伯爵代理なんてやりたくないので、私を捨てた夫を見つけてください。

シンさん

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貧乏人2

 私は腰紐に結んである革の袋から金貨を1枚取り出して、男に見せた。

「残り49枚は、貴方にではなく村長に見せるわ」
「ハッ!どうせそれ1枚しか持ってないくせに、偉そうにしてんじゃねぇ」
「『1枚しか』……ね。その言い方だと、あなたは金貨1枚くらい、余裕で持っているのね?」
「なんだと……?」
「そういう事でしょう?私達を貧乏人と見下して対等に話てくれないのだから、少なくとも私よりお金を持っていなければ筋が通らないわ」
「うるせぇ!別の村に行け!俺達に集るな!」

 たかる……?

「村長、ペイレスの村民はこの村の人達に何かしたんですか?」
「一度だけ、食い物を分けてほしいと頼んだ」
「それ以上の事はしていないんですよね?」
「ああ」

 お互いに逼迫ひっぱくしてる状況なら、簡単に均衡が崩れてしまっても不思議じゃないよね。
 きっと、村人達は心底嫌い合ってるわけじゃない。貧しいから、他人を思いやる余裕がないだけなのよ。

 ……なんだな嫌になるわ。
 結局、全てヤコブが元凶だよね。……そうじゃない。管理が行き届かなかったのだから、私達のせいでもある。

「金貨50枚、この袋に入っているわ。確認して」

 私は男の手を取って、そこに革袋を乗せた。

「それだけのお金があれば、ペイレスの村人達を一ヶ月くらい養う事は出来るでしょう?」
「……」

 この村の人も消火活動に出ているだろうし、そんな時に大量に人を入れるのは不安だと思う。けど、ペイレスの村人達は他の村に移動する体力はもうないわ。

「恐らく鎮火は間に合わない。風下のペイレスは焼けてなくなる。風向きが変われば、この村もね」
「……」
「もしこの村が無くなったら、あなた達はどうやって生きていくの?自分達は他村の人を追い出すのに、隣の村の人達があなた達を受け入れてくれると思う?」
「……」
「お願い、村長と話をさせて」

 話し合わないと、何も始まらない。

「……ついて来い」

男はボソッと呟いて、私達を村に入れてくれた。

「あの袋に、本当に金貨が入っとるのか?」
「うん、目的があってお兄様が持ってきていたみたい」
「金持ちじゃな……」

 本当にね……。
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