10 / 22
俺の推理
しおりを挟む「ギル、何かわかったのか?」
突然の王子の登場に、庭で警備の指揮をしていた騎士団長ギルバートは、キョトンとしている。
「あれ?殿下…?何故ここへ?」
「お前が呼んだんじゃないのか?」
「何の話ですか、俺は本来貴方の護衛ですが、逃げ回っていたのは殿下の方でしょう。まさか、自ら捕まりにくるなんて、明日槍でも降るんじゃないですか。」
「…お前の上にだけにな。それより…警備中にニコル・アルフォートを見かけたか?」
「さらっと酷い事を…。ニコル様ですね、会ったというか、すれ違いましたよ。『殿下を見つけたら教えてください』って言ったんですが、まさか彼が殿下をここに?さすが侯爵…そんなに睨まなくても……」
「うるさい」
「まったく、逃げてた殿下が悪いんですよ、私のいない時に殿下が襲われでもしたら…ちょっと聞いてますか?」
ギルが何か言っているけど全て無視だ。他に気になる事があったからだ。
俺を見つけた時、ニコル・アルフォートは随分息があがってた。
侯爵子息に言い寄られれば、逃げるような女はここにはいない。もし誰かを探していたとすれば、おそらく俺の目の前にいたあの女だ。
俺がギルのもとへ向かう時何気なく振り返ると、アルフォートが女のいる方に歩いているのを見た。アイリーンはユーリはここにいないと言っていた。だが、それが嘘で忍びこませていたとすれば…兄であるアルフォートが探してたのがユーリである可能性が高い。
「チッ!」
無理にでも振り返らせるんだった。
「殿下、舌打ちとかやめてくれます?私は別に何もしてませんよ。」
この前もそうだ。
アルフォートは大切そうに抱きしめて、俺に顔を見えないようにしていた。あの日、何故か侯爵邸だけ何事もなかった。伯爵は殺され、俺も部屋に来た何者かに殺されかけた。あまりに強く捕まえる事もできず、ヤツは3階の窓から逃げた。
それがあの女に関わりがあるのなら?
だがこれは全て、さっき見た後ろ姿の女がユーリだと仮定しての話だ。何一つとして証拠もない。
アルフォートは俺をみつけてギルのもとへ帰るように伝えに来て、怪我をした女を見て近づいた。ただそれだけかもしれない。
「はぁ…」
「今度はため息ですか、何かあったんですか?」
「別に」
「あ、もしかして好きな人ができた……って冗談です。」
好きな女などてはない。
王族に愛だの恋だの、くだらない感情は必要ない。所詮、国を強固なものにするために結婚し、子供をつくる。仕事のようなものだ。
ただ、もう一度会ってはみたかったのかもしれない。身分にこだわらずに、血をながしてでも大の男に立ち向かっていった娘に。
あの後ろ姿を見た時、気づけば追いかけてしまった自分の行動は、だからなのだろう。
0
あなたにおすすめの小説
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる