPG-7を受け取った。
混乱から覚めたグロゴールが逃げようとするが、遅い。お前の不運はタカトの前に現れたことだ。
最初に当てた右脚に直撃。爆発。そして、血を周辺にばら撒いた。
「サラとタズの痛みだ、しっかり味わえ!」
「おじちゃん!」
リンクスを抱えたビシャに呼ばれて我に返る。そうだ。目を潰し、脚を奪った。あとは生きて戻るのみ、だ。
タカト。あとは任せたぞ!
信頼できる仲間であり友でもある男にあとを任せてさっさと逃げ出した。
十二年前、南海諸島連合を暴れ回った緑の悪魔。多くの島を襲い、人を食らい、おれから家族を奪った憎き存在だ。
一人生き残ってしまったオレはあいつを殺すため島を出て冒険者となり、死に物狂いで強さを求めた。
だが、相手は竜だ。山のような体を持ち、飛ぶこともできる存在だ。その爪は大岩を砕き、その鱗はどんな刃も通さない。人にはどうすることもできない災害だ。
強い魔物を倒し、金を稼ぎ、世間からは豪鬼と呼ばれ、冒険者の最高峰、金印になった。
だが、どんなに強くなろうと人が災害に勝つことはできない。山黒ですら単独で倒せないおれにグロゴールに勝つなど夢物語でしかなかった。
それでもおれは諦めきれず、家族を奪ったグロゴール憎しで強さを求めたのだ。
誰とも組まずただ一人で戦うのは心を疲弊させるものだ。グロゴールを倒す前に自分が死んでしまっては本末転倒。自分の心を失わないためにも食事だけはいいものを食うことにした。
──人間、美味しいものを食べてれば元気にいられるものよ!
おれが落ち込むといつもそう言ってサラが美味いものを作ってくれたものだ。
魔物がよく出ると言われるコラウス辺境伯領に移り、何年か過ぎた頃、ある男のウワサを聞いた。
ゴブリン殺しと呼ばれる男だ。
あんなカスみたいな魔物を狩ってどうするんだ? と思ったが、その男は不思議な武器を使い、ゴブリンの大群やロスキートを倒したと言う。
知り合いの見習いもその戦い振りを見て、凄かったと言っていた。
それでも興味は湧かなかったが、見習いの小僧どもがその男からもらったかろりーばーなるものをもらって食ったら衝撃的だった。
こんな美味いものを見習いにただで配るとかなんなんだ? その男にしたらそれだけのものと言うことか?
悪い男でなく、巨人の少女を連れ、コラウスでも有名だった兵士長を連れていたと言う。
そんな男なら金さえ払えば美味いものを売ってくれるんじゃないか? そう思って会いにいってみた。
イチノセタカトと名乗る男はなんの迫力もなく、体も細い。ウワサに聞く男とは思えないほど覇気が感じられなかった。
だが、この男の真価はそんなところにはなかった。
この男は人を引きつける。種族に関係なく接し、おれに慣れたら普通に話しかけ、一緒に酒を飲むようになった。
本人は無自覚だろうが、相手の懐に入ってくるのが本当に上手いのだ。
付き合っていくとさらにこいつの真価がわかってくる。身体的強さはないが精神的強さはバケモノであり、どんな強い敵でも発想を活かし、道具を使い、誰一人死なせずに勝ってしまうのだ。
本人は運がよかったとか必死だったとか自己肯定感がまるで消失していたが、見るべき者が見ればわかる。こいつは紛れもない英雄だと。
英雄は人を魅了し、厄災を引きつける。
こいつといればいずれグロゴールと会えるかも。なんて考えつつ、タカトといればおれまで魅了されてしまった。
家族の復讐も忘れ、この男を死なせたくないと思うようになってしまったのだ。
それもいいかと思ってしまったとき、ヤツは現れた。
一瞬で復讐心に染められた。
だが、それを抑えたのはやはりタカトだった。
極自然に、当たり前に、グロゴールを倒すと口にしたのだ。
基本、臆病なクセに、ここぞというときは誰よりも勇敢になり、誰よりも危険を冒す。誰も死なないようにと無茶をするのだ。
ああ、そうだ。この男だけは死なせてはダメなのだ。勇者や英雄だなんて本人は望まんだろうが、死んでいい男ではないのだ。
「──ビシャ。無茶をする。確実にグロゴールの機動力を奪うぞ」
ついてくる獣人の少女に言う。
「そうしないとタカトがまた無茶しちゃうもんね」
フフ。わかっている。この子もおれと同じなんだろうな。
「グロゴールに気づかれたら囮を頼む」
脚の速さはビシャが上。本気を出されたらパイオニアでも追いつけないだろう。
「グロゴールはまだ苦しんでいる。今が好機だ」
プランデットの反応ではサイルス様たちが与えた目潰しに苦しんでいるのがよくわかる。
勝てないと思っていた相手でも必ず弱いところはある。わかっていても相手の強大さに忘れがちになるものだ。
弱者には弱者の戦い方がある。強大な敵を倒すなら群れろ。知恵を巡らせろ。弱者とは食われる者を言うのではない。強者に挑まぬ者を弱者と言うのだ。
昔の英雄が言った言葉だ。
確かに一理ある。だが、タカトならさらにこう言うだろう。安全第一、命大事に。やるなら確実に、だとな。
気配を殺し、グロゴールの真横に出た。
構えていたRPG-7の照準を合わせ、引き金を引いた。
勢いよく飛び出していく弾頭はグロゴールの右脚に激突。爆発を起こした。
「ビシャ!」
「はい!」
RPG-7を渡し、ビシャが担いでいたリンクスを受け取り、痛みで暴れ回るグロゴールの腹に徹甲弾を撃ち込んでやった。
効果はいまいちだが、グロゴールを混乱させることはできる。
「おじちゃん!」
リンクスを投げ捨て、弾頭を発射器に入れたRPG-7を受け取った。
混乱から覚めたグロゴールが逃げようとするが、遅い。お前の不運はタカトの前に現れたことだ。
最初に当てた右脚に直撃。爆発。そして、血を周辺にばら撒いた。
「サラとタズの痛みだ、しっかり味わえ!」
「おじちゃん!」
リンクスを抱えたビシャに呼ばれて我に返る。そうだ。目を潰し、脚を奪った。あとは生きて戻るのみ、だ。
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