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どろぼう
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私達が話おえた頃に、犬人間が部屋に入ってきた。
今までずっとメンフィス様の前には出てこなかったのに…
「ごめんなさい」
シュンと耳が垂れてて、よく見ると可愛いし…まぁいいか。
「落ち着いてね。これからは。じゃないと貴方のご主人様が面倒な事をするから。」
「はい。」
「よろしい。」
「リディア、面倒…とは…」
…また落ち込んでる。
「地面揺らしたりする迷惑な人です。」
「…」
メンフィス様がキョトンとしているけど、何か言ったかな…?
「どうしたんですか?」
まさか食べられる?今はやんす君もいるし大丈夫よね。
「人って…」
「まさか、魔王様って呼ばなかったから怒ってるの?」
「違う。魔王でなくて『人』だと言ってくれた。」
「…今までも何度か言ってるはずですが。」
「違うんだ。『迷惑な人』…君の中で人として認識してくれたんだ。正体を見せない魔王ではなく。」
「何が違うかわからないです。私にはここはお化け魔王侯爵領土。」
「メンフィス様、人間がまた来ています。」
犬人間がクンクンと鼻を引くつかせて言った。
「今度は何処?」
「トマト農園です。」
「この前は葡萄で、今度はトマト、次はニンジンでも盗むのかな。」
盗む…?
「泥棒が来るんですか?」
「ああ、この領内では季節に関係なくどんな植物も成長するから、それを狙いにくる人間が山ほど来るよ。動物なら許すけど、人間の枠だけは許さない事にしてる。昔、見逃してあげてたのに、全てを奪いに来たからそれなりの罰は受けてもらったよ。」
「罰?」
「怖がらせて帰ってもらった。」
「……それだけ?」
「それだけって、効果はあったよ。」
「…お化けは怖いって思われるの、そんな事をするからじゃないの?」
「あ、そうかもしれないね。けど、血も流れないし、いいと思うから。」
血も流れない…その通りだわ。
『お化けだから』…とか言って、他を理解しようとしない自分が恥ずかしくなった。
泥棒退治に行く事になったのだけど…このお化け達、楽しんでるように見えるのは気のせい?
「何か楽しんでませんか?」
「だって楽しいからね。」
「…なぜですか?」
「悪い事したんだから怖い思いをして貰えば、当分ここに来る人も減るから。
その考えを否定はしないわ。楽しんでいるならそれでいいと思う。けどね…
「なぜ私まで手伝う事になるの?」
「ん?今回はリディアを中心にしようと思っているから。」
「それがおかしいんです!私はお化けでも化け物でもないの。人間なの!」
私が言うとすかさずやんす君が言った。
「そうです。リディアさまはただの力もちです。」
「やんす君、全然嬉しくない。」
「格好いいと思います。可愛いのに力持ち。ギャップです。」
やんす君が言うと、仕方ないか…って思ってしまうのよね。本音を言ってくれるから。
「やんす、そのギャップを使いたいんだよ。」
「どう言う事ですか?」
やんす君がキョトンとしている。
「リディアのように可愛い女の子が、白いワンピースを着て大きな石を持ち上げていたら驚かないか?」
「…可愛い」
可愛くないよ。やんす君、付き人フィルターかかりすぎ。
「やんす君、簡単にまるめ込まれないで。」
「でも、可愛いです。俺見てみたいです。」
悪意がないところが…断りづらいのよね。
「やってみます。」
「リディア…やんすが言う事は受け入れるんだね。」
またシュンとしているわ。本当に魔王様なの?
