20 / 33
今思えば唯一平和だった時期(文化祭編)
面白がるな
しおりを挟むかりかりと無心でシャーペンを動かす。────いや、勝手に動いている。
普段はちょっと怖いとは思っているが、今ほど助かったと思える日はない。
だ、だ、だ、だって!!!!部長に!!!!副会長に!!!!東海林弥生に!!!!でこちゅー!!!!!!!!
いや悟にはべろちゅーされたやろとか体めっちゃ触られたやろとか言いたいことはわかる、わかるけど!!
こっちの心境が全然違う!!!!!
悟の時は原作にトリップしたとちょっと浮かれてたのち、余りの解釈違い(過去の自分が書いてたから違いもクソもないんだけどさ)とちょびっとトラウマフラッシュバックでショックというか失望というか泣きそうな気分だったから、原作ではどちらかと言えば悪役っぽかった(いい意味で)ギャップのある部長にあ、あ、あ、あんなことされてみろ。
意識、しちゃうじゃん────っ!
「あぁ、もう…っ!」
「真宮ー、体調悪いなら保健室行くか?」
「あっ!いえ、だ、大丈夫です…!」
「わぁ、俺らが必死になって姫愛のノートコピってた時に」
「そんな事があったのか」
「コピったんだ…」
「うん、手書きで」
「手書きで!?」
「書かなきゃ頭入らないだろ?」
本当に頭がいい人ってこんな感じなのかな…。私、馬鹿だったからわからないよ…。
結局テスト中は頭で解く必要がない分、意識はずっと部長とのことばかり考えていた。
答え出なくて寝不足にも陥ってる。
いつもと違ってフラフラだった私を心配してか、宗くんたちが全て終わったあと私を昼食に誘ってくれた。
ちなみにテスト期間中のお昼は旦那も息子も忙しくて逆に暇な静香さんが作ってくれてます。
私の部屋の庭(庭…?)にある可愛らしいテーブルセットに似合いの英国風ティーセットである。最近ご飯が食べられない私のために少しでも摘めるようにと1口サイズのサンドイッチに、甘党宗くんのために数々のプチスイーツ。お腹に優しい野菜たっぷりコンソメスープ。2人には更に主食としてキャベツたっぷりペペロンチーノだ。美味しそうなのは分かってるのに、食べる気しない…。
「しかしまぁ、面白いことになってるねぇ( ̄▽ ̄)」
「今のところ部長が優勢か」
「面白がるな。生まれてこの方恋愛に縁が無さすぎて全然わかんないんだよ…!」
人並みに恋愛や性に興味はあったし、そういう漫画や小説、ゲームには色々手を出していた。
でも、見た目も中身もオタクなこと以外は平々凡々だった上に、女性がほとんどのジャンルで生きてきた人間としては出逢いもなかったし、好きになるキャラが年上ばっかだから学校でときめくような人はいなかったしね。
社会人になってからは────…ね。
今思えば、(三次元の)初恋すらまだだったのではないか、と。
え?二次元?ハル様に決まってるでしょ。
「まぁそんなもんだよ、恋なんて」
「────私、秀くんの恋バナ聞きたい」
「俺も興味ある」
「いや姫愛はまだしも宗次郎も!?意外すぎるだろ!!」
しょーがねーなぁー( ´꒳` )。とうきうきで生徒手帳から写真を取り出す。…なんで5枚?普通1枚では?
「菜乃花に出逢ったのはもう15年前かな…」
「生まれた時からか」
「そう、親同士がそれぞれ仲良くて、結婚してからずっと隣の家」
✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼
周りに同じくらいの子供がいなかったこともあり、必然的に遊び相手は菜乃花だった。毎日互いのやりたいことを交互にやって、時には殴り合うような喧嘩もしたけど、離れることはなかった。ずっと一緒だと、子供ながらに思っていた。
ちなみに親に煽られたのもあるが、ファーストキスは小2だ。
その状況が変わったのが中学の時。
複数の小学校から集まっており、今まで知らなかった世界に飛び込んでいった。
俺も背が伸び声も低くなり、菜乃花も丸みを帯びたまさに女の子と変わり、部活も別々となった。
思春期も相まって学校ではほとんど話すこともなくなってしまったが、そのかわり家では相変わらずだった。だから疑いもしなかった。
ずっと一緒だと。
そんなある日────
『立秋菜乃花さん、好きです。付き合ってください』
その人は、菜乃花の部活の先輩で、周りの女子がかなりイケメンだと騒いでいた。
菜乃花の顔は見えなかったが、耳が見たことないくらい真っ赤だった。
本能的に思った。このままだとずっと一緒にいられない。
それは嫌だ。菜乃花の隣に立つのは、俺以外ありえないと。
『菜乃花は俺のだ。手を出すな』
『しゅ、うご…?』
気付いたら走り出していた。
先輩だとか知ったこっちゃない。菜乃花を引き寄せ奴に見えないよう抱きしめた。
菜乃花から戸惑いの声が聞こえたが、それを塞ぐように口付けた。
『今更気付いてごめん。菜乃花と離れたくない、誰にも渡したくない。好きです、ずっと一緒にいてください』
『しゅーご…っ、うわぁあ!』
私も好き、離さないで、ずっと一緒にいて。そう抱きついてきた菜乃花な愛おしさが込み上げ、もう話さないと言わんばかりに抱き締めた。
✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼
「ただ、これが学校で目立つ中庭でやっちゃったもんだから次の日からからかいの対象になっちゃって…」
「うわあ漫画みたい…素敵じゃん!」
「てか元々みんな知ってたようでさ!自覚してないのが本人たちだけって状態だったらしいんだよね( ˘・з・)」
5枚の写真を眺める秀くんの目は、見たことがないくらい蕩けていて、あぁ、大好きなんだなってのがよく伝わってきた。
「でもなんでそれで婚約者なんだ?」
「あぁ、親たちは元々結婚させる気だったんだって。互いに子供が出来たらーってずっと言ってたらしく」
それに両想いなのはバレバレだったからお付き合い報告したらようやく…!と泣かれたよ。
なんて照れくさそうに頭を搔く。
以降、中学卒業してから菜乃花さんは花嫁修業を兼ねて有名女子高に、秀くんは『会えない時間も愛を育む!』という父の言いつけ通り寮があり、ヴィオラが弾ける管弦楽部がある聖櫻に来たというわけだ。ほぼ男子校で浮気の心配がない!となったのが最大の決め手らしい。
ずっと一緒だった反動で会えない時間は苦しいが、だからこそ定期的にやり取りしている手紙やメール、電話の嬉しさは計り知れないものだし、次会えた時の愛おしさは想像もつかない。
「きっと菜乃花はいい女になってる。だから俺ももっといい男を目指すんだ」
参考になった?と笑う秀くんを羨ましく思いつつ、私にもそんな相手が現れるのか、現れてもどちらの世界なのか────なんだか余計にわからなくなってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる