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今思えば唯一平和だった時期(文化祭編)
好みじゃない
しおりを挟む生徒会長と副会長────実質聖櫻のツートップが唯一の女子生徒を巡って争う。
それは瞬く間に広がり、尾ひれが付き、よく分からない噂となってしまっていた。
「真宮ちゃん!勝った方の部長と結婚するって本当!?」
「誰ですかそんなこと言ったの!!!!」
原作で名もないモブと付き合って、モブとして生きる。夢主は夢主でも傍観主を目指そう!と意気込んでいたのにこの仕打ち。
北御門家も東海林家も世界に名を轟かす財閥だ。各界にそれぞれ太いパイプを持ち、世界経済を動かすと言っても過言ではない。知らんけど。
ふたりとも次男なので跡取りって訳ではないが、その権力は健在だ。
その前にこの学院でトップなら家を継がなくてもとんでもないところに就職できるだろうし、なんなら起業して実家同等の力を持つこともこのふたりの才能なら可能だろう。
このふたりに逆らえばよくて退学、最悪存在ごと消されるだろう。
勝った方と付き合うとか結婚するとか否定も出来ないまま流れてしまった噂がある限り、モブと付き合うなんて不可能だ。相手が消されてしまう。
どうしよう、どうすればいい。
「最悪ぅ…」
「まぁまぁ、ふたりとも顔はいいし、家柄も最高だし、玉の輿じゃん?ダメなの?」
「好みじゃないですぅ~…透真先輩のがいいです~…」
「えっ!?////」
赤面かわいい。先輩なのにらしくないところがよいよい。まぁ実際年下なんだけどね。
思わず頭を撫でると、気持ちよさそうに目を瞑るが、Σ(๑°ㅁ°๑)ハッ!となって「普通逆でしょ!?」と撫で返された。はぁ、大きい手おちつくぅ…。
「さて、今年の白雪祭では例年と違い講堂と屋外ステージの2ヶ所で行う」
講堂では部員全員でのオーケストラ演奏を、屋外ステージでは軽音楽部と同人数程度の少人数アンサンブルで演奏する。
当事者である部長と(何故か)私はアンサンブル強制参加として───
「ヴァイオリン2挺なら弦カルが無難だろう」
「そうだな。───榎並、楸、どうだ」
「えっ!?」
「は、はいっ!!」
おお、宗くんと秀くん。
上級生じゃなくて良いのか、とは思うが、このふたりが選抜されたのは納得が行く。
秀くんは周りの音を中和してくれる。多分耳がいいんだろう。バラバラな個性をまとめ上げ、ひとつの『音楽』に仕上げる。アンサンブル課題で組んだ時、とても弾きやすかったのを思い出した。
宗くんは私と部長の個性に負けない音が出せるからだろう。物静かそうな見た目とは裏腹に、激しく、情熱的な演奏をする。あと妙な色気も…。彼がいるだけで幅が広がる。それも見越しての抜擢だろう。
「あとは対等にもう1人───柊崎、ピアノを頼む」
「えー!?俺結構出番多いんですけど!」
「音大志望だろう、たまには弾かないと鈍るぞ」
「へーい…部長にゃ逆らえませんー」
柊崎諒先輩。
透真先輩と仲良しだから挨拶はした事あるけど、管だからちゃんと話したことないんだよね…。
父は超一流な指揮者兼ピアニスト、母は世界にファンがいるフルーティストで、兄弟もそれぞれ音楽の才能を発揮している音楽一家。先輩はその中でも優秀らしく、金管でも難しい部類とされるホルンをメインにピアノ、声楽、作編曲。最低限レベルと言ってたが他の管楽器も出来るらしい。なんでメインじゃないんだこのスペックで。
顔?いい方だと思うよ?好みじゃないけど。
「曲は真宮、選んでいいぞ」
「いいんですか!?」
「巻き込んだせめてもの償いだ。編曲は柊崎がやるからなんでもいいぞ」
「ちょっ、もしやそれ目的じゃないっすか!?」
「わーい!たくさんあるんです!!柊崎先輩、よろしくお願いします!!」
「まじかー…」
どうしよう、どうしよう!あの曲もこの曲もっていっぱい浮かんじゃう!!
スタンダードな編成に、なんでも出来るピアノがあればどれ選んでも許される!!
その日、パート練をしながらも何をやろうか頭を巡らせていた。
……なんか大事なこと忘れてる気がするけどなぁ。
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