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リアム奪還作戦
暫く馬を走らせていると、海沿いの町に出た。
「少し休憩します。馬も休ませる必要があるので」
「うん」
リアムが問題視するほど、この町は荒廃していないわね。
「氾濫するのは、この海に流れ込む川?」
「そうです。ペイレスはその川沿いにある村です」
「それなら、今回のリアム様の誘拐は、視察の内容と関係があるのかしら」
「おそらく…。更に面倒な事に、ヤコブはハンストン伯爵家と対立しているフィンネル公爵家の血族です」
「対立しているなら、どうして関わり合う仕事をさせるの」
「仕事を選べる訳ではありませんから」
仕事とプライベートは別なのね。
「ねぇ、既にリアム様が殺されている可能性はある?」
「目的が殺しなのであれば、連れ去りはしないと思います。ですが、ヤコブの前に連れて行かれる前に奪還出来なければ、どうなるかは……」
はっきり『殺されない』と言い切らないのだから、殺されるって事だよね。
「クレア様、地図で確認した所、この町からペイレスまで馬車が通れる道は1本しかありません。相手はリアム様を連れているので馬車だという事を考慮すれば、こちらは馬を速足で進めれば追いつくのは可能かと」
「追いついたとしても、どうやってリアム様を奪い返すかが問題よね」
「はい」
私は戦ったりは出来ないから、別の方法を考えるしかない。けど、襲ってくる相手に立ち向かうのに、そんな事は言っていられないよね。……前途多難。
「作戦は追い付いてから考えましょう。」
30分ほど休憩して、私達は町を出た。
1時間毎に馬を休憩させて、その間に情報収集。ペイレスという村に近付くにつれて、道は荒れてるし、食べ物が並ぶテントもボロボロ。村人が着ている服もヨレヨレだわ。
血で黒く染まった軍服と、お金持ちの栗頭少年はとても目立つみたい。これで女性の格好なら、もっとだよね。
リアムが私を心配していた理由がわかった。
「ねぇ、おじさん。この道を走る馬車を見かけなかった?」
「さぁね」
果物を売ってるおじさんに聞いても、面倒臭そうにあしらわれた。
まぁ、予想した通りの反応。いつもの私なら気にしないけれど、今は状況が違うのよ。
このおじさんが口をつぐむ理由は、簡単に想像がつくのよね。
ここの住民はおもに農家。
川辺に畑を作る事はないはずだし、川の氾濫だけでここまで貧しくはならないはず。この生活を強いられてるのは、課せられた税が高いのよ。そして、ヤコブにそれを訴えても聞き入れて貰えなかった。訴えた事で、より一層酷い扱いを受けた。
村の内情を答えたら酷い目にあう。だから、助けてくれとも言えないし、知らないフリをする。
「おじさん、わた……僕はヤコブの手下じゃないよ。」
「……」
「信じられないかもしれないけど、王子からの命を受けて、ここに視察に来たんだ」
「……」
もしヤコブの手下だったらって、そんな不安があるのも当然だよね。
ここは、真摯に向き合うのが得策だわ。
「失礼、名乗らず信じて貰おうなんて、都合が良すぎましたね。僕は、マロン。マロン・ハンストンです。」
マロンなんて名乗るのは恥ずかしいけど、私が女だと気付かれると困るしね。
「ハンストン…?」
「ああ」
名乗った所で、貴族の名前なんて知らないよね。名が武器になるのは、相手が伯爵家の名を知っている場合だけだわ。
「もしかして、リアム様の知り合い…?」
え?
