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伯爵家の恥2
お昼に一度、馬車が止まった。
「昼食をとります。それから、貴女は服を全て着替えてください。そんな格好で視察だなんて、伯爵家の恥ですから」
「解りました」
なんて生意気な義弟なの。
馬車に乗ってから『クレア義姉さん』が『貴女』になってるのも気付いてないよね。
といっても、私の方が2つ年下だし、義姉だなんて思えないよね。
私が18才でリアムは20才。
何故最初から彼に後を継がせなかったのかしら。世襲制度でも、理由があれば次男に継がす事が出来ない訳じゃないのに。まぁ、その理由が『好きな女と一緒になりたいから』じゃ、通るわけないよね。
だから、挙式後に駆け落ちっていう選択しか出来なかったわけだし。
「……疲れましたか?」
「いいえ、道は綺麗だし馬車も大きいし、快適よ」
田舎の子爵領とは全然違う。
「私は先に服を着替えますので、リアム様は昼食をどうぞ」
「それなら、貴女も先に昼食を」
「この姿の私は『伯爵家の恥』なのでしょう?一緒に食事などすれば、リアム様の評判も落ちてしまいますわ。どうぞ、お一人で食事を楽しんでください」
個人的に、この人と一緒に食べたくないしね。
リアムがまだ何か言いたそうだったけど、気付かないふりをしてお店に入った。
視察ってどんな物を着ればいいのかしら。侍女はついてるけど、何の助言もしてくれないし……。
まぁ、選ばないなら、選ばせればいいだけの話だけどね。
「この服でいいわ」
私が選んだのは、メイドが着ているような、地味な黒いワンピース。
「こんな物を着て視察だなんて、信じられません。伯爵家の当主の妻という自覚が足りないのではありませんか?」
「そう言うなら、貴女が選びなさい。そもそも、今着ている服も貴女が用意させたものでしょう?リアム様は『伯爵家の恥』と仰っていたわね。貴女も私と同レベルじゃない」
「では、ご自身で選んだ服を着てください」
「ええ、そうするわ。でもいいの?リアム様に失望されるわよ?私の至らないところを補佐するのが貴女の仕事でしょう」
そう言うと、悔しそうな顔をして侍女は服を選んで渡してきた。
ハンストン伯爵家が大切なら、最初からこうすればいいのに。私みたいな田舎者を相手にしたくないという気持ちは解るけど、プライドの方向性を間違えてると思う。
侍女が代金を払っている時に気がついた。
今、私の事を見てる人っていないよね。逃げ出せるかも。ブローチだけは着けているし、これを売れば暫くは暮らしていける。
そっとお店のドアを開けるけど、店員も誰も気付いてない。いける!
「キョロキョロして、何をしているんですか?」
店を出るとリアムがドアの横に立っていた。
「……何故ここに?」
まさか、逃げ出すと予想してた?
