侯爵夫人は子育て要員でした。

シンさん

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トーマオジサンの兄ちゃん3

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「マーフィー様、ぜひ娘のエミリーを見てください。」

とりあえず、態勢を立て直すのよ。この話を続けられたくないもの。

「うん、そうさせて貰おうかな。」
「どうぞ、こちらです。」

せっかく部屋に案内したけれど、エミリーはお腹がいっぱいでスヤスヤ寝ていた。

「…私達がお昼を食べた後でもいいですか?」
「ふふ、そうしよう、起こしたら可哀想だしね。」

作戦失敗…。
結局私達は、今来た廊下を引き返した。


客間には私達4人、それからドアの横にひっそりとマイセンさんが立っている。

「マーフィー様。お茶、お酒、白湯を用意してますが、何をお飲みになりますか?」

マーフィー隊長は紅茶が苦手で、いつも白湯を飲んでるらしい。けれど侯爵邸で客人に白湯を出すなんて、本人からの希望がなければさすがに出来ない。かといって、飲めないものも出せないので、素直に聞く事にした。

「お昼からお酒を飲んでも差し支えなければ、ブランデーも用意してありますので召し上がり下さい。」

この親子はザルらしくて、どれだけ飲んでも酔わない…とミランダからは聞いているけれど、それでも一応トーマは確認している。休みだとしても緊急事態は起こるし、当然よね。

「気を使わせてしまったね。では、お言葉に甘えてブランデーを。」
「はい。すぐに用意しますね。」

会話を聞いていたマイセンさんは、指示するまでもなく『ご用意しますのでお待ち下さい。』と綺麗に頭を下げて部屋を出ていった。


私はアルコールは得意じゃないので、マーフィー様が持ってきてくれた葡萄のジュースを飲む事にした。

「珍しいですね、白葡萄のジュースだなんて。」
「うちの国ではあまり出回ってないかな。アッサリしてて飲みやすいよ。」

少し口に含むと、渋みがなくて本当に飲みやすい。

「美味しい。」
「それは良かった。ところで、ルーナ。産後はどう?もう具合は大丈夫?」
「はい。もうかなり回復しています。」

「それは良かったね。母親は元気なのが一番だよ。」
「はい。」

ランスロット様もマーフィー隊長も心配してくれてる。嘘をつくのは心苦しいわ。

「そういえば侯爵、ルーナが辺境伯と一悶着あったと聞いたけど、大丈夫だったかい?」
「少し口論になった程度で、大した事はありません。ね、ルーナ。」
「はい。」

銃を向けられたなんて絶対に言えないわ。

「ルーナ、これからは辺境伯にはかかわらないようにね。」

マーフィー隊長の言い方は優しいけど、少し圧を感じるのは気のせいかしら…。

「わかりました。」
「うん、約束だよ。あの家系にいい噂は聞かないからね。今度再婚するらしいけど、それも少し問題になってるし。」
「再婚?あのダサいオ……辺境伯がですか…?」

あぶない…。『ダサいオジサン』って言いきってしまいそうになったわ。

「ルーナ…、お前いま『ダサいオジサン』って言いかけただろ…。」
「…そんな失礼な呼び方はしないわ。」

ヘンリーはすぐに突っ込んでくる!『ダサいオジサン』って有名なんだから、流してくれてもいいのに。

「まぁ俺は『変態ジジィ』って呼んでるけどな。56才にもなって、34も年下の女と再婚て…。」
「凄い年の差ね。けど変態は言い過ぎなんじゃ…」
「いや、あれはかなり変態だ。」
「ヘンリー、頼むからルーナにあまり変な事は言わないでくれ…。」
「…だな。」

トーマも知ってるのね。
今までヘンリー相手でも丁寧に『様』を付けてたのに、それを忘れるほど聞かせたくないのかしら。
気になる…。

ダサくて短気で、おまけに変態…。
未来の辺境伯夫人にはさすがに同情するわね。

「ルーナは知らないかな。相手はアダムス伯爵のご息女だよ。」
「っっ!?…ゴホッゴホッッ!!ケホケホッ…」

ちょうどジュースを口にした時に護衛長からその言葉が出て来て、私は思いっきりむせてしまった。
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