この婚約、白紙に戻させていただきます

シンさん

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森の番人

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「ハッピバースデー私!!」

 今日、逢魔が刻の森の番人を命じられて4年がたった。任期は5年。
 あと1年、あと1年で都に帰れるっ!!


 ……あと1年、長いなぁ。
 ガスパールはどうしてるかな。私の事を忘れて、別の女と付き合ってたりしたらブッ飛ばしてやるんだから。


 そんな事を考えながら、朝ご飯を食べていると『コンコン』とノックの音がした。

 ……誰かしら。誰じゃなく、魔物?
 でも、それならノックなんてしないよね。

 ここは、魔力持ちしか入れない森の深部。誰でも入って来れるわけじゃないし、好んで入って来る人もいないよね。ということは、人じゃない。
 用心してドアを開けると、そこには会いたかった人がいた。

「ガスパール!!もしかして、会いに来てくれたの?」
「……え?」
「疲れたでしょう?狭いところだけど入って」
「いや、あの……」

 何故かガスパールは家に入ろうとしない。
 貴族のお坊ちゃんには、山小屋はハードルが高すぎるのかな。

「掃除はしてるから、汚くないわよ」
「……リュシル・クロークト様ですか?」

 何でそんな事を聞くのかしら。

「貴方、たった4年で婚約者の顔を忘れたの?」
「……ガスパールは、私の祖父の名です。私は、リュシル様に、祖父が亡くなった事を伝えに来たのです」
「え?何言ってるの。目の前にいるじゃない」
「私は祖父の若い頃に生き写しだと言われますし、困惑するのも無理はありません」

 薄暗い森の中だからハッキリ見えてなかったけど、よく見ればガスパールじゃない。声も姿もそっくりだけど、それでも違う。

「逢魔が刻の森は、時の流れが遅いんです。貴女が都を出て、もう50年近く経ちます」
「……嘘よ。そんなの」
「俺は祖父が最期に言い残した事を伝えにきました」
「何?」
「『幸せに生きてほしい。約束を守れなくてすまない』……と」

 約束……
 結婚の約束だよね。
 この子がガスパールの孫なら、誰かと結婚して家庭を築いてたのね。

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