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ふぁびあん

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王様とお姫様を呼び捨てに…。いいのかな…。


マアサ様の部屋から出て少しすると、ロレッソ君を見つけた。

「おーい!ロレッソ君っ!!」

「…アリスか。」

何だかなロレッソ君の顔色が良くない気が…。

「何かあったの?」
「いや、別に。そうだ、今日で俺は騎士辞める。」
「…ええっ!?なぜっ!」

私の唯一のオアシス。平民、庶民、とうもろこし!

「親父の体調がよくないから、ちょっとな…。」
「そっか。」
それじゃ、止められない。
「早く元気になるといいね。」
「ああ。」

すごい落ち込んでる。かなり具合よくないんだ…。


「アリス」
「ん?」

後ろから王様に呼ばれた。

「ハイ!すぐに行きますっ!ロレッソ君、お父さんがよくなったら、また騎士になって私を護ってくたさいね!」

ロレッソ君に言って、王様の所へ急いだ。

「只今到着いたしましたっ!今日はどんな雑務が待ち構えて…る…?」

王様の側に行くと、頭を撫でられた。

「何もされていないな?」

…若干犬扱いされてる気がする。

「ロレッソ君と話をしただけですよ。」
「……そうだな。」
「そうです。…ロレッソ君、やめちゃうみたいなんです。」
「…ああ。その話は聞いてる。」

そんな事まで王様が知ってるもの?ロレッソ君の事だから知ってるのかも。

「あれ?私の護衛の人は?」
「ロレッソと話をしている。アリス、俺達は仕事だ。」
「はい。…そういえば何で王…ファビアンがここにいるんですか?」
「……」
「……?」
「迎えに来たんだ。」
「誰を?」
「何故ここでその質問が出てくるんだ…。アリスに決まってるだろ。」
「決まってるんですか?」
「はぁ…」

なんか、呆れられてる気がしないでもない。

「護衛のお姉さんがいるから大丈夫ですよ。」
「俺が一緒にいたかったんだ。」

なんと!

「俺が迎えに行きたかったし、護ってやりたい。」

なんですとっ!?

「…何かあったんですか?私みたいなのにそんなに…」

ヒーローとか言ったからだったりして…。
助けてくれたから、安心する。とか言ったから…。

「気にしないでください。城下の娘っ子が王様をヒーローだなんて…畏れ多い事を…。」
「…何を言ってる?」
「王様は王様なんですから、私を護ったりしなくていいんです!」

ちょっと仲良くなれた気がして勘違いしてた…。この人は国王なのです!!


「これからは騎士さんと歩きますので、気を使わないで下さい。」

罪悪感でいっぱいなんだ、あの時私が飛び出して行ったのは自分のせいだから、誘拐も自分のせいだと思ってる…はず。

王様は注意換気をして、私が職務放棄した結果なのに…。

「王様、本当に気にしないでください!」
「今、アリスが考えていた事を全て当ててやるから、とりあえず執務室へいくぞ。時間の無駄だ。」
「はいっ!!」


私たちはいそいで執務室へ行った。


「そこに座るんだ。」
「はい…。」

私は言われた通りにフカフカのソファーに座った。

「さっき、俺が護りたいと言って、それでアリスはこう思ったはずだ。『安心するとか、ヒーローだとか言ったからだ』『罪悪感だ』『私が悪いのに気を使ってる』『王様なのに』とか。違うか?」
「違いません。」

驚くことに、全てあってます。

「そんな事は思っていない。」
「でも王様ですから…」

護る立場ではなく、護られないと…。

「名前で呼べ。『王様』じゃなく。」
「ふぁびあん…」
「またぎこちなくなったな…。はぁ、距離が近づかない…。何故全てを否定する。」
「否定なんてしてません、本当の事です。」
「さっき、名を呼ばなかったのは何故だ?」

なぜって無理やり呼ばせてただけですよ。

「呼び捨てにしている女の人がいるなら、私もそうします。私1人が呼ぶのは嫌です。何だか特別扱いみたいで…。」 
「……わかった。連れてこよう。」
「え?」
「何だ、その変な顔は。」

変な顔…。

「連れてきたらいいんだな。」
「演技したりとかはダメですよ!」
「するわけないだろ。俺はこの国の王なんだぞ。『アリスに名を呼んでもらいたいから』…って理由を言えると思うのか?」
「…言えません。」
「明後日、連れてこよう。」
「はい…。」
「では、仕事をするぞ。」
「はい!」

ん?この話…名前の事を言ってたっけ?
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