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人身御供

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マアサ姫のお兄様になって1週間……

私はもう母国にいません。

隣国のパーティーに、王付きの護衛として並んでいます。

私に何ができるか?盾になれと言うことでした!!何様だ!王様だとて、私の命をくれてやるつもりなどないぞ!
横に並んで歩いてるけど、歩幅が違うから辛い。身長差とか足の長さを考えて歩いてほしい!!

「はぁ…」
「溜め息をつくな」
ファビアン王に横目で睨まれた。

「……はい」

ため息も自由につけないとわ…。

ん?
今までずっと前を見ていた王様が、なぜか私を見ている。
もしかして女だとバレた!?

「お前は着飾れば、女に見えなくもない。今すぐ着替えてこい。」

へ?女である私に『女に見えなくもない』って、…失礼すぎる!
女みたいだ、と言われるならいい。
けど、『見えなくもない』って何!


「……かしこまりました。」

絶対…これを狙ってたな…夢見る姫は……
恋愛小説とかであるシーンを本気でやりたいタイプ…!

「アラン様。私達はマアサ様から事情は聞き及んでおります。『実は女なのか…?』と気づかれるか気づかれないかの、すれすれのメイクと衣装をご用意いたしましたので、お任せください。」

まさか指示まで出てたとかっ!?

因みに、私は女だということを、もう一度思い出そうか!女の私を女に見せる為に頑張っている女性たちよ…!


準備完了。

「上出来だ。俺の隣に立って笑っていろ。」

ファビアン王のお眼鏡にかないました!

これは夫婦、もしくは婚約者同伴の
パーティーらしい。
私がソレッ!?

なるほど、盾と婚約者と一石二鳥!!
さすがだ。
ただの女を隣におくはずがない!

エスコート…というのをはじめてされて、
キラキラした会場へ。美味しそう物が沢山!
けど、言われました。

『食うな……』

このパーティーで唯一楽しめそうな、『ご飯食べるな』…って。
つまらない…。


まわりを見れば、やはりみんなキレイ…。
ただこの国では中性的な人が綺麗な人にあたるらしい。
まかせてください!
女なのに『女に見えるように』メイクをされた私が一番人気に違いありません!!

私に対する印象はなぜかとてもいいようで、色んな人がすごく話しかけてくる!!
言葉わかりません…
王様助けてください…

チラっと見ると王様はご機嫌だ。
グイッと私を抱き寄せ、何やら異国の言葉で
ペラペラ話しております…。

腰を抱き寄せられても、女と気がつかれないという…。
いや、よかったんだけどさ…。女としては
負けた気がしないでもない…。

その後も女も男も、私たちに興味があるのかやたらと寄ってきた。

この国でなら私は誰よりもモテる!
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