伯爵代理なんてやりたくないので、私を捨てた夫を見つけてください。

シンさん

文字の大きさ
3 / 71

伯爵家の恥2

 お昼に一度、馬車が止まった。

「昼食をとります。それから、貴女は服を全て着替えてください。そんな格好で視察だなんて、伯爵家の恥ですから」
「解りました」

 なんて生意気な義弟なの。
 馬車に乗ってから『クレア義姉さん』が『貴女』になってるのも気付いてないよね。

 といっても、私の方が2つ年下だし、義姉だなんて思えないよね。

 私が18才でリアムは20才。
 何故最初から彼に後を継がせなかったのかしら。世襲制度でも、理由があれば次男に継がす事が出来ない訳じゃないのに。まぁ、その理由が『好きな女と一緒になりたいから』じゃ、通るわけないよね。
 だから、挙式後に駆け落ちっていう選択しか出来なかったわけだし。

「……疲れましたか?」
「いいえ、道は綺麗だし馬車も大きいし、快適よ」

 田舎の子爵領とは全然違う。

「私は先に服を着替えますので、リアム様は昼食をどうぞ」
「それなら、貴女も先に昼食を」
「この姿の私は『伯爵家の恥』なのでしょう?一緒に食事などすれば、リアム様の評判も落ちてしまいますわ。どうぞ、お一人で食事を楽しんでください」

 個人的に、この人と一緒に食べたくないしね。

 リアムがまだ何か言いたそうだったけど、気付かないふりをしてお店に入った。

 視察ってどんな物を着ればいいのかしら。侍女はついてるけど、何の助言もしてくれないし……。
 まぁ、選ばないなら、選ばせればいいだけの話だけどね。

「この服でいいわ」

 私が選んだのは、メイドが着ているような、地味な黒いワンピース。

「こんな物を着て視察だなんて、信じられません。伯爵家の当主の妻という自覚が足りないのではありませんか?」
「そう言うなら、貴女が選びなさい。そもそも、今着ている服も貴女が用意させたものでしょう?リアム様は『伯爵家の恥』と仰っていたわね。貴女も私と同レベルじゃない」
「では、ご自身で選んだ服を着てください」
「ええ、そうするわ。でもいいの?リアム様に失望されるわよ?私の至らないところを補佐するのが貴女の仕事でしょう」

 そう言うと、悔しそうな顔をして侍女は服を選んで渡してきた。

 ハンストン伯爵家が大切なら、最初からこうすればいいのに。私みたいな田舎者を相手にしたくないという気持ちは解るけど、プライドの方向性を間違えてると思う。

 侍女が代金を払っている時に気がついた。

 今、私の事を見てる人っていないよね。逃げ出せるかも。ブローチだけは着けているし、これを売れば暫くは暮らしていける。

 そっとお店のドアを開けるけど、店員も誰も気付いてない。いける!

「キョロキョロして、何をしているんですか?」

 店を出るとリアムがドアの横に立っていた。

「……何故ここに?」

 まさか、逃げ出すと予想してた?

「貴女を待っていたんです。一緒に食事をしようと思って」
「そうですか」

 よかった。逃亡に気付かれなくて。

「その服……」
「これも駄目ですか?では、着替えてきます」
「いえ、似合っています」
「ありがとうございます」

 夫に駆け落ちされた惨めな女だと思ってるくせに、よくもそんな嘘を……。

 その後、一緒に食事をとったけど会話は何もないし、何よりリアムは一切笑わない。

 黒髪で青い瞳、目鼻立ちがハッキリしていて、背も高い。容姿は素敵だけど、何を考えてるのか掴めない…かなり苦手なタイプ。

 多分この人は、結婚に反対だったと思う。
私とハリーの結婚話が進んでも、1度挨拶しただけ。それから昨日の結婚式まで顔を合わせる事もなかった。
 ハリーは優しくて人当たりはよかったけど、全てを捨てて女と逃げるような男だし、伯爵家の繁栄もこれまでかもね。

 この家って侯爵位がつくられる前からあるんだから、王室と相当関係も深いよね。いつまでも当主不在で通せると思っているのかしら。

 面倒な事に巻き込まれる前に、逃げ出さないと。
感想 0

あなたにおすすめの小説

【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!

月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、 花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。 姻族全員大騒ぎとなった

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

政略結婚の意味、理解してますか。

章槻雅希
ファンタジー
エスタファドル伯爵家の令嬢マグノリアは王命でオルガサン侯爵家嫡男ペルデルと結婚する。ダメな貴族の見本のようなオルガサン侯爵家立て直しが表向きの理由である。しかし、命を下した国王の狙いはオルガサン家の取り潰しだった。 マグノリアは仄かな恋心を封印し、政略結婚をする。裏のある結婚生活に楽しみを見出しながら。 全21話完結・予約投稿済み。 『小説家になろう』(以下、敬称略)・『アルファポリス』・『pixiv』・自サイトに重複投稿。

学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜

織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。 侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。 学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。

政略結婚で「新興国の王女のくせに」と馬鹿にされたので反撃します

nanahi
恋愛
政略結婚により新興国クリューガーから因習漂う隣国に嫁いだ王女イーリス。王宮に上がったその日から「子爵上がりの王が作った新興国風情が」と揶揄される。さらに側妃の陰謀で王との夜も邪魔され続け、次第に身の危険を感じるようになる。 イーリスが邪険にされる理由は父が王と交わした婚姻の条件にあった。財政難で困窮している隣国の王は巨万の富を得たイーリスの父の財に目をつけ、婚姻を打診してきたのだ。資金援助と引き換えに父が提示した条件がこれだ。 「娘イーリスが王子を産んだ場合、その子を王太子とすること」 すでに二人の側妃の間にそれぞれ王子がいるにも関わらずだ。こうしてイーリスの輿入れは王宮に波乱をもたらすことになる。

白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする

夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、 ……つもりだった。 夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。 「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」 そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。 「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」 女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。 ※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。 ヘンリック(王太子)が主役となります。 また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。

【完結】結婚前から愛人を囲う男の種などいりません!

つくも茄子
ファンタジー
伯爵令嬢のフアナは、結婚式の一ヶ月前に婚約者の恋人から「私達愛し合っているから婚約を破棄しろ」と怒鳴り込まれた。この赤毛の女性は誰?え?婚約者のジョアンの恋人?初耳です。ジョアンとは従兄妹同士の幼馴染。ジョアンの父親である侯爵はフアナの伯父でもあった。怒り心頭の伯父。されどフアナは夫に愛人がいても一向に構わない。というよりも、結婚一ヶ月前に破棄など常識に考えて無理である。無事に結婚は済ませたものの、夫は新妻を蔑ろにする。何か勘違いしているようですが、伯爵家の世継ぎは私から生まれた子供がなるんですよ?父親?別に書類上の夫である必要はありません。そんな、フアナに最高の「種」がやってきた。 他サイトにも公開中。