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再会

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「ラマナ、本当に行っちゃうの?」

「あぁ、そんな泣きそうな顔するな。絶対また帰ってくるから。」

「本当?」

「俺はナタリアに嘘はつかないよ。」

「わかった。じゃあ待ってる!」

「じゃあ行ってきます。」





・・・・・・

あれから10年、
今日ラマナが修行を終えて帰ってくる。
修行っていうのは、悪魔狩りの。
ラマナはそれが出来る一族の唯一の生き残りらしくて、その歴史を学んで悪魔を殺せる力を手に入れてくるらしい。…よくわからないけど。
だって悪魔なんていると信じてないし。



「ベリーパイを作ったし、喜んでくれるといいな。」

ラマナが帰って来るから色々と用意したかったけど、テーブルにはブルーベリーパイのみ。

質素すぎるわ。全然可愛くない!

せめて可愛いテーブルクロスのようなものがあればいいんだけど…。


両親のいない私を育ててくれたお婆ちゃんは、2ヶ月前に他界してしまった。

それからは極貧生活よ。
未だに定職につけていないから、売れそうな物は全てお金にかえたのよね。
そんな我が家に、テーブルクロスなんて贅沢な物があるわけないよね。

けれど10年ぶりに会う幼馴染に、貧相な生活を送っているのだとは思われたくない!

このパイは摘んできたベリーだからお金をかけたものではないけれど、見栄えだけはいいわ。

…服はどうしようもないよね。
着古した白のブラウスに黒のロングスカート。はやりの花柄のワンピースなんて高くて買えないし。

「あれ?何かある?」

テーブルクロスの代わりになるものがないか引き出しを漁っていると、ごわごわした布切れがある。
私はそれを引っ張り出した。
出てきたものは、濃紺の布と古い羊皮紙。
布はローブのように見える。せめて可愛い色の布なら、切ってテーブルクロスに出来るのにね。
こんなボロボロのローブ、役に立たないじゃない。着てたら笑われるわ…。それでなくても、町はずれにあるおんぼろ小屋に住んでるって笑われてるんだから。

羊皮紙には何か書いてあるのが見えるけれど、インクがかすれて半分は読めないわ。

「えーと、『このローブは我が一族が魔女だという証である。悪魔殺しに会った時はこれを持って逃げろ。こ……は……す…だ…う。』」

魔女って、何の冗談?
悪魔殺しに会った時はすぐに逃げろ…ってどういう事?

悪魔殺し…それって、ラマナの事だよね?

この羊皮紙は一体誰のものなの?お婆ちゃん?
だったら、この魔女っていうのは私になるの?

ちょっと待ってよ…。

もし私が魔女だったなら、ラマナに狙われてしまうの?大切な幼馴染に…。私のたった1人の友達に。
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