「貴女を待っていたんです。一緒に食事をしようと思って」
「そうですか」
よかった。逃亡に気付かれなくて。
「その服……」
「これも駄目ですか?では、着替えてきます」
「いえ、似合っています」
「ありがとうございます」
夫に駆け落ちされた惨めな女だと思ってるくせに、よくもそんな嘘を……。
その後、一緒に食事をとったけど会話は何もないし、何よりリアムは一切笑わない。
黒髪で青い瞳、目鼻立ちがハッキリしていて、背も高い。容姿は素敵だけど、何を考えてるのか掴めない…かなり苦手なタイプ。
多分この人は、結婚に反対だったと思う。
私とハリーの結婚話が進んでも、1度挨拶しただけ。それから昨日の結婚式まで顔を合わせる事もなかった。
ハリーは優しくて人当たりはよかったけど、全てを捨てて女と逃げるような男だし、伯爵家の繁栄もこれまでかもね。
この家って侯爵位がつくられる前からあるんだから、王室と相当関係も深いよね。いつまでも当主不在で通せると思っているのかしら。
面倒な事に巻き込まれる前に、逃げ出さないと。
「昼食をとります。それから、貴女は服を全て着替えてください。そんな格好で視察だなんて、伯爵家の恥ですから」
「解りました」
なんて生意気な義弟なの。
馬車に乗ってから『クレア義姉さん』が『貴女』になってるのも気付いてないよね。
といっても、私の方が2つ年下だし、義姉だなんて思えないよね。
私が18才でリアムは20才。
何故最初から彼に後を継がせなかったのかしら。世襲制度でも、理由があれば次男に継がす事が出来ない訳じゃないのに。まぁ、その理由が『好きな女と一緒になりたいから』じゃ、通るわけないよね。
だから、挙式後に駆け落ちっていう選択しか出来なかったわけだし。
「……疲れましたか?」
「いいえ、道は綺麗だし馬車も大きいし、快適よ」
田舎の子爵領とは全然違う。
「私は先に服を着替えますので、リアム様は昼食をどうぞ」
「それなら、貴女も先に昼食を」
「この姿の私は『伯爵家の恥』なのでしょう?一緒に食事などすれば、リアム様の評判も落ちてしまいますわ。どうぞ、お一人で食事を楽しんでください」
個人的に、この人と一緒に食べたくないしね。
リアムがまだ何か言いたそうだったけど、気付かないふりをしてお店に入った。
視察ってどんな物を着ればいいのかしら。侍女はついてるけど、何の助言もしてくれないし……。
まぁ、選ばないなら、選ばせればいいだけの話だけどね。
「この服でいいわ」
私が選んだのは、メイドが着ているような、地味な黒いワンピース。
「こんな物を着て視察だなんて、信じられません。伯爵家の当主の妻という自覚が足りないのではありませんか?」
「そう言うなら、貴女が選びなさい。そもそも、今着ている服も貴女が用意させたものでしょう?リアム様は『伯爵家の恥』と仰っていたわね。貴女も私と同レベルじゃない」
「では、ご自身で選んだ服を着てください」
「ええ、そうするわ。でもいいの?リアム様に失望されるわよ?私の至らないところを補佐するのが貴女の仕事でしょう」
そう言うと、悔しそうな顔をして侍女は服を選んで渡してきた。
ハンストン伯爵家が大切なら、最初からこうすればいいのに。私みたいな田舎者を相手にしたくないという気持ちは解るけど、プライドの方向性を間違えてると思う。
侍女が代金を払っている時に気がついた。
今、私の事を見てる人っていないよね。逃げ出せるかも。ブローチだけは着けているし、これを売れば暫くは暮らしていける。
そっとお店のドアを開けるけど、店員も誰も気付いてない。いける!
「キョロキョロして、何をしているんですか?」
店を出るとリアムがドアの横に立っていた。
「……何故ここに?」
まさか、逃げ出すと予想してた?
「貴女を待っていたんです。一緒に食事をしようと思って」
「そうですか」
よかった。逃亡に気付かれなくて。
「その服……」
「これも駄目ですか?では、着替えてきます」
「いえ、似合っています」
「ありがとうございます」
夫に駆け落ちされた惨めな女だと思ってるくせに、よくもそんな嘘を……。
その後、一緒に食事をとったけど会話は何もないし、何よりリアムは一切笑わない。
黒髪で青い瞳、目鼻立ちがハッキリしていて、背も高い。容姿は素敵だけど、何を考えてるのか掴めない…かなり苦手なタイプ。
多分この人は、結婚に反対だったと思う。
私とハリーの結婚話が進んでも、1度挨拶しただけ。それから昨日の結婚式まで顔を合わせる事もなかった。
ハリーは優しくて人当たりはよかったけど、全てを捨てて女と逃げるような男だし、伯爵家の繁栄もこれまでかもね。
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面倒な事に巻き込まれる前に、逃げ出さないと。
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