侯爵夫人は子育て要員でした。

シンさん

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「明日は山小屋に逆戻りかしら…。」
「多分ね。私は少し用があるから、また後でね。」
「絶対この部屋に戻ってきてね!」

ここはハッキリ言って敵地だもの…。

「わかってる。ほんの少しよ。」

クスクス笑いながらミランダが静かに扉を閉めた。

窓から見える星は小さい。同じものでも空気が違えば同じに見えないのね…。


そんな事を考えているとコンコンとノックの音がした。

「ミランダ?今出ていったばかりなのに早い……何かご用ですか?」

扉を開けると目の前にいたのはトーマ。

「話がある。中に入ってもいいか?」
「…いいですが、すぐにミランダが帰ってきますので端的にお願いします。」

話しているのを誰かに見られたり聞かれたりするのは嫌なので、仕方なく部屋にトーマを入れた。

「明日からまた小屋に戻ってもらう。」
「言われなくても。用件はそれだけですか?」
「妻として守ってもらう事を書いておいた。俺からの契約書だ。明日出ていく前にマイセンに渡せ。それだけだ。」

トーマは私に2枚紙を渡して、すぐに部屋を出ていった。

書かれていた内容。

1.ラッセン家が招待された行事には必ず同行する事。

2.この邸に帰って来て数日後から食事は共にする事。

3.出かける時は、誰と何処へ行くか告げてから行く事。

4.ルーナの実の両親と懇意にしていた者が誰なのかおしえる事。

5.離縁について決定するのは、出産から1年後。それをミランダにいいきかせる事。

6.俺に敬語は使わない事。

7.必ずトーマと呼べ。

 
さらりと7項目。

…何よこれ。
こんなに上からものを言える立場だと思ってるのかしら。
離縁の決定を確実に1年後にする気?そんなの冗談じゃないわ。

『6と7は守るけど、他は全て守るつもりはありません。』

用紙にはこう書いて、翌朝マイセンさんに渡した。


邸を出る時も妊婦に変装。

「奥様、お気をつけくださいね。」
「赤ちゃんを連れて帰ってくるのを楽しみにしております!」

「うん、ありがとう…。行ってくるね。」

みんな嬉しそうに私を見送ってくれた。
私が本当に妊娠してると思っているんだよね…。心配されると少し後ろめたいわ…。

「殆んど偽装は知らないのね…。」

「いいじゃない。そのうち『愛人との子でした。』って解った時の使用人達の顔を見られる日が来るかもしれないわよ。」

馬車の中、マイセンさんに聞こえるようにミランダがわざとらしく言った。
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