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会話術
その日の夕食にはワインが出てきた。
「私は飲めませんが」……そう言って、リアムがグラスにワインを注いでくれる。
それは別にいいの。問題は、正面に座るリアムが、私にワインを注げる程の距離にいる事。
「リアム様、テーブルがとても小さくなった気がするのですが、何故でしょうか?」
「食事をとるのは俺達2人だけですから、大きいテーブルは必要ないかと。それに、近い方が話しやすいですから」
普通の家庭ならそれでいいと思う。けどここは、由緒正しい伯爵邸。来客もあるはずだし、食事会みたいな物もあると思うんだよね。なのに、そんな簡単な理由で、小さな正方形のテーブルにしてもいいのかしら。
「気に入りませんでしたか?」
「いえ、そんな事はありません」
リアムの機嫌を損ねたら、好きな女性を教えてくれない可能性があるし、これ以上は言わないでおこう。
「クレアの好きな食べ物は何ですか?」
「……トマト…デス」
クレアって呼び捨てにするのは、2人きりの時って約束だよね。給仕や壁際に控えてる使用人がびっくりしてるじゃない!
「リアム様、名前を呼ぶのであれば敬称は付けて頂きたいわ」
「外出先ではそうします」
外出先では…って、約束が違うでしょ!何を考えているのか解らないけど、この人のペースに流されないようにしないと。
「リアム様のお好きな食べ物は何ですか?」
「……」
ん?何故答えないのかしら。
「リアム様?」
「すみません。特にこれと言って好きな物はなくて」
話を振ってきたのだから、自分も聞かれるってわかるよね。会話を続けたいなら、もう少し考えようよ!
「では、嫌いな食べ物はないのですか?」
「ブルーチーズが苦手です」
「あれは好みが大きく分かれる食品ですよね。私も苦手です」
「お揃いですね」
「ええ」
「……」
「……」
会話が続かない。
リアムは会話下手だと思っていたけど、私も同レベルだわ。伯爵代理として、リアムの愛する女性(既婚者)を懐柔しなくてはいけないのに、これじゃ駄目だわ。
何とかしないと!
次の日……
「奥様、こちらが本日のお召し物です」
視察用の服をイエナが用意しているけど、どう見ても男物なんだよね……。
18才の女に上下黒のスーツに棒タイって、どういうつもりなの。いくら私がこの家で大切にされていない存在だとしても、視察に行くのだからこれは駄目でしょ。
「伯爵夫人に男装癖があると思わせたいの?」
「リアム様の希望です」
「リアム様の?」
「はい。仕事を順調に進めるために、この服を選んでおります。」
「この服は仕事の為なのね?」
「はい、詳しくはリアム様から説明があるかと思いますので」
「そう」
良かった。リアムが変な癖の持ち主だったら、『既婚女性を離婚させてリアムと再婚させる』という案を考え直さないといけなくなるところよ。
自分が幸せになる為に、他の女性を更に不幸にしていいわけない。ここでそれをしてしまったら、私の父親やハリーと同じように、私もクズの一員になってしまうもの。
「くるしぃ……」
男装をするのはいいけれど、胸をサラシを巻くくらい本格的にするなんて。
「クレア様の体は、男装に向いてますね」
「……」
それって、女に対しての褒め言葉ではないよね。
コンコン
ちょうど着替えが終わった時、リアムが部屋に来た。
「お似合いですね」
「ええ、私は栗みたいな髪型ですから、貴婦人には見えないと思いますし」
「栗みたいな……、そこから『マロンちゃん』という名前になったんですね」
「ええ」
由来を聞いてないなんて、どれだけ私に興味がないの……。
「これを着て、私は何をすればいいのでしょうか?」
「今から行く町は裕福だとは言い難いので、女性である事を隠していた方がいいかと……。いつどこで誰が見てるかわかりませんから、初日から男装してください」
綺麗な服を着て女性が歩いているだけで、拐われる可能性があるくらい危ないって事だよね。それなら、私が行かない方が仕事がスムーズに進むと思うけど、何か他に思惑があるのかしら。
「さ、行きましょう。川の近辺の町はここから近くはないんだし」
3日かけて川辺の町へ行く、その2日目にまさか連れ去られる事になんて。男装した私じゃなく、リアムが……。
「私は飲めませんが」……そう言って、リアムがグラスにワインを注いでくれる。
それは別にいいの。問題は、正面に座るリアムが、私にワインを注げる程の距離にいる事。
「リアム様、テーブルがとても小さくなった気がするのですが、何故でしょうか?」
「食事をとるのは俺達2人だけですから、大きいテーブルは必要ないかと。それに、近い方が話しやすいですから」
普通の家庭ならそれでいいと思う。けどここは、由緒正しい伯爵邸。来客もあるはずだし、食事会みたいな物もあると思うんだよね。なのに、そんな簡単な理由で、小さな正方形のテーブルにしてもいいのかしら。
「気に入りませんでしたか?」
「いえ、そんな事はありません」
リアムの機嫌を損ねたら、好きな女性を教えてくれない可能性があるし、これ以上は言わないでおこう。
「クレアの好きな食べ物は何ですか?」
「……トマト…デス」
クレアって呼び捨てにするのは、2人きりの時って約束だよね。給仕や壁際に控えてる使用人がびっくりしてるじゃない!
