買い食いしてたら、あっというまにお兄様になりました

シンさん

文字の大きさ
61 / 68

劣等感

しおりを挟む
「はぁ…やっと帰った。」

あんなに自意識過剰の女…俺は何故好きだったのか…。
それを好きになった自分を、今は恥じるしかない。

コンコン
「お兄様、マアサです。少しお話があります。」
「入れ」
…来ると思った。

「失礼します。」

マアサが見るからに不機嫌だ。

「今アリスはどこですの?」
「風呂だ。」
「まさかこの部屋の…?」
「流石にそれはない。」
「では今のうちに言います。アリスは勘違いしましたわ。完璧に。」

勘違い?

「…何を?」
「お兄様があの女をまだ好きなのだと思い込んでいます。」
「は?俺はあれが好きだった女だと一言も……お前か…マアサ。」
「あの険悪な雰囲気と、私の嫌いな女を連れてきているのに、アリスが『どうしたんですか?』と聞かないと思ったのですか?」
「聞いたから何だっていうんだ。」
「全て裏目に出てますわよ。『一途な、ふぁびあん王様。』」
「嫌みか?」
「100%」

冷たい視線に表情。こういう時、マアサが自分の妹だと実感する。

「あんな女、今更好きではないと言ってある。勘違いしてるなら、後できちんと説明すればいい話だ。」
「信じる訳がないですわ。『ファビアン』と呼んでもらいたいから、好きだった女性を連れてくる愚かな兄…。どこでそんなポンコツになったのかしら。」
「ポンコツ…」
「お兄様、アリスは例え誰を好きになってもその気持ちを認めませんわ。お兄様を好きになりそうだとしても、何か理由を見つけて『私なんかを好きになるはずがない』ってね。」
「……」
「自分では『平気だ』と、『慣れてる』と言ってるけれど『男の子みたい』という劣等感を抱いてるんです。見ていたら解るでしょう。」
「…俺は女だと思っている。」
「それが敗因になりましてよ。たとえお兄様を好きになったとしても、相手が自分といてどう見られるか、今度はそこに辿り着きます。そんな事が、デートでもありませんでしたか?」
「…手を繋ぐのを拒否された。」
「お兄様が男色だと思われたら困る。そう気にしてでしょう。『自分は男みたいだから誰も好きになってくれない』『好きになった人に迷惑になる』『誰も好きにならない方がいい』」
「そんな事はない…と言ってもきかないだろうな。」

護ってやりたいと言えば、『王様は護られるべきなのに申し訳ない』…と言って寄せ付けない。

「まぁ、もともと物凄く嫌われてましたから、私達のもとから早く逃げたいと思っているでしょうけど。」

「…おまえ、俺へのポンコツ発言を訂正しろ。」
「ポンコツですわ。今のアリスの顔を見てもわからないお兄様なんて。」
「何故だ。」
「…アリスの言葉と行動にはとても意味があるんです。まっすぐに言えない事も、気が付いてあげないと。」
「……」
「2人の行動は、まわりから見れば恋人としか思えませんわ。手を差し出せばキュっと握ってお兄様にくっついて歩いているし、婚前に女性が男性と共に寝る事など多くはありません。」
「『ヒーローみたいで安心するから一緒にいたい』っと言っていた。誘拐された時に俺が最初に助けたからなだけだ。怖い時に助けてくれた男にはそうなる。…助けてくれたのが俺でよかった…と言ってはいたが…」
「もうポンコツではなくガラクタですわね。」

ガラクタ…

「『安心する』…アリスの最大級の『大好き』という言葉ではないですか。しかも『お兄様がいい』だなんて。」
「何故だ、聞けば父親のような扱いだぞ。」
「今まで『自分を守るのは自分しかいない』『助けて貰おうと思わない』…そう言っていた子が『安心するから一緒にいたい』だなんて、自分を護ってもらいたいと思ってる人に溢す言葉です。お兄様に護ってもらいたいのです。」
「『護る』…そう言っても断られる。それに、アリスだぞ?色恋まじえてると思うか?」
「踏み外して、『一途なふぁびあん』に逆取りですわ!」
「……」
「お兄様、アリスはいつまでも城にいるわけではなくてよ。彼女はここを出ていくという選択を進めてます。のんびりしてたら、あのロレッソとかいう密偵に拐われますわよ。」
「そんな事、俺が許すはずない。」
「お兄様の気持ちは関係ないのです。ロレッソは『アリスはいい奴だから引き下がる』…と言ってきたのでしょう?『ハーブのジジイに渡したくない、俺では護りきれないから何とかしてやってほしい』…と。」

ロレッソは密偵だった。本人が俺に直接言いに来た。
名乗り出たりすれば命を危険にさらす事になるのは解っていたはずだ。
それでも、助けを求めてきた。

「…トウモロコシの良さを解ってるはずだ。と言われた。夜伽と結婚と世継問題、関わりたくないというのがアリスの本音…らしい。」
「そんな事、連れてきた時からなのですから、何とかしてみせてこそ国王なのではなくて。」

そこまで話していると、隣の部屋で声が聞こえた。



ガタガタ

「え?まあさが来てるんですか?つんつるてんパジャマだけどいいかな?いいと思いますか?」
「マアサ様は女性ですので、問題はございません。それに王の前で既にその姿を見せているのですから。」
「そうでしょうか…。」
「そうです。」
「でもお話中ならここで待ってたほうがいいですよね。」
「少し待ちましょう。」


「風呂からあがったようだな。」
「では、この話は一旦これで終わりにしますわ。アリス、お入りなさい。」


ガチャ

「…まあさ、こんばんは。失礼します。」

「…つんつるてん……ね。」

マアサの言いたい事はわかる。腹も腕も足も、全て裾が短い。

「俺は服は用意したからな。」
「お兄様、アリスは17才ですわよ。わかってますわよね。」
「それくらい解っているし、もう見慣れてる。そして色気がないのもわかった。」
「そこが気に入ってるのでしょう。女の武器を使わないアリスが。」

妹を生意気に育てすぎた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。 前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。 恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに! しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに…… 見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!? 小説家になろうでも公開しています。 第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~

百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!? 男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!? ※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。

契約結婚の相手が優しすぎて困ります

みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない

百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。 幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

処理中です...