侯爵夫人は子育て要員でした。

シンさん

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土砂降りの中で3

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「これを見てください。」

パウロが兵士から受け取ったのは、大量の紙包みの入った袋だった。

「倉庫にはまだ沢山あります。原料となる植物も。現場は小隊の半数と警察に任せています。1人も逃がしていません。」
「薬の中毒者はいた?」
「はい。朦朧として話も出来ない有り様の者が8人、ほかは軽度ですが。使用者は少なくともこの10倍以上いるかと思われます。」

重症の人間は探し出さないと、発狂したら殺人が起きるかもしれない。
パウロの言う通り、犯人逮捕だけでは終わらないのね。

「まず、重傷者から医師に診せて対応して。きっと、犯人以外の人も含まれてるはずだから、子供達に顔を確認させてね。」
「かしこまりました。」
「あと、この薬を売った相手のリストは倉庫に無かった?」
「はい。あの場所に書類や帳簿の類いは一切ありませんでした。」
「そう、ありがとう。行っていいわ。」
「はい、では失礼します。」

お金持ちや貴族を相手に商売しようと考えているなら、『顧客リスト』を作ってるはずよ。
警察が簡単に踏み込めない所で管理するなら、貴族の邸はうってつけだよね。

「ねえ、あなた達のボスは誰?」
「……」
「……」
「……」

案の定、私の質問に全く答える気はないみたいね。

既に21時前。
雲は山から海へ流れてると言ってたし、メルフス領内は先に止んでるわ。そうなると、トーマはもうすぐ着くよね。
こんな大掛かりな事をしてる現場を目撃されたら、『たまたま散歩をしてたら襲われました』なんて絶対に言い訳にならないわ。

「パウロ、時間がないの。貴方達が聞き出して。」
「『好きにして良い』と解釈してもよろしいですか?」
「……加減はして。」
「勿論。」

「お嬢様、少し離れていましょう。」

カスターナが私の肩を抱いて、1度倉庫の外へ出た。

この行動は『私には見せられないような聞き方をする』って言ってるようなものよね。
トーマなら『暴力は止めろ』とか言うんだろうけど、私は言わないわ。
こんな性格だからエミリーに嫌われるのかもね。

「カスターナ、犯人は口を割るかしら。」
「きっと、5分もかかりませんよ。」
「そんなに早くは無理じゃないかしら。」

ガラガラ
「お嬢様、犯人が口を割りましたよ。」

パウロが倉庫のドアを開けてにこやかに言った。

「もう!?」

まだ私達が倉庫を出て3分もたってないよね。どうすればそんなに早く聞き出せるの。

あえて聞かないけど…。

「主犯は誰?」
「2つの子爵家が絡んでるようです。3人のうち2人はクリム、1人はメルフスの部下です。」
「子爵が揃って犯罪を…。」

メルフス子爵が持ちかけた話なのかしら。

「とりあえず、この雨ではメルフス子爵邸に行く事は出来ないし、宿に帰ってロンファという男を捕まえるわよ。」
「令状がありませんが。」

警察やセロリ小隊は、現場にいなかったロンファを捕まえる事が出来ない。

「必要ないわ。」

今の私にはラッセンという名があるのもの。離縁までは有効に使わせてもらうわ。

ラッセン家の皆さんに殺されない程度にね。
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