疑わしい…
「何だい、その視線…。」
「魔王様?」
「…そこから疑い始めるの?」
「すぐにシュンとするからです。」
「だって、悲しいんだから仕方ないよ。」
だって…て。
すごく可愛く見えてしまった。これがギャップというもの…。
「私の力持ちをアピールするとして、怖がらなかったらとうするんですか?」
「リディアの目を光らせたり。」
「もうお化けでしょ。それは。」
「…実は可愛いリディアを見せびらかしたいのもあるんだ。」
「メンフィス様!賛成です。」
やんす君が、魔王側へついてしまった。
今までずっとメンフィス様の前には出てこなかったのに…
「ごめんなさい」
シュンと耳が垂れてて、よく見ると可愛いし…まぁいいか。
「落ち着いてね。これからは。じゃないと貴方のご主人様が面倒な事をするから。」
「はい。」
「よろしい。」
「リディア、面倒…とは…」
…また落ち込んでる。
「地面揺らしたりする迷惑な人です。」
「…」
メンフィス様がキョトンとしているけど、何か言ったかな…?
「どうしたんですか?」
まさか食べられる?今はやんす君もいるし大丈夫よね。
「人って…」
「まさか、魔王様って呼ばなかったから怒ってるの?」
「違う。魔王でなくて『人』だと言ってくれた。」
「…今までも何度か言ってるはずですが。」
「違うんだ。『迷惑な人』…君の中で人として認識してくれたんだ。正体を見せない魔王ではなく。」
「何が違うかわからないです。私にはここはお化け魔王侯爵領土。」
「メンフィス様、人間がまた来ています。」
犬人間がクンクンと鼻を引くつかせて言った。
「今度は何処?」
「トマト農園です。」
「この前は葡萄で、今度はトマト、次はニンジンでも盗むのかな。」
盗む…?
「泥棒が来るんですか?」
「ああ、この領内では季節に関係なくどんな植物も成長するから、それを狙いにくる人間が山ほど来るよ。動物なら許すけど、人間の枠だけは許さない事にしてる。昔、見逃してあげてたのに、全てを奪いに来たからそれなりの罰は受けてもらったよ。」
「罰?」
「怖がらせて帰ってもらった。」
「……それだけ?」
「それだけって、効果はあったよ。」
「…お化けは怖いって思われるの、そんな事をするからじゃないの?」
「あ、そうかもしれないね。けど、血も流れないし、いいと思うから。」
血も流れない…その通りだわ。
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泥棒退治に行く事になったのだけど…このお化け達、楽しんでるように見えるのは気のせい?
「何か楽しんでませんか?」
「だって楽しいからね。」
「…なぜですか?」
「悪い事したんだから怖い思いをして貰えば、当分ここに来る人も減るから。
その考えを否定はしないわ。楽しんでいるならそれでいいと思う。けどね…
「なぜ私まで手伝う事になるの?」
「ん?今回はリディアを中心にしようと思っているから。」
「それがおかしいんです!私はお化けでも化け物でもないの。人間なの!」
私が言うとすかさずやんす君が言った。
「そうです。リディアさまはただの力もちです。」
「やんす君、全然嬉しくない。」
「格好いいと思います。可愛いのに力持ち。ギャップです。」
やんす君が言うと、仕方ないか…って思ってしまうのよね。本音を言ってくれるから。
「やんす、そのギャップを使いたいんだよ。」
「どう言う事ですか?」
やんす君がキョトンとしている。
「リディアのように可愛い女の子が、白いワンピースを着て大きな石を持ち上げていたら驚かないか?」
「…可愛い」
可愛くないよ。やんす君、付き人フィルターかかりすぎ。
「やんす君、簡単にまるめ込まれないで。」
「でも、可愛いです。俺見てみたいです。」
悪意がないところが…断りづらいのよね。
「やってみます。」
「リディア…やんすが言う事は受け入れるんだね。」
またシュンとしているわ。本当に魔王様なの?
疑わしい…
「何だい、その視線…。」
「魔王様?」
「…そこから疑い始めるの?」
「すぐにシュンとするからです。」
「だって、悲しいんだから仕方ないよ。」
だって…て。
すごく可愛く見えてしまった。これがギャップというもの…。
「私の力持ちをアピールするとして、怖がらなかったらとうするんですか?」
「リディアの目を光らせたり。」
「もうお化けでしょ。それは。」
「…実は可愛いリディアを見せびらかしたいのもあるんだ。」
「メンフィス様!賛成です。」
やんす君が、魔王側へついてしまった。
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