侯爵夫人は子育て要員でした。

シンさん

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ミランダへ2

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エミリーの部屋に行くと、私の顔を見たとたんにエリーゼが帰ると言い出した。

「気分が悪いから、私は帰るわ。」
「そうですか。無理はよくないので是非お帰りください。」

私が返すと、エリーゼにまたしてもめちゃくちゃ睨まれた。
何とかして私を悔しがらせたいんだろうけど、ベクトルが間違ってるのよね。

面倒な人が帰れば私は喜ぶし、それがわからないのかしら。

一応馬車まで見送ったけど、私とは一言も口をきかないし目も合わせない。……この人精神年齢はいくつなの。

「トーマ、今から仕事?少し2人で話をしたいのだけど。」
「わかった。なら俺の部屋で。」
「ええ。」

どうしても言いたい事があるのよ。


トーマの部屋で、ソファーに向かい合って座る。2人きりだし聞き耳を立ててる人はいないと思うけど、出来るだけ声を小さくして話した。

「貴方、馬鹿なの?」
「は?」
「妻が昨日1人で王都から帰って来てるのに、次の日の朝に女を連れて帰ってくるなんて。」
「用があるから連れてきたと理解するだろ。」
「だから、『用』が『エミリーに会わせるだけ』じゃおかしいの。出産のお祝いの言葉もない、私への態度も悪い。そんな女を当主が連れて帰ってくれば、勘ぐられるでしょう。いくら私が頑張っても、使用人の口に戸は立てられないのよ。」
「解ってる。」

解ってないから私に何度も同じような事を言われてるのよ。離縁後の私への迷惑にならないように少しは考えなさいよ。…道具の私に対して思いやりなんて持ち合わせてないわね。

「今日は仕事は終わりなの?」
「いや、15時に人と会ってから、その足で王都へ向かう予定だ。明日から3日間は帰ってこれない。」
「まさか、エリーゼを連れてくる為に無理して帰って来たの…?」
「違う。明日王都で仕事があるとわかってたら、今日人と会う約束なんてしていない。」
「召集?」
「そんなとこだ。」
「この邸の事は私に任せて、しっかり御仕事してきてね!」
「…やけに嬉しそうだな。」

嬉しいのよ。

「夫のお仕事を応援するのも妻のつとめよ。」

トーマがいない間はエリーゼも来ないし、面倒な事にならない、イライラしない。最高だわ。

「そうだ、時間がある時にイーサンに正しいチェスのルールを教えてあげてね。トーマに遊んでもらいたがってるし。」
「さっき駒に石を投げてたのは何だ?」
「あれは投石のコントロールの修行よ…。」
「……」
「何か言いなさいよ。」
「…何年修行したら1擊でキングを落とせるようになるんだ。百発百中で。」
「まさか、ずっと見てたの?」
「ノックはした。気のがつかない方がおかしい。…病弱なルーナ・ラッセンの面影もなかったぞ。」

そうだったわ。私は病弱設定。
弱々しい動きをしないと。
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