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ふぁびあん2

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2日後

「久しぶりね。ファビアン。一体何のご用かしら。」
「特に用はない。」
「よびだしておいて、それは無いでしょう。」

何だか空気がピリピリしてる気がする。同席している私としては仲良く話してほしい。
王様の名を呼びすてにする女の人ってこの綺麗な人?庶民の私が呼ぶのとは違う気がする…。


「アリス、ちょっと来なさい。」

マアサ様に手招きされた。

「まあさ…、何かあったんでしょうか。あの2人。来て早々にあんなにピリピリと…」
「あの女はね、お兄様の好きだった女よ。」

スキダッタオンナ

「やっぱり一途!遂に結婚ですよ、まあさ!」

私の任務もこれで終わり!

「…あの女と結婚?冗談じゃないわ。」

マアサ様、王様レベルに冷たい表情…!

「ふぁびあんはあの人を好きだから招待したのかもしれませんし、そんな否定しなくても…」
「あの女と結婚するような見る目のない国王なら退任させるわ。私が王になった方がましよ。」
「……」
こわぁい


                      
「ねぇファビアン、ついさっきまで貴方の横に座ってたのが婚約者じゃないわよね?」
「そうだとしたら何だ?」
「フフフ、あれじゃ男色と疑われても仕方ありませんわね。」
「そうだな、まぁ化け物相手じゃないだけいいと思うが。」
「……何が言いたいのかしら。」
「いや、解らないなら別にそれで。もう用はすんだ。帰れ。」
「はっ!?たった今来た所なのよ?それをもう帰れですって?」
「ローウッド伯爵と子がお待ちだろうから、ここに引き留めておくわけにも。」
「私をまだ諦めていないのでしょう?」
「未練がない女を、どう諦めればいい?」
「では、あの『男みたいなの』が好きだとでも?」
「そうだったら?夜会で着飾るだけの女達よりは面白い。」


ドアの隙間からこっそり中の様子を伺ってるけれど、何だか空気が冷たい。

「まあさ…よく解らないですが、ケンカしてる気がします。」
「喧嘩にすらなってないわよ。お兄様のあの表情。それにしても、何故あんな女をまねいたのかしら。私が大嫌いなのを知っているのに。城の空気が汚れるわ。」
「私が『王様を呼びすてにする女が私だけなのは嫌だ』って言ったからかもしれません。」
「……」
「でも、好きな人を連れてくるなんて思わなかったんです。」

それが、マアサ様の嫌いな女だったなんて事も知らなかったし…。

「アリス、お兄様が本当にあの女に未練があると思うの?」
「一途」
「未練よ。」
「それはまだ好きだというのとどう違うのでしょうか?」



違いが解らない女…アリス、もうすぐ18才。
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