「リアム様、名前を呼ぶのであれば敬称は付けて頂きたいわ」
「外出先ではそうします」
外出先では…って、約束が違うでしょ!何を考えているのか解らないけど、この人のペースに流されないようにしないと。
「リアム様のお好きな食べ物は何ですか?」
「……」
ん?何故答えないのかしら。
「リアム様?」
「すみません。特にこれと言って好きな物はなくて」
話を振ってきたのだから、自分も聞かれるってわかるよね。会話を続けたいなら、もう少し考えようよ!
「では、嫌いな食べ物はないのですか?」
「ブルーチーズが苦手です」
「あれは好みが大きく分かれる食品ですよね。私も苦手です」
「お揃いですね」
「ええ」
「……」
「……」
会話が続かない。
リアムは会話下手だと思っていたけど、私も同レベルだわ。伯爵代理として、リアムの愛する女性(既婚者)を懐柔しなくてはいけないのに、これじゃ駄目だわ。
何とかしないと!
次の日……
「奥様、こちらが本日のお召し物です」
視察用の服をイエナが用意しているけど、どう見ても男物なんだよね……。
18才の女に上下黒のスーツに棒タイって、どういうつもりなの。いくら私がこの家で大切にされていない存在だとしても、視察に行くのだからこれは駄目でしょ。
「伯爵夫人に男装癖があると思わせたいの?」
「リアム様の希望です」
「リアム様の?」
「はい。仕事を順調に進めるために、この服を選んでおります。」
「この服は仕事の為なのね?」
「はい、詳しくはリアム様から説明があるかと思いますので」
「そう」
良かった。リアムが変な癖の持ち主だったら、『既婚女性を離婚させてリアムと再婚させる』という案を考え直さないといけなくなるところよ。
自分が幸せになる為に、他の女性を更に不幸にしていいわけない。ここでそれをしてしまったら、私の父親やハリーと同じように、私もクズの一員になってしまうもの。
「くるしぃ……」
男装をするのはいいけれど、胸をサラシを巻くくらい本格的にするなんて。
「クレア様の体は、男装に向いてますね」
「……」
それって、女に対しての褒め言葉ではないよね。
コンコン
ちょうど着替えが終わった時、リアムが部屋に来た。
「お似合いですね」
「ええ、私は栗みたいな髪型ですから、貴婦人には見えないと思いますし」
「栗みたいな……、そこから『マロンちゃん』という名前になったんですね」
「ええ」
由来を聞いてないなんて、どれだけ私に興味がないの……。
「これを着て、私は何をすればいいのでしょうか?」
「今から行く町は裕福だとは言い難いので、女性である事を隠していた方がいいかと……。いつどこで誰が見てるかわかりませんから、初日から男装してください」
綺麗な服を着て女性が歩いているだけで、拐われる可能性があるくらい危ないって事だよね。それなら、私が行かない方が仕事がスムーズに進むと思うけど、何か他に思惑があるのかしら。
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