侯爵夫人は子育て要員でした。

シンさん

文字の大きさ
227 / 306

紺碧と淡青

しおりを挟む
南の港から宿に着くと、エントランスにロンファがいた。

「クリム様、こんな雨の夜にお出かけですか?」

私がわざと『クリム』と呼ぶと、ロンファが振り返った。
クリム家の者で間違いないわね。

「自己紹介でもしましょうか。お互い、正体を隠すのは難しいわよね。瞳の色は誤魔化せないもの。」

それに、これ以上隠す意味もないしね。

わたくしはルーナ・ラッセン。トーマ・ラッセンの妻よ。」
「…私はセレンティス・クリムです。クリム家の四男…」

私が名乗ったらとても驚いた顔をしていたし、予想もしていなかったみたいね。
制服を着た騎士や兵士が回りにいるから信じたんだわ。
ラッセン侯爵夫人、知名度が低い…!

まぁ、本名を聞けたからいいけどね。

「クリム様に聞きたい事があるのだけど、場所を変えて話しましょう。ここは人目につきますから。」

私はクリムの返事を聞かず、パウロの部屋へ向かった。
ここなら武器もあるし、何かあった時に対処できるしね。

わたくしが話をする前に、貴方から先に話してくれる気はないかしら。」

ここで自供してくれれば楽なんだけど。

「初対面の侯爵夫人を相手に、私が何を話せばよろしいですか?」

…まぁそんな簡単ではないよね。

「では、わたくしから質問するわ。昨日ご一緒していた常軌を逸した男性はクリム様のご友人かしら。」
「女性が絡まれていれば、誰でも止めに入ります。彼とは初めて会いましたし、それ以上の事は存じ上げません。」
「あの状態だったのだから医師に診せたのでしょう?」
「いいえ、暫くすると正気に戻りましたから。私には『酒癖が悪いのだ』と言ってました。」
「上手い言い訳ね。けど、あれは違法薬物の依存症だったわ。だから貴方はすぐに彼を連れていったのでしょう?今騒ぎが大きくなると、都合が悪いもの。」
「夫人は何が仰りたいのですか?」

ソフィア・ネルソンと同じ、冷たい色の瞳。
それに、ふてぶてしい態度はそっくりだわ。
けど、平然としていられるのも今のうちだけよ。

「今日、北の倉庫で違法薬物を見つけたわ。そこにいた人間を全て捕まえて話を聞くと、不思議な事に共犯者にクリムという名が出てきたわ。」
「それはそれは、偶然ですね。」
「偶然なはずないでしょう。貴族の名字というのは血族以外に名乗れないのよ。クリムという犯罪者がいるなら、それは貴方の一族なの。」
「クリムというのは名字とは限りません。」
「ええ、でも子爵家の者だと言っていたわ。」
「クリムという名前を知っている者なら誰でも言える事です。私達に恨みを抱いてる領民が言ったとも考えられます。」
「そうね、『ラッセン』という事も出来たでしょうから。」
「では、私に関係ないという事でよろしいですか?」

犯人逮捕と物証があるという事を伝えただけで、私が聞きたい事は別にあるのよ。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~

雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。 突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。 多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。 死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。 「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」 んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!! でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!! これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。 な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)

【コミカライズ決定】愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
【コミカライズ決定の情報が解禁されました】 ※レーベル名、漫画家様はのちほどお知らせいたします。 ※配信後は引き下げとなりますので、ご注意くださいませ。 愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

処理中です...