侯爵夫人は子育て要員でした。

シンさん

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「うぉーっ!!すっげぇー!!」

シュート君が城を見て目を輝かせている。その様子を見ていると、招待して良かったと思える。

「シュート君、お城の絵が売ってるよ。」
「いや、別にそれはいらねぇ。」

冷めてるっ!
旅行の記念として欲しい!…とか、ならないのかしら。

「シュート君、この絵葉書を買ってシトロン君とメレブ君に手紙を書こうよ。」
「わざわざ手紙なんか書かなくても、会って話せるから。」

冷めてるっ!!

「あ、ヘンリーさんだ。」
「え?」

シュート君が言うとおり、振り返れば私服のヘンリーがいる。その隣に男の人が1人。
私達の方にまっすぐ歩いてくるって事は、用事でもあるのかしら。

「ミランダ、連れてきてやったぞ。」
「せっかくの休みに悪いわね。」

ヘンリーが連れてきた男の人は、ヒョロっとしていて兵士でないのは一目でわかる。茶色の長い前髪が血色のよくない顔を半分くらい隠してて、陰気臭い。見た目で言うと、私は苦手なタイプ…。
とてもミランダと気が合いそうには見えないけど、お友達なのかな。

何故か解らないけれど、私への印象は良くないみたいね。凄く睨まれてるもの…。

「あの…」
「ルーナ・ラッセン…。昔とあまり容姿は変わらないな。こんなのと結婚するなんて、侯爵も趣味が悪い。」

この人が誰なのかは知らないけど、物凄く失礼な事を言われてるよね。

「私と貴方は『初めまして』ではないかしら。」
「…やっぱり俺の事、忘れてんのか。」
「きっと貴方の印象が薄すぎなのね。」
「……」

私とヒョロっとした男が睨みあっているのを見て、ヘンリーとミランダが笑っている。

「ヘンリー、この失礼な人は誰なの?」
「誰って…、『蜂の巣』って言えば解るか?」

蜂の巣……
まさか、私が喧嘩して泣かせた男の子!?

「ルーベン…?」
「そうだ。」
「何故ここに…」

さっきヘンリーはミランダに『連れてきてやった』って言ってたよね。

「まさかミランダ…。ヘンリーに私がここに来るのをバラしていたの?」
「『蜂事件』の事をルーナが謝罪したいって言うから、ヘンリーに頼んでおいたのよ。」

それは今日じゃなくてもいいじゃない!シュート君には暴力的な我が儘ルーナのイメージを持たれたくないのよ。

「ルーベン、あの時はご免なさい。…その……蜂の巣を…」
「なに?聞こえない。」

…ムカつく。

「ヘンリーさん、『蜂の巣』って何ですか?」

シュート君がヘンリーに真面目に質問している。

「ルーナが」
「何でもないのよっ!シュート君っっ!!このオジサン顔の言う事に耳を傾けちゃ駄目よ!」
「おい、ルーナ…オジサン顔ってどういう事だ?」
「つい本音がっ!!」
「本音?」
「いや、その…事実だし…。」

泥沼っ!!

「シュート君。ルーナは俺の顔面を拳で殴ったんだ。危険だから近寄らない事をおすすめするよ。」
「殴った…?」

なんとか言い訳しないと…!私の印象が『暴力女』になってしまうわ。
シュート君から師匠にもリンダさんにも伝わる。シトロン君とメレブ君に嫌われる。
そして農家弟子入り失格の可能性がっ!!

「それは子供の頃の喧嘩よ。今の私は優しくて素敵な侯爵夫人よ。」
「決してない素敵ではないし、優しいなんてありえない。」

ルーベン…、トーマほどではないけど性格悪いわね。

「ぷっ!!アハハっ!小枝…お前……アハハハッ!!」

シュート君が吹き出して大笑いし始めた。ミランダは既に踞って笑ってる。

「小枝?」
「ルーナ、小枝って何の事だ?」
「知らないわよ。」

絶対に教えない。知られたら絶対に小枝って呼ばれるもの。
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