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今思えば唯一平和だった時期(文化祭編)
泣いていい?
しおりを挟む「真宮さん…っ!」
「────げっ」
とても逃げ出したい。けど、逃げたらこの後が怖い。
私はその場で硬直するしかなかった。
「すまない、引き止めて…」
「いえ、でも、部活あるので手短に…」
「ああ。まずは、これを」
簡素なラッピングがされたそれは、触っただけだがなにかしらのアクセサリーのようだった。
確認してもいいか尋ねると、頷かれたので開けると、大きめの蝶のチャームが揺れる、洋装にも合う2連簪だった。
なんで?と視線を送ると、少し頬を染めた悟が口を開いた。
「女性が好むものがわからなくて、趣味じゃなかったら申し訳ない。だが…」
時間が無くて結んだだけのシュシュがするりと解かれる。
「君の髪を彩れたら、と…」
「会長…?」
「先日の詫びだ。俺はとんでもないことをしてしまった。申し訳ない」
少し髪が引っ張られる感覚がした。手元にあった蝶は、いつの間にか髪に止まっていた。
「ただ、許されるなら、また君に触れたい────」
「ひっ…!」
ちう、と顕になった首筋に悟が吸い付く。
反射的にびくりと体を揺らしたが、それを是と受け取ったのか、行為はエスカレートする。
抵抗に身を捩らせるも、後ろから抱え込まれるようにされては意味を成さない。
くっそ、この資料さえなければ…!
ホチキス止めすらされてない紙の束は、手放せばいいものの、その後の惨状と面倒さを考えれば得策ではないと思ってしまう。
そのまま、悟の右手がワンピースの中に───
「っ、やっ…!!」
「北御門、何をしている」
「東海林」
副会長に声をかけられたことで、悟の手がようやく離れる。
私は支えを失ったかのようにふらついたが、副会長が支えてくれた。
こ、腰が抜けた…!
「うちの部員だ、手を出すな」
「勧誘していただけだ」
は?勧誘??何故。
「まだ言ってたのか。真宮はうちを選んだ。軽音楽部は白雪祭を最後に廃部。決定事項だ」
「兼部は可能だ。まだ時間はあるだろう」
ふたりの応酬を聞いていると、粗方原作と同じく人数不足での廃部がほぼ確定。ただ、唯一の女子であり学年代表である私が入れば存続せざるを得ない状態になるらしい。どうしても私を入れたいらしいなこの夢小説は!!
しかし、最近妙な視線を感じると思ったら、話しかけるタイミングを見計らってた軽音楽部だったのか。
ここ最近はアンサンブル課題のおかげで透真先輩や宗くんたちと共にすることが多かったから話しかけにくかったんだろう。
「あの、そしたら対決してはどうですか!」
ぱん、と手を叩き言い争いを続けるふたりの意識を逸らした。
「例年屋外ステージの申請は少ないんですよね?ならそこで軽音楽部と管弦楽部でそれぞれステージをやって、満足度が高い方が勝ち!」
屋外ステージは屋根がない上、奥まった場所にあるため希望する団体が非常に少ない。
ステージをやりたくても講堂が取れなければやめる、といった所も多い。
だから原作でも対決の舞台として選ばれたのだ。
「満足度が高ければ実績と見なしても良いでしょう?だから────」
「なるほど。勝てば真宮さんが手に入るんだな」
「は?」
「お前の提案なら致し方ない。軽音楽部が上なら真宮の所属と部の存続、うちが上なら廃部。これがラストだぞ」
「構わない。必ず勝つから」
「全国常連の実力を舐めるな」
「あのー?」
原作通りに進めようとしたら景品にされました。
泣いていい?
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