傍観主でいさせてくださいっ!〜最強設定愛されトリップ夢主は貞操を守りたい〜

Sio*

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今思えば唯一平和だった時期(文化祭編)

面白がるな

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かりかりと無心でシャーペンを動かす。────いや、勝手に動いている。
普段はちょっと怖いとは思っているが、今ほど助かったと思える日はない。




だ、だ、だ、だって!!!!部長に!!!!副会長に!!!!東海林弥生に!!!!でこちゅー!!!!!!!!

いや悟にはべろちゅーされたやろとか体めっちゃ触られたやろとか言いたいことはわかる、わかるけど!!
こっちの心境が全然違う!!!!!

悟の時は原作にトリップしたとちょっと浮かれてたのち、余りの解釈違い(過去の自分が書いてたから違いもクソもないんだけどさ)とちょびっとトラウマフラッシュバックでショックというか失望というか泣きそうな気分だったから、原作ではどちらかと言えば悪役っぽかった(いい意味で)ギャップのある部長にあ、あ、あ、あんなことされてみろ。



意識、しちゃうじゃん────っ!


「あぁ、もう…っ!」


「真宮ー、体調悪いなら保健室行くか?」


「あっ!いえ、だ、大丈夫です…!」













「わぁ、俺らが必死になって姫愛のノートコピってた時に」


「そんな事があったのか」


「コピったんだ…」


「うん、手書きで」


「手書きで!?」


「書かなきゃ頭入らないだろ?」


本当に頭がいい人ってこんな感じなのかな…。私、馬鹿だったからわからないよ…。

結局テスト中は頭で解く必要がない分、意識はずっと部長とのことばかり考えていた。
答え出なくて寝不足にも陥ってる。
いつもと違ってフラフラだった私を心配してか、宗くんたちが全て終わったあと私を昼食に誘ってくれた。
ちなみにテスト期間中のお昼は旦那も息子も忙しくて逆に暇な静香さんが作ってくれてます。
私の部屋の庭(庭…?)にある可愛らしいテーブルセットに似合いの英国風ティーセットである。最近ご飯が食べられない私のために少しでも摘めるようにと1口サイズのサンドイッチに、甘党宗くんのために数々のプチスイーツ。お腹に優しい野菜たっぷりコンソメスープ。2人には更に主食としてキャベツたっぷりペペロンチーノだ。美味しそうなのは分かってるのに、食べる気しない…。


「しかしまぁ、面白いことになってるねぇ( ̄▽ ̄)」


「今のところ部長が優勢か」


「面白がるな。生まれてこの方恋愛に縁が無さすぎて全然わかんないんだよ…!」


人並みに恋愛や性に興味はあったし、そういう漫画や小説、ゲームには色々手を出していた。
でも、見た目も中身もオタクなこと以外は平々凡々だった上に、女性がほとんどのジャンルで生きてきた人間としては出逢いもなかったし、好きになるキャラが年上ばっかだから学校でときめくような人はいなかったしね。
社会人になってからは────…ね。
今思えば、(三次元の)初恋すらまだだったのではないか、と。
え?二次元?ハル様に決まってるでしょ。


「まぁそんなもんだよ、恋なんて」


「────私、秀くんの恋バナ聞きたい」


「俺も興味ある」


「いや姫愛はまだしも宗次郎も!?意外すぎるだろ!!」


しょーがねーなぁー(  ´꒳`  )。とうきうきで生徒手帳から写真を取り出す。…なんで5枚?普通1枚では?


「菜乃花に出逢ったのはもう15年前かな…」


「生まれた時からか」


「そう、親同士がそれぞれ仲良くて、結婚してからずっと隣の家」




✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼




周りに同じくらいの子供がいなかったこともあり、必然的に遊び相手は菜乃花だった。毎日互いのやりたいことを交互にやって、時には殴り合うような喧嘩もしたけど、離れることはなかった。ずっと一緒だと、子供ながらに思っていた。
ちなみに親に煽られたのもあるが、ファーストキスは小2だ。

その状況が変わったのが中学の時。
複数の小学校から集まっており、今まで知らなかった世界に飛び込んでいった。
俺も背が伸び声も低くなり、菜乃花も丸みを帯びたまさに女の子と変わり、部活も別々となった。
思春期も相まって学校ではほとんど話すこともなくなってしまったが、そのかわり家では相変わらずだった。だから疑いもしなかった。
ずっと一緒だと。


そんなある日────


立秋菜乃花さとあきなのかさん、好きです。付き合ってください』


その人は、菜乃花の部活の先輩で、周りの女子がかなりイケメンだと騒いでいた。
菜乃花の顔は見えなかったが、耳が見たことないくらい真っ赤だった。

本能的に思った。このままだとずっと一緒にいられない。
それは嫌だ。菜乃花の隣に立つのは、俺以外ありえないと。


菜乃花こいつは俺のだ。手を出すな』


『しゅ、うご…?』


気付いたら走り出していた。
先輩だとか知ったこっちゃない。菜乃花を引き寄せ奴に見えないよう抱きしめた。
菜乃花から戸惑いの声が聞こえたが、それを塞ぐように口付けた。


『今更気付いてごめん。菜乃花と離れたくない、誰にも渡したくない。好きです、ずっと一緒にいてください』


『しゅーご…っ、うわぁあ!』


私も好き、離さないで、ずっと一緒にいて。そう抱きついてきた菜乃花な愛おしさが込み上げ、もう話さないと言わんばかりに抱き締めた。


✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼






「ただ、これが学校で目立つ中庭でやっちゃったもんだから次の日からからかいの対象になっちゃって…」


「うわあ漫画みたい…素敵じゃん!」


「てか元々みんな知ってたようでさ!自覚してないのが本人たちだけって状態だったらしいんだよね( ˘・з・)」


5枚の写真を眺める秀くんの目は、見たことがないくらい蕩けていて、あぁ、大好きなんだなってのがよく伝わってきた。


「でもなんでそれで婚約者なんだ?」


「あぁ、親たちは元々結婚させる気だったんだって。互いに子供が出来たらーってずっと言ってたらしく」


それに両想いなのはバレバレだったからお付き合い報告したらようやく…!と泣かれたよ。
なんて照れくさそうに頭を搔く。
以降、中学卒業してから菜乃花さんは花嫁修業を兼ねて有名女子高に、秀くんは『会えない時間も愛を育む!』という父の言いつけ通り寮があり、ヴィオラが弾ける管弦楽部がある聖櫻に来たというわけだ。ほぼ男子校で浮気の心配がない!となったのが最大の決め手らしい。
ずっと一緒だった反動で会えない時間は苦しいが、だからこそ定期的にやり取りしている手紙やメール、電話の嬉しさは計り知れないものだし、次会えた時の愛おしさは想像もつかない。


「きっと菜乃花はいい女になってる。だから俺ももっといい男を目指すんだ」


参考になった?と笑う秀くんを羨ましく思いつつ、私にもそんな相手が現れるのか、現れてもどちらの世界なのか────なんだか余計にわからなくなってしまった。


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