伯爵代理なんてやりたくないので、私を捨てた夫を見つけてください。

シンさん

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鬱憤4

「この邸に、私を貶めようとしている者がいると?」
「貶める者ではなく、忠誠心を持つ者ですよ。貴方にではなく、先代とその家族に」

 俺が言い終わるかどうかのうちに、ヤコブは側にいた従者に怒鳴り散らしている。従者は痛くも痒くもないといった感じだ。

「私が持っていた書類がなくても、これがあれば貴方は無事『破滅の道』を歩めますよ」

 従順な振りをして仕事をし、時に煽《おだ》て、完全に味方だと思わせる。そして資料を集め、書類を作成した。これは、使用人達の先代への忠誠とプライドだ。

「そうそう、ローガンを診ていた医師が突然病に伏して亡くなったでしょう。何故だか解りますか?」
「解りませんな」
「ローガンが服用するはずの薬を、医師の食事に入れ続けたからです」
「……っ」
「私が従者の言葉を鵜呑みにする訳がないでしょう。もちろん、確認させて頂きましたよ。医師を変更したりすれば疑っていると気付かれる可能性がある。では、どうやって証明するか。手品の上手な使用人を送り込んで、誰にも気付かれないよう薬をすり替えてた。ローガンの飲んでいたのは、ただの小麦粉ですよ」

 本当に毒なのか確認するために、そう指示した。結果、それが毒だと解ってからも薬を入れる事を止めなかったのだから、俺が医師を殺すよう命じたような物だ。

「種がわかれば、想像以上に簡単でしょう。私が何故この村に目を向けたのか」

 突然、ヤコブの顔が緩んだ。

「……ふふ、ははは……」
「どうしました?」
「いやいや、良く考えれば、リアム様はこの仕事について口出しする権利などありませんな。貴方は伯爵ではない。仕事の内容など知りはしないでしょう。私と対等に仕事の話をしたいのであれば、伯爵を連れて来てからにしてもらいたい」

 思った通りの発言だな。

「ああ、何か勘違いしているようですが、私は代弁しているだけですよ。全ては私の隣にいるハンストン伯爵代理の命令で」
「伯爵代理?」
「はい、紹介したはずですよ。『彼は代理』だと」
「従者の代理だと言っていたでしょう」
「『従者は襲われた』と説明しただけで、従者の代理だとは一言も言ってませんよ」
「……っ」

 ものは言いよう。気付いていれば、もう少しまともに会話していただろう。最終的に俺が何を言っても『ハリーを連れて来い』で終われると思っていたんだろう。ハリーが仕事をしないのは当然のように広まっているんだから。

「では、ここからは代理にお話を進めて頂きましょう」

クレアは目をまん丸にして俺を見た。
……これは、後で絶対に怒られるな。
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