3 / 4
第2話 その日の夜+α
しおりを挟む「お兄ちゃん、なんでニヤニヤしてるの?」
妹の可憐と二人で夕食を取っている俺はいつの間にか顔がニヤケていたそうだ。それに気付いた妹が顔を引き攣らせている。
「実は今日、彼女が出来てな」
「えっ! 本当!?」
妹は嬉しそうに目をキラキラと輝かせている。実際嬉しいんだろう。今までさんざん俺に彼女を作れとか幸せは近くに転がってるとか、別に誰でも私は受け入れるとか、お兄ちゃんが童貞とか妹として恥ずかしい、とにかく俺に誰でもいいから彼女を作れと煩かったんだよな。
「それで! 誰にしたの? 大丈夫、私は誰でも受け入れる覚悟は出来てるからねっ!」
まだ、顔も知らない筈なのに既に受け入れる気満々とは、人見知りする妹にしては珍しいな。
「ねぇ! 誰なの?。 早く教えてよ!」
「あぁ、春野さんだ」
「へ?」
妹の目から生気が失われたかのように色が抜ける。一体どうしたんだ?
「おい、大丈夫か?」
「ねぇ、お兄ちゃん。 春野って……誰?」
「いや、誰ってお前知らない相手だし?」
「は?」
妹のドスの効いた声と、殺意の籠った視線を向ける。俺は命の危機を感じ、冷や汗が額から流れる。
やばい本能が逃げろと言っている。
「……灯さんは?」
「え?」
「里香さんは? 萌さんは? 鏡花さんは? 明日香さんは?……どうしたのよ!!!」
「どうしたって、あいつらはただの幼馴染だろ」
俺の言葉を聞いて、妹の顔が更に怒りに染まる。
「この鈍感男が!! 私はそんなどこの馬の骨かわからない女認めないからね!!!」
妹はそう言い残して、自分の部屋に籠ってしまった。誰でも受け入れる覚悟は出来ているんじゃなかったのか?
その日の俺は妹が怒った理由もわからず一晩もやもやした気持ちで眠りについた。
★★★
俺は烏丸 隼人。最近、少し……いや、かなりだな。友人の青葉の鈍感さには驚かされている。あいつは学年アイドル的な立ち位置の5人の幼馴染から異性として恋心を抱かれているにも関わらずそれに気付いていない。自分はモテないと豪語している。俺も始めは照れ臭くて気付いて無いフリしてるだけかと思ってたんだが、青葉の言動を見ていたらマジで言ってる事がわかった。
周りから見れば、一目瞭然なんだけどな。
でも俺が一番驚いたのは青葉が幼馴染5人を避けてるということだ。普通の男子なら泣いて喜ぶような境遇を青葉は自らの意思で抜け出そうとしているんだ。驚くのは無理もないだろう。俺が代わって欲しいくらいだよ。
わざわざ幼馴染避けるために屋上で昼食取るわ、迎えに来てくれる幼馴染から逃げるわで毎日大変な事。こういうのリア充っていうんじゃねーのって思う。
俺はまぁ、あいつの友人な訳だから、愚痴も聞くし、昼休憩のあいつの居場所を聞かれても、そりゃ教えないけどさ少し幼馴染が不憫だとは思う。好きな人間から避けられるって凄く不安でストレスになるよな。
そういえば昨日、女子からラブレター貰ったとかいって騒いでたな。モテ期が来たとか言ってたけど、お前のモテ期はずっと来てるだろ!って突っ込みたくなったわマジで。あの後、青葉が出てこないって愛野瀬と羽生が教室まで様子見に来たんで、ラブレター貰ってたことを伝えたら、鬼のような形相してたな。
場所を聞かれたんだけど、さすがにそれを教えるのは野暮だろ? でも教えちゃったよ。 羽生さんって凄い怪力してるんだね。 片手で教卓持ち上げた時の笑顔、あれより怖いものって中々ないんじゃないか? 俺、いい歳してお漏らしするとこだったわ。
場所教えた後はなんかLIMEで誰かに連絡してたな。口振りから察するに多分他の幼馴染だったんだろうな。 結局あいつなんて返事したんだろうな。さすがに無自覚とはいえあの5人差し置いて他の女子と付き合うのはありえないよな。
だけど、俺はこの日そのありえないと思った報告を青葉から受けた。
★★★
私は如月 灯。バスケ部に所属している。 いつものように部活に精を出していた。私は水分補給の際にふと見たスマホの画面に身体が一瞬硬直した。
グループLIMEには萌ちゃんから、緊急!雄君がクラスメイトにラブレター貰って体育館裏に向かいましたと送信されて来ていた。 私は慌てて部活を抜け出した。
でも、よく考えれば私は体育館で部活している訳だし、皆が来てから抜け出せばよかったと思いながら一人で待つ。
高校に入ってからの雄ちゃんは私達をよく避けるようになった。中学の時までは毎日のように一緒にしていた登下校も高校に入ってからは頻度が激減した。それは他の皆も口には出さないが気にしている筈だ。
雄ちゃんは昔から人前に立ったり、目立つのが嫌いだと言っていた。それが理由なのだろうか。自分で言うのも自意識過剰かも知れないが、他の4人と同様私もよく周囲の視線を集めてしまうから。
私は雄ちゃんにとって邪魔で迷惑な存在なのかも知れない。雄ちゃんは優しいからそんな言い方はしないだろうけど、私はこんな場所で人の告白を覗き見しようとする女だ。すっぱり諦めて離れていく方がいいのかも知れない。
――――――それでも、10年間蓄積された想いは強すぎて、私は彼を諦めることができない。
0
あなたにおすすめの小説
私が行方不明の皇女です~生死を彷徨って帰国したら信じていた初恋の従者は婚約していました~
marumi
恋愛
「あら アルヴェイン公爵がドゥーカス令嬢をエスコートされていますわ」
