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鬱憤
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隣に座るクレアは、約束通り今のところ口を挟まず俺達の話を聞いている。
ヤコブと話をする上で気を付ける事は、公爵家との関係が悪化しないようにする事だけだが、その気遣いすら今日の俺には無理かもしれない。
「そう言えば、子爵には兄がいましたよね」
「もう亡くなったがね」
「後を継いだのが、先代のご子息ではないのは意外ですね。子息は18才だったし、世襲で爵位を継ぐのは彼でしょう。代理も必要ない。何故、爵位を継ぐのが貴方だったんですか?」
「体が弱くてね。病気で仕事が出来る状況ではないんだよ」
「まぁ、そう言う事にしておきましょうか」
「……」
とりあえず、話を本題に戻そう。
「昨日、資材置き場にある木材や土、土手を見てきたのですが、どうも報告とは違う物が使われているようです。どういう事か説明願います」
「これはおかしな事を仰る。資材置き場は、一昨日火事で、全て燃え尽きたのですよ。どこでその資材を見たと仰るのですか?」
「全てが燃え尽きる前に、いくつか運び出しました。それを査定した結果です」
「そんな、嘘か本当か解らない事を言われても困りますな」
「どこで仕入れたのか、こちらには資料があるんですよ。今回の現場視察を邪魔した者は、それと照らし合わせられると困ると思ったのでしょう」
「あの火事は放火だったのですか?」
「ええ」
自分で命令しておいて、わざとらしい。
「その話は今関係ありませんので、広げなくて結構です」
「では、関係のある話とやらをさっさとして下さい。こちらは、ちゃんと報告した通りの材木を買っている。これが台帳ですよ」
何を言われるか予想はしていただろうし、ヤコブもそれなりに用意はしてたか。
「私は何も、報告書に書かれていた木材を買っていないとは言ってないですよ。ただ、使われている物が違うと言っただけです」
「使わない木材を買って、うちに何の得があるというのですか?」
「それを全て王族御用達の問屋に卸してるでしょう」
「そんな事をしていれば、すぐに気付かれますよ」
「だから、こうして気付かれてたんですよ。私にね」
材木の仕入れ先がはっきりしていて良質な物が届いていれば、そこまで疑わない。それに、これが始まったのはここ数年。気づかれないうちに、サッと手を引くつもりだったんだろう。気付かれる事はないと、高を括っていた。
何故気付かれたのか、それが解らない時点で、この男は駄目だな。周りが見えてない。
俺がここへ来た訳が、村人の為だけではないのだと、そろそろ解って貰おうか。
クレアを襲わなければ、少しは手加減してやろうと思っていたのにな。
ヤコブと話をする上で気を付ける事は、公爵家との関係が悪化しないようにする事だけだが、その気遣いすら今日の俺には無理かもしれない。
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「あの火事は放火だったのですか?」
「ええ」
自分で命令しておいて、わざとらしい。
「その話は今関係ありませんので、広げなくて結構です」
「では、関係のある話とやらをさっさとして下さい。こちらは、ちゃんと報告した通りの材木を買っている。これが台帳ですよ」
何を言われるか予想はしていただろうし、ヤコブもそれなりに用意はしてたか。
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「使わない木材を買って、うちに何の得があるというのですか?」
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