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王都めぐりと護衛長3
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マディソン公爵の次男は女たらしで有名だ。
何度か問題を起こしていると噂は聞くが、相手が相手なだけに被害者は泣き寝入りしている事の方が多い。それを解っていて相手にしているエリーゼもどうかしてる。
「マディソン君とボルディア君には、人間の言葉が通じないから面倒だよ。」
聞く耳を持たない…と言うことか…。
「けれど、侯爵の両親が殺された理由を考えると、そんな事も言ってられないね。相談相手に私を選んだのも、それでだろうし。」
「仰る通りです。」
殺された理由…
『辺境伯と隣国の間に不穏な動きがある』
そう疑いはじめて、調べていた矢先に両親は殺された。
公爵も辺境伯も軍の最高幹部の1人。その中で公爵が最高位にある。
だが、軍事力なら辺境伯も負けていない。お互いそれが気に食わないらしく、くだらない事ですぐに対立するらしい。
辺境伯に不穏な動きがある時に、この2人が争うのは避けるに越したことはない。
護衛長も幹部の1人で、大きな権限を持っている。何かあった時、2人の仲裁に入るのは護衛長しか無理だ。だから俺は彼に相談した。
「侯爵も、さっさと言いに来ればよかったのに…。」
「申し訳ありません。」
「状況は手に取るようにわかるけどね。両親を殺されたと知っていたアダムスは『娘を助けてくれ』と侯爵に泣きついた。同情を得られると踏んで。」
「結局、その通りに動いてしまいましたから。足下を見られてるとは思いましたが…。」
「本来なら君がかかえる問題ではないんだよ。…侯爵という立場にありながら軽率な行動をしたものだね。」
「返す言葉もありません。」
「侯爵、これから誰に何を言われても、この件に関しては白を切り通すんだ。」
「ですが…」
「また家族を殺されてもいいのかい?」
「っ…」
マーフィー護衛長の笑顔は冷たい。
「『命は平等だ』なんて考えはないんだよ、私には。だから人を殺せる。」
「…?」
どういう意味なのか、俺はすぐに理解出来なかった。
「エリーゼ・アダムスが殺されようが、私には関係ないって事だ。」
「……」
「結婚すれば辺境に行くわけだし、気がつかれれば間違いなくエリーゼは殺されるだろう。」
「……」
「彼女を助ける気は無いよ。侯爵もこれから一切干渉しない事。これは、個人としてでなく国王陛下の護衛隊長からラッセン侯爵にむけての命令だ。わかったね。」
そう言って、護衛長がブランデーを一口飲んで、また机に置いた。
「この件だけで辺境伯が今すぐ寝返ったりはしないと思うよ。…そこまで馬鹿じゃないと信じたい。」
『ない』と言い切れないという事か…。
そんな事を思っている俺の前で、何故かマーフィー護衛長がクスクス笑いだした。
「今の侯爵の敗因は、エリーゼよりルーナの方が心配になってしまった事だ。」
「どういう事ですか?」
「辺境伯から身を呈して親子を護ってる姿を見て、逃げる女より戦う女を護ってやりたいと思い始めた。違ったかな。」
「そんな理由ではありません。」
そうではないけれど、では何故今になって護衛長に相談しようと思ったのかと聞かれれば、何と答えていいか解らない。
俺をからかうように笑って、護衛長は笑顔でブランデーを飲み干した。
・・・・
2人が深刻にやりとりをしてる時、ルーナは蜂事件の被害者と街で出会してシュートに爆笑されているところだった。
何度か問題を起こしていると噂は聞くが、相手が相手なだけに被害者は泣き寝入りしている事の方が多い。それを解っていて相手にしているエリーゼもどうかしてる。
「マディソン君とボルディア君には、人間の言葉が通じないから面倒だよ。」
聞く耳を持たない…と言うことか…。
「けれど、侯爵の両親が殺された理由を考えると、そんな事も言ってられないね。相談相手に私を選んだのも、それでだろうし。」
「仰る通りです。」
殺された理由…
『辺境伯と隣国の間に不穏な動きがある』
そう疑いはじめて、調べていた矢先に両親は殺された。
公爵も辺境伯も軍の最高幹部の1人。その中で公爵が最高位にある。
だが、軍事力なら辺境伯も負けていない。お互いそれが気に食わないらしく、くだらない事ですぐに対立するらしい。
辺境伯に不穏な動きがある時に、この2人が争うのは避けるに越したことはない。
護衛長も幹部の1人で、大きな権限を持っている。何かあった時、2人の仲裁に入るのは護衛長しか無理だ。だから俺は彼に相談した。
「侯爵も、さっさと言いに来ればよかったのに…。」
「申し訳ありません。」
「状況は手に取るようにわかるけどね。両親を殺されたと知っていたアダムスは『娘を助けてくれ』と侯爵に泣きついた。同情を得られると踏んで。」
「結局、その通りに動いてしまいましたから。足下を見られてるとは思いましたが…。」
「本来なら君がかかえる問題ではないんだよ。…侯爵という立場にありながら軽率な行動をしたものだね。」
「返す言葉もありません。」
「侯爵、これから誰に何を言われても、この件に関しては白を切り通すんだ。」
「ですが…」
「また家族を殺されてもいいのかい?」
「っ…」
マーフィー護衛長の笑顔は冷たい。
「『命は平等だ』なんて考えはないんだよ、私には。だから人を殺せる。」
「…?」
どういう意味なのか、俺はすぐに理解出来なかった。
「エリーゼ・アダムスが殺されようが、私には関係ないって事だ。」
「……」
「結婚すれば辺境に行くわけだし、気がつかれれば間違いなくエリーゼは殺されるだろう。」
「……」
「彼女を助ける気は無いよ。侯爵もこれから一切干渉しない事。これは、個人としてでなく国王陛下の護衛隊長からラッセン侯爵にむけての命令だ。わかったね。」
そう言って、護衛長がブランデーを一口飲んで、また机に置いた。
「この件だけで辺境伯が今すぐ寝返ったりはしないと思うよ。…そこまで馬鹿じゃないと信じたい。」
『ない』と言い切れないという事か…。
そんな事を思っている俺の前で、何故かマーフィー護衛長がクスクス笑いだした。
「今の侯爵の敗因は、エリーゼよりルーナの方が心配になってしまった事だ。」
「どういう事ですか?」
「辺境伯から身を呈して親子を護ってる姿を見て、逃げる女より戦う女を護ってやりたいと思い始めた。違ったかな。」
「そんな理由ではありません。」
そうではないけれど、では何故今になって護衛長に相談しようと思ったのかと聞かれれば、何と答えていいか解らない。
俺をからかうように笑って、護衛長は笑顔でブランデーを飲み干した。
・・・・
2人が深刻にやりとりをしてる時、ルーナは蜂事件の被害者と街で出会してシュートに爆笑されているところだった。
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