「ご婚約されたと噂を聞きましたが、まさか本当だとは!」
私は五年前までこの国の皇女エリシアだった。
暗殺事件に巻き込まれ、幼なじみで初恋の相手だった従者――アルヴェイン公子と共に命からがら隣国、エルダールへ亡命した。
彼の「必ず迎えに来る」その言葉を信じて、隣国の地で彼を待ち続けた……。
それなのに……。
やっとの思いで帰国した帝国の華やかなパーティー会場で、一際目立っているのは、彼と、社交界の華と言われる令嬢だった――。
※校正にAIを使用していますが、自身で考案したオリジナル小説です。
※イメージが伝わればと思い、表紙画像をAI生成してみました。
悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。
しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。
断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。
煤かぶり姫は光の貴公子の溺愛が罰ゲームだと知っている。
朝霧心惺
恋愛
「ベルティア・ローレル。僕の恋人になってくれないかい?」
煌めく猫っ毛の金髪に太陽の瞳、光の貴公子の名を欲しいがままにするエドワード・ルードバーグ公爵令息の告白。
普通の令嬢ならば、嬉しさのあまり失神してしまうかもしれない状況に、告白された令嬢、ベルティア・ローレルは無表情のままぴくりとも頬を動かさない。
何故なら———、
(罰ゲームで告白なんて、最低の極みね)
黄金の髪こそが美しいという貴族の価値観の中で、煤を被ったような漆黒の髪を持つベルティアには、『煤かぶり姫』という蔑称がある。
そして、それは罰ゲーム結果の恋人に選ばれるほどに、貴族にとっては酷い見た目であるらしい。
3年間にも及ぶ学園生活も終盤に迫ったこの日告白されたベルティア、実家は伯爵家といえども辺境であり、長年の凶作続きにより没落寸前。
もちろん、実家は公爵家に反抗できるほどの力など持ち合わせていない。
目立つ事が大嫌いでありながらも渋々受け入れた恋人生活、けれど、彼の罰ゲームはただ付き合うだけでは終わらず、加速していく溺愛、溺愛、溺愛………!!
甘すぎる苦しみが、ベルティアを苦しめる。
「どうして僕の愛を疑うんだっ!!」
(疑うも何も、そもそもこの恋人ごっこはあなたへの罰ゲームでしょ!?)
貴方なんて大嫌い
ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と
いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている
それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い
私は彼に選ばれなかった令嬢。なら、自分の思う通りに生きますわ
みゅー
恋愛
私の名前はアレクサンドラ・デュカス。
婚約者の座は得たのに、愛されたのは別の令嬢。社交界の噂に翻弄され、命の危険にさらされ絶望の淵で私は前世の記憶を思い出した。
これは、誰かに決められた物語。ならば私は、自分の手で運命を変える。
愛も権力も裏切りも、すべて巻き込み、私は私の道を生きてみせる。
毎日20時30分に投稿
私を簡単に捨てられるとでも?―君が望んでも、離さない―
喜雨と悲雨
恋愛
私の名前はミラン。街でしがない薬師をしている。
そして恋人は、王宮騎士団長のルイスだった。
二年前、彼は魔物討伐に向けて遠征に出発。
最初は手紙も返ってきていたのに、
いつからか音信不通に。
あんなにうっとうしいほど構ってきた男が――
なぜ突然、私を無視するの?
不安を抱えながらも待ち続けた私の前に、
突然ルイスが帰還した。
ボロボロの身体。
そして隣には――見知らぬ女。
勝ち誇ったように彼の隣に立つその女を見て、
私の中で何かが壊れた。
混乱、絶望、そして……再起。
すがりつく女は、みっともないだけ。
私は、潔く身を引くと決めた――つもりだったのに。
「私を簡単に捨てられるとでも?
――君が望んでも、離さない」
呪いを自ら解き放ち、
彼は再び、執着の目で私を見つめてきた。
すれ違い、誤解、呪い、執着、
そして狂おしいほどの愛――
二人の恋のゆくえは、誰にもわからない。
過去に書いた作品を修正しました。再投稿です。
余命わずかな私は、好きな人に愛を伝えて素っ気なくあしらわれる日々を楽しんでいる
ラム猫
恋愛
王城の図書室で働くルーナは、見た目には全く分からない特殊な病により、余命わずかであった。悲観はせず、彼女はかねてより憧れていた冷徹な第一騎士団長アシェンに毎日愛を告白し、彼の困惑した反応を見ることを最後の人生の楽しみとする。アシェンは一貫してそっけない態度を取り続けるが、ルーナのひたむきな告白は、彼の無関心だった心に少しずつ波紋を広げていった。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも同じ作品を投稿しています
※全十七話で完結の予定でしたが、勝手ながら二話ほど追加させていただきます。公開は同時に行うので、完結予定日は変わりません。本編は十五話まで、その後は番外編になります。
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる