伯爵代理なんてやりたくないので、私を捨てた夫を見つけてください。

シンさん

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リアム奪還作戦2

「今日ここを通った馬車は2台だ。誰の馬車かは知らない」
「時間はわかる?おおよそでいいから」
「午前中に1台と、30分ほど前に1台……」
「それだ!」

馬車で30分なら追いつけるわ。

「店主、もう1つ質問がある」

 今まで私の隣で黙っていたイエナが、おじさんに話しかけた。

「ヤコブの手下が誰だか知らないか?」
「……セルバとその一味だ」
「それは、日に焼けた髭面で、頰に傷がある男か?」
「そうだ」
「人数は?」
「20人前後」
「そいつらに行きつけの店はあるか?」
「領主の邸までに1軒、酒場がある。端から見れば気の良い男の営む普通の酒場だが、そこが奴等の溜まり場になってる」

 溜まり場で休憩してる可能性はあるよね。

「情報ありがとう!」

 あとは手助けして貰えるように、上手く村人のモチベーションを上げるだけよ!

「店主、村人を集めろ。リアム様を助けるのに手を貸せ」
「っイエナ!!」

 頼むにしても、言い方ってあるでしょ!!
 この人達は軍人ではないんだから、威圧的に命令されたら怖がってしまうわ。

「すまない。これは命令じゃない。だけど、兄さんを助けたい。手を貸してくれないか?」

 命を賭けてくれと言ってるのと同じだもの、簡単ではないよね。

「セルバの首をはねる事は、僕が王子に報告すればいつでも出来る。けど、ヤコブからこの領土を取り上げるには、リアム兄さんが国王陛下に直接伝えなければ出来ないんだ。」
「リアム様は国王陛下の知り合い?」
「そうだよ。僕では直接話は出来ないけど、リアム兄さんなら出来るんだ!」

 王子のコネを使えば、時間を割いて会わせてもらえると思う!……多分。

「反乱を起こすのは怖いと思う。けど、一緒に戦ってほしい。僕とイエナだけでは勝てないから」

 私とイエナが頭を下げて頼んでいると、お爺さんが話しかけて来た。

「手を貸しても構わんが、その後わしらの生活は誰が保証してくれるんじゃ?」

 この人が何者なのかは知らないけれど、この流れに乗るしかない。

「我がハンストン伯爵家が、この村が復興するまで支援を続けると約束します。借金がある家庭は全てうちが払うので、後で申し出てください」
「いいじゃろう。手を貸してやる」
「ありがとう!……死人がでないとは言えないし、僕も貴方達も生きて帰れると約束出来ないけど、それでもいい?」
「ああ、どうせこのままじゃ、冬を越せるかわからんしな」

 そこまで追い詰められてるなんて、想像もしなかったわ。視察を面倒だと思っていた自分が恥ずかしい。

「お互い、目的の為に頑張りましょう」
「ああ」
「イエナ、僕らは先に行こう」
「待ってください。まず、着替えましょう。ここまで来れば追いつけない距離ではないので、ここからは正体に気付かれないよう気を配るべきです」

 イエナの血のついた軍服と、私の金持ちのお坊ちゃん丸出しの身形だと、リアムの仲間だとすぐに気付かれるよね。

 私達は村人に服を借りてから、一足先に酒場へ向かった。

 村人達が後から来てくれるかどうか不安はあるけど、信じるしかないよね。

「クレア様、酒場には私一人で乗り込みます。恐らく戦う事になるので」
「いいえ、今回は私も戦うわ」
「クレア様が敵う相手ではありません」
「それは戦い方によるでしょう」
「何か作戦でも?」
「うん。あっ!酒場ってあれね」
「……見えるんですか?」
「ええ。私、視力だけはいいから。馬車が止まっているわ。見張りらしき男が2人、1人は馬車のすぐ側、もう1人は入口よ」

 わざわざ見張りを立てているのだから、リアムがいるのは確実だわ。

「先ず見張りと馬を殺します。馬車を使えなくすれば、奴らの移動手段は足だけ。それなら村人も追いつけますから」
「うん」

 馬に罪はないけど、今はそれが最善策だよね。もしリアムが殺されたら、何万といるハンストンの領民が困るのだから、割り切らないと。


 少し離れた所に馬を繋いで、草に隠れて酒場へ向かう途中、私はイエナに作戦を伝えた。かなり危険な役を任せる事になるけど、今はそれしかないわ。

 酒場に着いてからは、私とイエナは別行動。

「おじさん、水と何かお勧めの食べ物ちょうだい」
「はいよ」

 店内には男が3人いるだけで、顔に傷のある男はいない。予想通り、奥に一般客が入れない部屋があるのね。イエナが裏口から突入するから、私は出来るだけここで客を足止めしないと。

「ところであんた、金はあるのかい?」

 店に入る前に、髪はわざとボサボサにしてるし、服はツギハギだらけのヨレヨレのボロボロだもの、その質問は当たり前よね。

「ううん、全く。だから、今から稼いでもいい?」
「どうやって?」
「あのガラの悪そうなおじさん達から貰うんだ。僕、凄く強いから」
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