「……兄をご存知ですか?」
「ここ数年、この村を支援してくれる人です」
リアムは随分前から、村の異変に気付いていたのね。支援するのは素晴らしい事だけど、本名を出すなんて馬鹿なのかしら。この視察で目を付けられたのは、援助がバレていたからだわ。
違和感はあったのよね。
私達が視察に来ても、誤魔化してやり過ごす方がリスクは少ない。なのに、わざわざ襲って来たんだもの。リアムを殺さず連れ去った事に何の意味があるのかは解らないけど、絶対に奪還するわ。
「彼女の服に付いた血を見ればわかると思いますが、ここに来る途中、僕達は襲われたんです。リアム兄さんは、連れ去られました」
「リアム様が……」
リアムを知っているなら、ヤコブの仲間じゃないと納得はして貰える。上手くいけば、リアムを救う手助けをしてくれる可能性だってあるわ。
「僕と兄さんが必ずヤコブの不正を暴いてみせる。だから、この道を通った馬車の台数と特徴、それを教えてくれないか」
「少し休憩します。馬も休ませる必要があるので」
「うん」
リアムが問題視するほど、この町は荒廃していないわね。
「氾濫するのは、この海に流れ込む川?」
「そうです。ペイレスはその川沿いにある村です」
「それなら、今回のリアム様の誘拐は、視察の内容と関係があるのかしら」
「おそらく…。更に面倒な事に、ヤコブはハンストン伯爵家と対立しているフィンネル公爵家の血族です」
「対立しているなら、どうして関わり合う仕事をさせるの」
「仕事を選べる訳ではありませんから」
仕事とプライベートは別なのね。
「ねぇ、既にリアム様が殺されている可能性はある?」
「目的が殺しなのであれば、連れ去りはしないと思います。ですが、ヤコブの前に連れて行かれる前に奪還出来なければ、どうなるかは……」
はっきり『殺されない』と言い切らないのだから、殺されるって事だよね。
「クレア様、地図で確認した所、この町からペイレスまで馬車が通れる道は1本しかありません。相手はリアム様を連れているので馬車だという事を考慮すれば、こちらは馬を速足で進めれば追いつくのは可能かと」
「追いついたとしても、どうやってリアム様を奪い返すかが問題よね」
「はい」
私は戦ったりは出来ないから、別の方法を考えるしかない。けど、襲ってくる相手に立ち向かうのに、そんな事は言っていられないよね。……前途多難。
「作戦は追い付いてから考えましょう。」
30分ほど休憩して、私達は町を出た。
1時間毎に馬を休憩させて、その間に情報収集。ペイレスという村に近付くにつれて、道は荒れてるし、食べ物が並ぶテントもボロボロ。村人が着ている服もヨレヨレだわ。
血で黒く染まった軍服と、お金持ちの栗頭少年はとても目立つみたい。これで女性の格好なら、もっとだよね。
リアムが私を心配していた理由がわかった。
「ねぇ、おじさん。この道を走る馬車を見かけなかった?」
「さぁね」
果物を売ってるおじさんに聞いても、面倒臭そうにあしらわれた。
まぁ、予想した通りの反応。いつもの私なら気にしないけれど、今は状況が違うのよ。
このおじさんが口をつぐむ理由は、簡単に想像がつくのよね。
ここの住民はおもに農家。
川辺に畑を作る事はないはずだし、川の氾濫だけでここまで貧しくはならないはず。この生活を強いられてるのは、課せられた税が高いのよ。そして、ヤコブにそれを訴えても聞き入れて貰えなかった。訴えた事で、より一層酷い扱いを受けた。
村の内情を答えたら酷い目にあう。だから、助けてくれとも言えないし、知らないフリをする。
「おじさん、わた……僕はヤコブの手下じゃないよ。」
「……」
「信じられないかもしれないけど、王子からの命を受けて、ここに視察に来たんだ」
「……」
もしヤコブの手下だったらって、そんな不安があるのも当然だよね。
ここは、真摯に向き合うのが得策だわ。
「失礼、名乗らず信じて貰おうなんて、都合が良すぎましたね。僕は、マロン。マロン・ハンストンです。」
マロンなんて名乗るのは恥ずかしいけど、私が女だと気付かれると困るしね。
「ハンストン…?」
「ああ」
名乗った所で、貴族の名前なんて知らないよね。名が武器になるのは、相手が伯爵家の名を知っている場合だけだわ。
「もしかして、リアム様の知り合い…?」
え?
「……兄をご存知ですか?」
「ここ数年、この村を支援してくれる人です」
リアムは随分前から、村の異変に気付いていたのね。支援するのは素晴らしい事だけど、本名を出すなんて馬鹿なのかしら。この視察で目を付けられたのは、援助がバレていたからだわ。
違和感はあったのよね。
私達が視察に来ても、誤魔化してやり過ごす方がリスクは少ない。なのに、わざわざ襲って来たんだもの。リアムを殺さず連れ去った事に何の意味があるのかは解らないけど、絶対に奪還するわ。
「彼女の服に付いた血を見ればわかると思いますが、ここに来る途中、僕達は襲われたんです。リアム兄さんは、連れ去られました」
「リアム様が……」
リアムを知っているなら、ヤコブの仲間じゃないと納得はして貰える。上手くいけば、リアムを救う手助けをしてくれる可能性だってあるわ。
「僕と兄さんが必ずヤコブの不正を暴いてみせる。だから、この道を通った馬車の台数と特徴、それを教えてくれないか」
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